機械式時計店を一代で築いた石橋喜代志氏が提示する贅沢の意味

 北陸の古都・金沢に、日本屈指の販売力を誇る時計店がある。波乱万丈の人生を送りたどりついた地で、ウイングレボリューション代表取締役の石橋喜代志氏は一代でこの店を築き上げた。贅沢と苦労とを知る男は、機械式時計に揺るぎなき価値を見い出し、人生を懸けた。そして価値ある時計を身につける見本となるべく、自身を磨き続ける──。

加賀の伝統文化が息づく北陸随一の時計店

WING金沢店では、遠方に住む人にむけて、時計を購入すれば、期間限定で北陸新幹線代のキャッシュバックを行うサービスも実施。金沢の地へひとりでも多く足を延ばしてもらいたいという思いを持つ。

 紅殻(べにがら)で染めた朱壁(しゅかべ)が、艶やかな空間。古九谷(こくたに)の皿や花入を飾る床の間の前には茶をもてなす漆塗りの立礼台(りゅうれいだい)が置かれ、そこにある茶碗は金沢の楽焼の名家、十一代大樋(おおひ)長左衛門の作。襖壁(ふすまかべ)の内にある書は、小松市在住の書道家、森秀一氏の筆による。そんな和の設えの中にあって、ヨーロッパ・アンティークのテーブルやソファが、不思議と調和している──まるで老舗料亭の一室かのように見紛うが、ここは石川県金沢市の時計店『WING金沢店』のVIPルームである。同ショップは、去る3月26日に片町から竪町へと移転オープンしたばかり。トレイに載せた5本のゼニスの腕時計を前に立つ代表取締役社長の石橋喜代志氏曰く「このVIPルームは、金沢に特化した和をテーマにしました。朱壁は、加賀藩前田家の殿様の部屋にしか使えなかった特別な仕上げです」。

欧州のアンティーク家具を置いたのは、桃山時代の武将が好んだバテレン趣味に倣(なら)ったから。

Kiyoshi Ishibashi
1959年生まれ。裕福な家庭に育ちながら、20代で波乱の人生を送り、25歳で高級カー用品店を開業した後、時計販売にも着手。現在、北陸で4つの時計店を展開し、神奈川県川崎に時計の修理会社も持つ。

Text=髙木教雄 Photograph=吉場正和

*本記事の内容は16年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)