2016年は「正統+α」な腕時計が主役!~「正統+斬新」編~

 ビジネスは戦いだ。だからこそ、社会的なルールや作法も重んじる必要がある。そのうえで「プラスアルファ」を生み出せる男が、成功をつかむのだ。それは腕時計も同じである。歴史と伝統を時計業界のなかで、まじめ一徹に仕事をこなしているだけでは主役になれない。大切なのは、正統派でありながら"きらりと光る個性"を持っていることなのである。

「正統+斬新」
CARTIER クレ ドゥ カルティエ 40mm

 今までに数々の美しいケースデザインを生み出してきたカルティエ。角型の「サントス」、長方形型の「タンク」、丸型の「バロン ドゥ カルティエ」に加え、新たに楕円型ケースの新定番として「クレ ドゥ カルティエ」を発表した。楕円型ケースも時計業界では正統派のデザインだが、カルティエではフォルムの美しさを際立たせるために、サイドラインに沿うように"CLÉ"と呼ぶ特殊な角型リュウズを考案した。デザインの斬新さに興味を持つだろうが、指が引っかかりやすく、針操作をしやすいという実利的なメリットも見逃せない。さらにリュウズを所定の位置に戻す際に、カチリと収まる感触も楽しい。もはやケースデザインに改良の余地はないと思われていた。しかしカルティエはリュウズを使って美しいフォルムを生み出した。その斬新さを堪能してほしい。自動巻き、18KPGケース、40mm。¥3,980,000(カルティエ カスタマー サービスセンター フリーダイヤル:0120-301-757)

「正統+革命」
BREGUET トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077

 "腕時計の歴史を2世紀進めた"と言われた天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲ。彼の発明した時計機構は、ざっと挙げるだけでも、自動巻き機構、リピーター用ゴング、耐震装置、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨンなど多岐にわたる。天才は革命児でもあったのだ。現代のブレゲは優れた時計師たちが、新たな革命を求めて新機構に挑戦している。このモデルで挑戦したのは、クロノグラフの動力だ。通常のクロノグラフは、時計を動かす香箱(動力ゼンマイ)の力をお裾分けしてもらって動くので、ゼンマイトルクに影響を与え、精度を低下させる可能性は無視できない。そこでブレゲはクロノグラフ用の動力を別に用意した。しかもその方法もユニークで、リセットボタンを押すとブレード状のスプリングに力がたまり、次回のクロノグラフの駆動力にする仕組み。まさに革命的な新機構である。手巻き、18KWGケース、44mm。¥8,630,000(ブレゲ ブティック銀座 TEL:03-6254-7211)

「正統+前衛」
HUBLOT アエロ・フュージョン ムーンフェイズ チタニウム

 2005年に登場したウブロ「ビッグ・バン」は、特殊なケース構造や凹凸のあるデザイン、異なる素材たちの融合など、あらゆる前衛的な手法が評価され、異例の大ヒットコレクションとなった。しかしウブロの快進撃を語るうえで、「クラシック・フュージョン」コレクションを忘れてはいけない。1980年の創業当時から受け継がれてきたウブロのDNAを、ブランドコンセプト「フュージョン(融合)」で再解釈した"ウブロ流のクラシックウオッチ"は、前衛的でありながら、すっきりとしたデザインで好印象を与えてくれるウブロの正統派として人気を集めた。今回紹介する新作モデルは、ウブロとしては初めてとなるムーンフェイズタイプ。透明ダイヤルで機構をアピールしつつも、ケースのフォルムや仕上げはシンプルに徹しているので、ビジネスシーンにもしっかり対応してくれるだろう。自動巻き、チタンケース、45mm。¥1,710,000(LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ TEL:03-3263-9566)

「正統+リアル・マニュファクチュール」
A.LANGE&SÖHNE ランゲ1

 1845年に創業し、ドイツ時計産業の礎を支えてきたA.ランゲ&ゾーネ。生誕200周年を迎えた創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲは、グラスヒュッテの街を丸ごと工房に見立て、各工房が製造したパーツを使って統一規格の時計を作って精度と品質を高めた。現在のA.ランゲ&ゾーネは社内ですべてを製造するマニュファクチュールだが、モデルごとに専用ムーブメントを作る真摯な姿勢を持ち、製造が難しいひげゼンマイまで自作するというこだわりを持つ。新たに生まれ変わった「ランゲ1」は、外見はほとんど変わらないのに、搭載するムーブメントCal.121.1は新設計。輪列構造を見直し、さらなる高精度化を実現させている。手巻き、PTケース、38.5mm。¥4,900,000(A.ランゲ&ゾーネ TEL:03-3288-6639)

