ヴィンテージウォッチという選択肢#2 編集·ライター戸叶庸之さんの場合

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなる、ヴィンテージウォッチ。愛用者のリアルな体験談から「はじめての高級腕時計」という視点でその魅力について触れる本企画。後編は編集・ライターの戸叶庸之さんが所有するロレックスのコレクションを紹介する。


一生付き合える趣味としてヴィンテージウォッチを嗜む

戸叶さんが本格的に時計を収集しはじめたのは今から6~7年前に遡る。

「僕が機械式時計を集めはじめた頃は時計全体の相場が今よりもだいぶ落ち着いていました。半年ぐらいのペースで3~4本時計を買い足したところ、『こんなに時計ばかり買ってて、大丈夫なのか?』とやや怖気づいてしまって(笑)。そこで締めの1本として、十代の頃から憧れていたロレックスのヴィンテージモデルを買ったことが幸か不幸か、今の収集にいたるきっかけになりました」

ヴィンテージウォッチとの出会いは、モノに対する価値観を一変させるほどの衝撃があったという。

「はじめて買ったのは、ロレックス サブマリーナーのRef.5512という品番で1970年代の個体でした。基本的にヴィンテージに該当する機械式時計の防水性能は、生活防水程度だと考えるのが妥当です。ですから、ダイバーズウォッチとはいえ、海に潜ったら最後、故障の原因に繋がってしまいます。精度にしても日差±30秒は許容範囲。その一方でヴィンテージウォッチには、長い間評価され続けてきた優れたデザイン、経年変化による雰囲気などが楽しめるのでそこを補って余る魅力があります。ぶっちゃけ、ものすごい中毒性があって、ハマると抜け出せません(笑)」

ロレックス「GMTマスター Ref.1675」、右は1963年製、左は1977年製。同じ品番だが、文字盤の材質やミドルケースの形状などに違いが見られる。戸叶さんは自分の好みに合わせて、年代が近いベセルインサートやブレスレットを組み替えている。

さまざまな年代から時計を選べるヴィンテージウォッチの世界は掘っても掘りきれないほどディープな世界が広がる。

「どうでもいい人からすると本当に馬鹿馬鹿しい話なのですが(笑)。ヴィンテージのサブマリーナーを本気で集めようとしたら、お金がいくらあっても足りませんし、そもそもモノが見つからなければお金を払うことさえできません。つまり、出合いありきなところが、ヴィンテージウォッチの収集の難しさでもあり、面白さでもあります。幅広い選択の中から時計を選ぶことができるので正解は人それぞれです。そのため、ビギナーからマニアまで楽しめる趣味として成り立っています」

真贋などが問われるヴィンテージウォッチの購入には常にリスクがつきまとう。クオリティの高い個体をつかむことは一筋縄ではいかない。

1960年代半ばに製造されたロレックス「コスモグラフ デイトナ Ref.6239」。手巻きのムーブメントを搭載する「コスモグラフ デイトナ」は、あらゆるヴィンテージウォッチの中でも極めて資産性が高いことで知られている。

「冗談は抜きにして、油断をしていると値段のつけようがない個体をつかんでしまう危険がありますから、知識はあるに越したことはありません。ただし、それなりのレベルで身につけるためには、相当な労力と時間がかかります。その隙間を埋めてくれるのが専門店のスタッフです。どこのお店で誰から買うか。たとえ同じ金額を使ったとしても、そこでの差が時計のクオリティや経験に反映されてくると思います」

初心者が良質なヴィンテージウォッチを手に入れるためには購入のコツがあると戸叶さんは話す。

36mm径の小ぶりなサイズが人気の「エクスプローラー Ref.1016」。こちらの個体は1960年代後半のごくわずかな時期だけ製造されたと言われているレアモデル。

「信頼できるお店を見つけたら、ずばり次のステップは、予算内でベストの時計を探し出すことです。もし100万円相応の時計が50万円で売られていたら何かしらマイナス点がある、そう考えるのが賢明です。それなら、50万円以内でのベスト、あるいは可能な範囲で予算を上げてみるのも妥当な選択だと言えます。そもそもヴィンテージウォッチは資産性が非常に高いため、いいか悪いかは別にして、上手く買い続けると結果的に投資に繋がることがあります。価格は問わず、はじめのうちはなるべく定番と呼ばれるデザインの中から選ぶことをオススメします。そうすることで知識や経験が養われ、それまで見えかった世界が徐々に広がっていくはずです」


Text=鈴木 悟(ゲーテWEB編集部)