今さら聞けない! 機械式腕時計7大機構<レトログラード編>

クロノグラフ、トゥールビヨン、永久カレンダー、ムーンフェイズ、レトログレード、パワーリザーブ、ミニッツリピーター。いつの時代も大人の男たちを魅了し続けてきた機械式腕時計には、こうした数々の革新的な「機構」が存在する。時計好きを公言しているあたなは、本当にすべてを理解しているだろうか? 今さら聞けない基本的な機構を、時計ジャーナリストの篠田哲生氏が徹底解説する。第5回は「レトログラード」。


【レトログラード】

時計は円運動の集合体。ムーブメントの内部では歯車が回転し、その動きをに合わせて針も円運動を行う。カレンダーやムーンフェイズのディスクも、もちろん円運動だ。円は終わりも始まりもない「永遠の象徴」であり、ひいては、止まることのない時間の流れを表現しているともいえるだろう。

ところがこういった規則性のある動きを、あえて崩すのが「レトログラード」という機構だ。フランス語で逆行を意味する言葉であり、扇形に運針して、終点に到達すると瞬間的に始点へとフライバックして再び動き出すというもの。動きがダイナミックで見栄えが良いので、時分秒針やカレンダーなど、さまざまな表示に用いられる。何かのために役立てるというよりは、時計に遊び心を加え、表現力を高める機構といえるだろう。

ちなみにレトログラード機構はどれだけ精密に作っても、フライバックする瞬間は“時間の空白”を作ってしまう。カレンダーのような大きな時間軸で動いている機構であれば問題ないが、秒針の場合コンマ何秒が後々大きく響いてくる。そのため各ブランドでは如何に素早く美しく動かすかに腐心しているのだ。この機構を芸術的なレベルまで昇華させたのが"レトログラードの魔術師"こと時計師ピエール・クンツ。彼は20秒レトログラードを3つ搭載し、まるで秒針がリレーして動いているかのような不思議な世界を作り出した。

もちろん、ドレスウォッチに取り入れても効果的。端正なデザインや円運動の中に加わると、格好のアクセントになるだろう。スマホ時代に入り、時計デザインの幅はかなり広くなっている。レトログラードはクラシックスタイルを守りながらも、デザインにもこだわりたい愛好者向けの機構だ。


注目のレトログラードはこの1本!

BLANCPAIN

ヴィレル ラージデイト レトログレード デイ
1735年に創業した“現存する最古のスイス時計ブランド”であるブランパン。その歴史の深みを現代へと継承するのが、ドレッシーな「ヴィルレ」シリーズだ。このモデルは7-9時位置にかけてレトログラード式のカレンダーを搭載。さらに大型表示のカレンダーを組み合わせることで、デイデイト機能を作り上げている。実用的な機構だが、表示方法に工夫を凝らすことで、端正な時計にアクセントを加えている。ちなみに曜日表示の修正は、ラグ裏に隠されたコレクターを使って行う仕組みである。2万8800振動/時、パワーリザーブ約72時間。

自動巻き(Cal.6950GJ)、18KRGケース、径40㎜。¥2,400,000[今秋発売予定](ブランパン ブティック銀座 TEL 03-6254-7233)


Text=篠田哲生