「正統+リアル・マニュファクチュール」
PARMIGIANI FLEURIER トンダ1950

 1996年にスタートしたパルミジャーニ・フルリエは、時計師ミシェル・パルミジャーニの審美眼と才能に応えるべく、垂直統合によるマニュファクチュール化を進め、スイス屈指の実力派工房をいくつも傘下に収める。ひげゼンマイを含めた全パーツを、社内で内製できる体制を整えた。ムーブメントの製作は、日本人時計師浜口尚大(たかひろ)氏が開発責任者を務めるヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエが担当。リアル・マニュファクチュール化のメリットは、他社の都合に左右されずに時計作りに没頭できること。このモデルはマイクロローターを使用した薄型のCal.PF701を搭載。スモセコ位置もバランスがよく、凛とした美しさがある。自動巻き、18KRGケース、39mm。¥2,187,500(パルミジャーニ・フルリエ・ジャパン TEL:03-5413-5745)

「正統+エンジニアリング」
ZENITH エリート6150

 シンプルなモノほど、ごまかしが利かない。それはあらゆるモノに当てはまる真理であり、だからこそ入念な設計と、それを具現化させるためのエンジニアリングが必要となる。ゼニスといえばクロノグラフムーブメントの「エル・プリメロ」が有名だが、シンプルな「エリート」も優秀だ。新作に搭載される新型ムーブメントCal.ELITE6150は、大型ローターの自動巻き式ながら、動力ゼンマイを2つ積んで100時間以上の連続駆動を可能にした。時計自体はサンレイダイヤルと繊細なバーインデックスで構成するシンプルな顔だが、その内側にはエンジニアリングの塊のようなムーブメントが詰まっているのである。自動巻き、SSケース、42mm。¥760,000(LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL:03-5524-6420)

「正統+エンジニアリング」
IWC ポルトギーゼ・アニュアル・カレンダー

 アメリカ人時計技師F.A.ジョーンズが持ち込んだアメリカの工業技術と、スイスの伝統的な時計の職人技を融合させたIWCは、1868年の創業当初からエンジニアリングにこだわり、デジタル式の懐中時計や初の軍事用パイロットウオッチを開発してきた。その伝統は現在へ受け継がれており、2015年は新型ムーブメントとして52000シリーズを発表。巻き上げ効率の向上などのテクニカル面だけでなく、美的要素にもこだわった。このモデルはIWC初のアニュアルカレンダー機構を搭載。11月は30日まで、12月は31日までという月の大小を判断し、3月1日のみ調整すればよいという実用機構だ。しかも12時位置の小窓のみで表示するため、時刻表示の視認性も犠牲にしていない。自動巻き、SSケース、44.2mm。¥2,480,000(IWC フリーダイヤル:0120-05-1868)

「正統+ドレスアップ」
PATEK PHILIPPE カラトラバ6000

 時計は男性が楽しめる唯一のアクセサリーであり、特にドレスアップのシーンで効果を発揮する。フォーマルウェアには明確なルールが存在するが、時計には多少遊びを加える余地があるからだ。ドレスアップの時計を用意すれば、パーティーをよりいっそう楽しめるだろう。パテック フィリップ「カラトラバ」といえば、1932年の登場以来、ラウンドウオッチのお手本として君臨してきた揺るぎなき王者。しかしこのモデルには、他とは違う華がある。グラフィカルに並べたインデックスやカレンダーの赤い差し色、オフセンターのスモールセコンドなどのあしらいで、正統派なのに腕元が華やぐドレスアップの小道具になる。自動巻き、18KWGケース、37mm。¥3,150,000(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL:03-3255-8109)

「正統+ドレスアップ」
HERMÈS スリム ドゥ エルメス

 ドレスアップの時計を選ぶ時に、もうひとつこだわりたいのは、ブランドが持つ華やかさ。時計専業ブランドは、伝統と歴史に縛られてしまうので、どうしても堅くなりがちだ。だからこそ、ラグジュアリーメゾンの時計を選ぶという選択肢も面白い。エルメスがどういうブランドなのかは説明不要だろうが、実は時計製造も100年以上の歴史を持っている。現在は"リアル・マニュファクチュール"のヴォーシェ・マニュファクチュール・フルーリエなどの実力派と協力体制を作っているので、品質は折り紙つきだ。新作の薄型ウオッチは、アラビア数字のインデックスにも注目。グラフィックデザイナーのフィリップ・アペロワが担当しており、優雅な美しさに満ちている。自動巻き、SSケース、39.5mm。¥790,000(エルメスジャポン TEL:03-3569-3300)

