“なんでも鑑定団の時計担当”がブライトリングの名機ナビタイマーRef.806の真価を語る

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなるヴィンテージウォッチの魅力を、さまざまな角度から掘り下げる本企画「ヴィンテージウォッチガイド」。第8回は、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団!」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんをゲストに迎え、ブライトリングのフラッグシップモデルのひとつであり、時計史にその名を刻む名機ナビタイマーRef.806の実力を検証する。

ステンレスケースが人気を集めるナビタイマーの手巻きモデル

1952年に世界初の航空計算尺付きクロノグラフとして登場したナビタイマーは、誕生から60年以上もの間、世界中で愛され続けている“クロノグラフの大定番”であることに異論を挟む余地はないだろう。Ref.806のファーストモデルの再現を試みたナビタイマー Ref.806 1959 リ・エディションが、昨年話題を集めたことも記憶に新しい。

「ロングセラーであったRef.806は、当然ながら時代ごとにディテールの変遷があります。今回ご紹介するのは、2ndモデルです。初期型は文字盤すべてが同色でしたが、このモデルから視認性の向上を目的にインダイヤルが白に変わりました。他にもベゼルや針の形状に違いがあります」

歴代のナビタイマーRef.806で最人気を誇るのが、こちらのステンレスケースのファーストモデル。ワントーンで統一された文字盤やパール装飾のベゼルなど、初代ならではのディテールが見受けられる。1958年製、手巻き、SSケース、径40mm、参考表品  
高いオリジナリティを保ったRef.806の2nd。当時の箱、ギャランティ、オリジナルの革ベルトまで揃っていることは非常にめずらしい。Ref.806、1960年代製、手巻き、SSケース、径40mm、¥880,000

ヴィンテージウォッチ全般の弱点である防水性を意識した構造をした点もRef.806が支持されている理由のひとつである。

「クロノグラフに限らず、ある程度の防水を期待できるモデルはやはり人気が集中します。Ref.806は2ndモデルからスナップバック式の防水ケースを採用しています。さらには、この時代だと非防水が多いプッシュボタンが丸形の防水タイプであることも実用品としての大きなアドバンテージだと言えます。ケースのバリエーションは、ステンレスと金張り、そして18Kの金無垢があります。稀少性なら金無垢に軍配が上がりますが、“使いやすさ”という意味からも人気においてはステンレスが圧倒的に上ですね」

川瀬さんがナビタイマーRef.806を押す3つの理由

川瀬さんいわく、ナビタイマーRef.806には、ヴィンテージウォッチとして愛され続けている明確な理由があるという。

「第一に挙がるのは、ひと目見てそれと分かる“独特のデザイン”。実際に、ヴィンテージウォッチとして購入した場合、回転計算尺を使う人はまずいないでしょう(笑)。つまり、パイロットたちの命を守るために考案された機能が、今ではデザインとして評価されているのです。次に、“普段使いに適している”ことも見逃せません。その理由は、時計全体のサイズ感にあります。ヴィンテージのクロノグラフは小ぶりなサイズ感が魅力である一方、現行の大きな時計に慣れている方だとやや入りづらい部分があることは否めません。ところが、Ref.806の場合、ケース経が40mmであることに加え、ベルト幅が22mmあります。このサイズであれば違和感なく着用できる方が多いかと思います」

外装に負けず劣らず、ムーブメントの状態も極めて良好な2ndモデルの個体。手巻き式クロノグラフ専用ムーブメントの定番Cal.178を堪能することができる。

最後に挙がるのが、ブランドリングの時計製造の本質を理解する上でも欠かせない心臓部の“手巻きムーブメント”だ。

「Ref.806は最終モデルまでヴィーナス社のCal.178をベースにしていますが、ブライトリングはさまざまな改良を加えています。最も注目すべき点は、歯車を支えるクロノグラフ・ブリッジです。このパーツの形状に大きな特徴があり、オリジナリティを見極めるポイントになります。ムーブメントの大半を覆うピンクゴールドのメッキにも大きな意図があります。これは仕上げの美しさを担うだけでなく、耐久性を向上させるために欠かせない工夫なんですね。このような目に見えない部分にこそ、各社の真の実力が見え隠れするのです」

ケアーズ森下本店
住所:東京都江東区森下1-14-9
TEL:03-3635-7667
営業時間:10:00~19:00(月~金曜)、11:00~19:00(土・日・祝日)
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Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。

Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典