今さら聞けない! 機械式腕時計7大機構<ムーンフェイズ編>

クロノグラフ、トゥールビヨン、永久カレンダー、ムーンフェイズ、パワーリザーブ、ミニッツリピーター、レトログラード。いつの時代も大人の男たちを魅了し続けてきた機械式腕時計には、こうした数々の革新的な「機構」が存在する。時計好きを公言しているあたなは、本当にすべてを理解しているだろうか? 今さら聞けない基本的な機構を、時計ジャーナリストの篠田哲生氏が徹底解説する。第4回は「ムーンフェイズ」。


【ムーンフェイズ】

地球が光を遮ることで発生する月の満ち欠けは、肉眼で簡単に観察できるうえに、1日ごとの変化がはっきりしているため、古代から暦作りの基準だった。いうなれば、月は"巨大な時計"でもあるのだが、そんな月の満ち欠けを時計上で再現するのが「ムーンフェイズ機構」である。

その仕組みはとてもシンプル。月を隠すかまぼこ状の凸部を持った窓の下に、月の姿をあしらったディスクをセット。規則的に回転させることで、月の満ち欠けを再現するのだ。ちなみに月の満ち欠けの周期(新月~満月~新月)は約29.5日なので、59枚歯の歯車を使うと、満ち欠けの二回分を的確に表示することができる。

しかし、これは安価なムーンフェイズ機構の場合に限る。実はムーンフェイズ機構にも、高精度化の波が訪れているのだ。というのも、本当の月の満ち欠けの周期は、国立天文台によると29.530589日とされており、59枚歯のムーンフェイズディスクを使うと、約3年で一日分の誤差が生じてしまうのだ。

これは精度にこだわりを持った時計ブランドには看過できない誤差である。そこで各社はムーンフェイズの高精度化に力を入れている。基本的にはムーンフェイズディスクの歯数を増やすことで回転を細かくコントロールしている。ムーブメントの設計にもよるが、おおむね90~160歯にすることで、122.6年に1日の誤差になるという。

さらには、1000年以上も誤差が生じない高精度ムーンフェイズも作られており、この高精度競争はまだまだ続きそうである。ちなみにムーンディスクの表現方法にも工夫を凝らしており、古典ブランドは顔を描くことが多い。またディスクに細かく星を書き込む手法も増えているようだ。


注目のムーンフェイズはこの1本!

A. LANGE & SÖHNE

サクソニア・ムーンフェイズ
1845年に創業したドイツ時計の最高峰。ザクセンの時計史を継承する名門であるが、第二次世界大戦後は東独政府によって国有化され、約半世紀もの間、幻のブランドとなっていた。ドイツ東西再統一を機に創業一族の手で1990年に再興されてからは、創業者に敬意を表した古典的な手作業にこだわった時計を作って評価を得る。このモデルは、ダイヤルやカレンダーディスクを黒で統一することで、闇夜に月が浮かぶ様子を表現。月の満ち欠けの精度は高く、122.6年に1日しか誤差が生じない。さらに、ムーンディスクには852個の月を書き込んでいる。10時位置のプッシュボタンはアウトサイズデイトの修正用。

自動巻き(Cal.L086.5)、2万1600振動/時、パワーリザーブ約72時間、18KWGケース、径40㎜。¥3,190,000(A.ランゲ&ゾーネ TEL 03-4461-8080)


Text=篠田哲生


【永久カレンダー】


【トゥールビヨン】


【クロノグラフ】