「正統+哲学」
LOUIS VUITTON LV55 GMオトマティックGMT

 腕時計は生活必需品ではない。だからこそ選んだ時計には深い理由が込められているし、個々の主張がさり気なく表れる。口ほどにモノを言ってしまうのが時計の隠れた機能なのだから、哲学を持つ時計を選ぶことも大切。本物を選び取る審美眼を持っている証明になるだろう。ルイ・ヴィトンは旅行用トランクがルーツという歴史と伝統を重んじており、すべての商品に"旅"というコンセプトを投影している。このモデルは旅行用のアルミニウム製トランクにインスパイアされたディテールが特徴。時計とストラップをつなぐラグの部分は錠前を、リュウズは軀体を留めるビスをイメージしている。さらにグリーンの針でGMTを表示するので、旅先でも便利に使える。仮に海外出張のスケジュールがきつくても、この時計さえあれば軽やかに乗り切れるかもしれない。自動巻き、SSケース、41mm。¥595,000(ルイ・ヴィトン クライアントサービス フリーダイヤル:0120-00-1854)

「正統+宇宙」
BLANCPAIN ヴィルレ コンプリートカレンダー ムーンフェイズ

 時間の起源は宇宙にある。太陽や月の規則的な動きを観測することで、定期的に気温や降水量が変化することを理解し、それが暦となった。つまり時計というのは、宇宙の法則を詰め込んだ機械といってもいいだろう。時計機構のなかで最も定番であるカレンダーは、最もシンプルに宇宙の法則を表現したものだが、実用性を考えると、月や曜日も表示するトリプルカレンダーの価値は高い。ブランパンではこの機構を得意としており、小窓と針を使って端正な表現に仕上げる。6時位置にはムーンフェイズ表示も収まっており、月の満ち欠けという壮大な天体ショーまで楽しめるという"コンプリート(完璧)"な仕組みだ。自動巻き、SSケース、40mm。¥1,470,000(ブランパン ブティック銀座 TEL:03-6254-7233)

「正統+宇宙」
JAEGER-LECOULTRE デュオメトル・カンティエーム・ルネール

 月の満ち欠けの周期は約29.5日であり、太古の人々が暦を作る際の重要な指標とした。月の満ち欠けは潮の満ち引きにも大きく影響を与えるので、かつての航海士はムーンフェイズ機構を使って安全な航路を進んだそうだが、今や月の満ち欠けが日常生活に及ぼす影響は少ない。それでもムーンフェイズ表示がなくならないのは、ロマンティックな魅力があるからだ。このモデルは時刻表示用と機能表示用というふたつの動力ゼンマイを備えた"デュアルウィング構造"を採用し、ムーンフェイズ表示も大型化させた。「忙しい手を休め、夜空を眺めてごらんよ......」。そう語りかけてくれる美しい時計に仕上がっている。手巻き、18KPGケース、42mm。¥4,450,000(ジャガー・ルクルト フリーダイヤル:0120-79-1833)

「正統+アール・デコ」
FRANCK MULLER カサブランカ ルナ

 WPHH JAPON 2015 in KYOTOにて先行披露された新作ウオッチ。フランク ミュラーの優美なトノウカーベックスケースは、ある女性顧客のために考案した。アール・デコ様式を意識した樽形ケースは、ケースデザインの定番。しかしそこにボリューム感を加え、全体を柔らかくアール・ヌーヴォー様式のようなカーブを加えることでフランク ミュラーの個性としたのだ。この「カサブランカ」は、アール・デコ期に重なる1940年代のモロッコを舞台にした映画『カサブランカ』にちなんだもの。強固なステンレスケースと夜光塗料を塗布した針とインデックスは、冒険や旅行をイメージしている。またカサブランカの夜空に昇る"月"が旅のロマンをさらに掻き立てる。自動巻き、SSケース、45×32mm。¥1,200,000(2016年発売予定)(フランク ミュラー ウォッチランド東京 TEL:03-3549-1949)

「正統+アール・デコ」
GIRARD-PERREGAUX ヴィンテージ1945 XXL ラージデイト&ムーンフェイズ

 長年受け継がれてきたデザインは、時代の変化に耐え、タイムレスな価値を生み出す。1920年代のパリで生まれたアール・デコ様式は、機能と装飾の両方をミックスしたデザイン。とりわけ同時代に一気に広がった腕時計の"贅沢で洒脱(しゃだつ)な気分"を表現するのに適していたため、多くのデザイナーが取り入れた。この時代は腕時計の黄金期なので、現代でもデザインモチーフとして採用されることが多い。1945年製モデルを原点とする「ヴィンテージ1945」がその好例だ。ゴドロンと呼ばれる溝彫り装飾が施され、先端が細くなるラグには、アール・デコの影響が強く残る。優れたデザインは時代を超えて受け継がれ、正統派の時計として愛され続けるのだ。自動巻き、18KPGケース、36.1×35.25mm。¥3,260,000(ソーウインド ジャパン TEL:03-5211-1791)

