"なんでも鑑定団"時計担当がロレックス·デイトナを語る【ヴィンテージウォッチガイド③】

テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんをゲストに迎え、ヴィンテージウォッチの「今」を全3回にわたって掲載。第3回は、ロレックスの最人気モデルであり、プレミアムウォッチの頂点に立つ「コスモグラフ デイトナ」の魅力について話を聞いた。


優れた資産価値を持つ、極上のヴィンテージウォッチ

この数年、世界的なオークションハウスの落札価格からも分かるように、一部のヴィンテージウォッチの評価が著しく上がり、数千万円どころか、数億円超の個体を見かけることもめずらしくはなくなった。

「ヴィンテージウォッチの価格が高騰する場合、そこには市場を牽引しているモデルが必ず存在します。この数年、クロノグラフの人気を支えてきたのが、言わずと知れたロレックスの『コスモグラフ デイトナ』でした。今では、それなりに玉数がある標準的な手巻きモデルですら1000万円超えが当たり前になっていますが、その反面、オリジナリティを保たれていない個体への評価が厳しくなっています……。今後、価格が頭打ちになると、『コスモグラフ デイトナ』の圧倒的な人気に煽られて値上がりした無名ブランドのクロノグラフなどは、よほどデザインやテイストがよくない限り値下がりしていくことが予想されます」

自動車や不動産と比べると転売しやすい機械式時計はまさに「動産」であり、近年投資の対象になっていることは周知の事実だろう。ただし、それは一部の人気モデル、あるいは優良な個体に限った話であり、ましてやヴィンテージウォッチとなると話は一層複雑になる。

「極論ですが、ヴィンテージウォッチについて言えることは、当時のままのコンディションを維持している極上の個体であれば、ジャンルやブランドは問わず、価値は落ちにくい。それどころか、何年も普通に使っていた時計を手放す時に驚くような値段がつくことがあります。このようなステップアップを繰り返すことで今まで手が届かなかった時計が買えるようになることもヴィンテージウォッチを収集する醍醐味なのだと思います」

手巻きデイトナの頂点に立つ"ポール・ニューマン ダイヤル"とは?

手巻き時代の「コスモグラフ デイトナ」の中でも圧倒的な資産価値を持つのが、通称“ポール・ニューマン ダイヤル”と呼ばれる希少な文字盤を持つモデルだ。そもそものバリエーションが多いことに加え、あまりの人気ぶりから購入の際は真贋の問題やパーツの整合性が問われてくる。

「こちらの"ポール・ニューマン ダイヤル"は、4年ほど前にケアーズに問い合わせがあって、お店で買い取らせていただいた個体です。2017年にフィリップスのオークションで約20億円で落札されたポール・ニューマン本人が所有していた Ref.6239とまったく同じデザインで、ワンオーナーであったこともあり、完璧なコンディションを保っています」

「コスモグラフ デイトナ」の初期型にあたるRef.6239。“ポール・ニューマン ダイヤル”に加え、デイトナマニアから“ポールブレス”と呼ばれる希少なブレスレットが付属する。1960年代製、手巻き、SSケース、径36,5mm、参考商品

今日の"デイトナブーム"は、イタリアの時計市場とハリウッドの名優たちの影響が非常に大きいと言われている。

「私自身、俳優のポール・ニューマンやスティーブ・マックイーンは憧れの対象であり、彼らが好んで着用していた『コスモグラフ デイトナ』には特別な思い入れがあります。とはいえ、これまでケアーズでは、『コスモグラフ デイトナ』を特別意識して販売してきたわけでもなくて、数ある選択のひとつとして提案してきました。個人的な趣味だと、1930~1940年代の時計が好きだから、1960年代のデザインは少なくともストライクではないんです。もし自分で身につけるなら『コスモグラフ デイトナ』の前身にあたるRef.6238の“プレデイトナ”でギリギリかなと思っています(笑)。ただし、こちらの“ポール・ニューマン ダイヤル”のような特別な個体は話が別です。やはり一定レベルを越えた時計は有無を言わせないオーラがあり、世界中の愛好家から支持され続けている理由はそこにあるわけです」

川瀬さんが所有するロレックスのRef.3348「オイスター パーペチュアル」。現代のメンズウォッチにはない29mm径である一方、独特の雰囲気があるため、腕元に十分な存在感を与えている。1940年代製、自動巻き、SSケース、径29mm、私物

ちなみに、川瀬さんが時計の鑑定士として出演している「開運!なんでも鑑定団」では、これまで「コスモグラフ デイトナ」を3回ほど鑑定している。

「2015年の1月に放送した回で査定した"ポール・ニューマン ダイヤル”は、とても面白いエピソードがありました。依頼人の方は、大学生の頃に父親に借金をして、「デイトジャスト」を銀座の和光に買いに行ったらしいのですが、残念ながら売り切れていて、たまたま1本残っていた"ポール・ニューマン ダイヤル"の『コスモグラフ デイトナ』を購入したそうです。今となっては信じられないかもしれませんが、当時このダイヤルは不人気でして……。結果的に、好きでもなく20数万円で買った時計が、数十年後に4桁を超えるほど値上がりしたわけですから、とてもラッキーですよね(笑)。残念ながら、箱や保証書などの付属品はすべて捨ててしまっていたのですが、時計そのものはほとんど着用していなかったこともあって素晴らしいコンディションでした」

プレミアムな1本を掴むためには、資金力はもちろんだが、引き合わせが不可欠になる。そして、簡単に物事が運ばないからこそ、余計にのめり込んでしまう。もしかするとヴィンテージウォッチ特有の"中毒性"はそんなところから生まれてくるのかもしれない。

「もう何十年もヴィンテージウォッチの仕事に携わっていますが、未だに素晴らしい時計が見つかると初心に帰れるような感動があります。完璧な状態の“ポール・ニューマン ダイヤル”のように、なかなかお目にかかれない希少モデルとの出合いは、人と人との繋がりがあってこそ。そこからオーナーとともに刻んでいく時間が時計にさらなる魅力を与えてくれるはずです」


ケアーズ森下本店
住所:東京都江東区森下1-14-9 
TEL:03-3635-7667
営:10:00~19:00(月~金曜)、11:00~19:00(土・日・祝日)
休:水曜(祝・祭日を除く)
https://www.antiquewatch-carese.com/


Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。


Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典


"なんでも鑑定団の時計担当"が一押しするレアモデル5選【ヴィンテージウォッチガイド②】

"なんでも鑑定団の時計担当"がビギナーに薦める実用時計4選【ヴィンテージウォッチガイド①】