今さら聞けない! 機械式腕時計7大機構<トゥールビヨン編>

クロノグラフ、トゥールビヨン、永久カレンダー、ムーンフェイズ、パワーリザーブ、ミニッツリピーター、レトログラード。いつの時代も大人の男たちを魅了し続けてきた機械式腕時計には、こうした数々の革新的な「機構」が存在する。時計好きを公言しているあたなは、本当にすべてを理解しているだろうか? 今さら聞けない基本的な機構を、時計ジャーナリストの篠田哲生氏が徹底解説する。第2回は「トゥールビヨン」。  


【トゥールビヨン】

懐中時計は、普段胸ポケットに垂直に収まっているため、重力が一方向にかかる。こうなると時計の精度を司るヒゲゼンマイがたわんでしまい、精度が劣化してしまう。これを「姿勢差」と呼ぶ。この姿勢差を解消させるために、天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが考案したのが「トゥールビヨン」。

フランス語で渦巻きを意味するこの機構は、姿勢差を解消するためにヒゲゼンマイを含む「脱進機」といわれるパーツ群を丸ごと回転させ、重力の影響を分散させてしまおうというものだった。初代ブレゲは1801年に特許を取得したが、難解な上にパーツ点数も多くなる機構だったため、さほど広がることもなく"知る人ぞ知る"機構であった。

この忘れられた高精度機構トゥールビヨンが脚光を浴びるようになったのは、2000年代に入ってから。高品質なトゥールビヨンムーブメントを製造するサプライヤーが誕生したことで、自社で製造する能力がない時計メーカーであってもトゥールビヨン機構を作ることができるようになったことにある。

しかも携帯電話の普及に伴い、腕時計の価値基準が"複雑であること"にシフトしていったため、文字盤上で脱進機がクルクルと回転するトゥールビヨンは、非常に分かりやすかったのだ。かくして複雑機構の象徴となったトゥールビヨンの現在は、さらに新しい進化を遂げている。

ひとつは3次元回転。わずかな姿勢差であっても完璧に解消するために、縦横斜めに回転する機構が開発されている。もうひとつは耐衝撃化。これは高級時計をデイリーに使いたいというニューリッチ層のニーズを汲み取ったものだ。いずれの場合も、単に複雑というだけでなく、表現力を広げる方法として評価されている。

注目のトゥールビヨンはこの1本!

RICHARD MILLE

RM 53-01 トゥールビヨン パブロ・マクドナウ
リシャール・ミルは2001年に創立した新興企業ながら、既に人気ブランドに。アスリートたちをファミリーに迎え入れ、そのスポーツに特化したタフウォッチを製作するが、このモデルはアルゼンチン出身のポロプレイヤー、パブロ・マクドナウとのコラボレーション。危険極まりないポロ競技中でも時計が壊れないように、トゥールビヨン搭載ムーブメントを細いワイヤーで宙づりにしている。さらにサファイアクリスタル風防はラミネート加工しており、最悪でもヒビが入るだけ。世界限定30本。

手巻き(Cal.RM53-01)、2万1600振動/時、パワーリザーブ約70時間、カーボンTPT®ケース、縦49.94×44.5㎜。世界限定30本。¥102,300,000[予価][年内発売予定](リシャールミルジャパン TEL 03-5511-1555)


Text=篠田哲生


【トゥールビヨン編】