「正統+冒険心」
SEIKO プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル

 どの時計ブランドもクオリティーコントロールには力を入れているが、特に慎重を期すのがダイバーズウオッチだ。逆回転防止ベゼルを使って潜水経過時間を計測する"潜水計器"としての役割を担うため、故障は許されない。JISやISOといった規格団体によって検査方法が明確に定められ、丁寧かつ慎重に作られる。そのためダイバーズウオッチには、冒険心を刺激する武骨な魅力が詰まっている。防水能力を使い切る訳ではないのに、ハイスペックモデルに惹かれてしまうのだ。2015年はセイコーが国産ダイバーズ初号機を作ってから50年目のアニバーサリー。海外では"ツナ缶"と呼ばれる定番のスタイルは残しつつ、外胴素材はセラミック製。防水性能は1000mを誇る本格派だが、メタルパーツをピンクゴールド色で仕上げ、節目を飾るにふさわしい華やかな雰囲気に仕上げている。自動巻き、チタンケース、52.4mm。¥350,000(セイコーウオッチお客様相談室 フリーダイヤル:0120-061-012)

「正統+知性」
CITIZEN シチズン アテッサ F900

 日本人は時間に正確だと言われる。クオーツ式ムーブメントや電波時計などの高精度技術を磨いてきたのは、それを求めるユーザーがいるから。正確な時間は市民生活を円滑に動かしていくための潤滑油だが、そこにこだわってきたのがシチズンだ。創業以来"市民のための時計作り"に邁進してきた彼らが、新たに取り組んだのが、世界中で正確な現在地時間をキャッチするGPSソーラー機構。しかも使い勝手にこだわり、薄型ケースに素早い情報解析と針の動きによって、ストレスなしで高機能を使いこなせる。常に時間を意識し、スマートなビジネスを心がける大人のための時計だ。クオーツ、スーパーチタニウム(デュラテクトDLC)ケース、43.5mm。¥230,000(シチズンお客様時計相談室 フリーダイヤル:0120-78-4807)

「正統+知性」
CASIO オシアナス OCW-G1100E-1AJF

 G-SHOCKのイメージが強いカシオだが、2004年に誕生した「オシアナス」をきっかけに、メタルアナログウオッチの開発に注力。得意とするエレクトロニクス技術をアナログウオッチと融合させることで、エモーショナルで知的な多機能時計を目指した。最新モデルでは、定評のある電波時計機能マルチバンド6とGPS電波受信を併用するハイブリッド式を提案。他社とは異なる技術で高精度を追求する。しかも所有する喜びを提案することも忘れてはいない。このモデルではグリーンとブルーの2色の蒸着カラーを使って、宇宙から見た地球の夜空に輝くオーロラの様子を表現している。世界限定500本。クオーツ、チタン(ブラックDLC)ケース、46.1mm。¥280,000(カシオ計算機 TEL:03-5334-4869)

「正統+ライフスタイル」
GEORG JENSEN コッペル GMT パワーリザーブ

 貪欲に仕かけることで勝利を収める生き方も刺激的だが、日常生活を大切にしながら丁寧に生きることも大事。いわゆる"クオリティー オブ ライフ"を高める作業も、いいアイデアを生み出すためには必要となるだろう。ゆったりと流れる時間を楽しみ、伸びやかな気持ちで過ごすための腕時計を選ぶのも一興だ。デンマークを代表するラグジュアリーライフスタイルブランド、ジョージ ジェンセンは、シルバー製品やジュエリー、リビングアイテムが有名だが、時計のクオリティーの高さにも注目してほしい。1分1秒にあくせくしない時間をすっきりとしたダイヤルで表現したのは、幾多のデザイン賞に輝いた巨匠デザイナー、ヘニング コッペル。12時位置にはパワーリザーブ表示を、6時位置には24時間式のGMT表示を備える高機能モデルだが、先端に行くほど細くとがった繊細な針が、軽やかに時の流れを教えてくれる。自動巻き、SSケース、41mm。¥390,000(ジョージ ジェンセン ジャパン フリーダイヤル:0120-190-404)

Text=篠田哲生 Photograph=藤本憲一郎

*本記事の内容は15年11月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)