東京2020オリンピック公式タイムキーパーのオメガが担う役割とは?【CEOインタビュー】

いかなるスポーツでも「計時」は結果に関わる非常に重要なファクターとなる。オリンピックの計時においては、世界的時計ブランドのオメガが1932年のロサンゼルス大会以降、29大会で公式タイムキーパーを務めている。東京2020オリンピックまで1年を切り、計時を担当するオメガ タイミングCEOのアラン・ゾブリスト氏にインタビューを行った。


タイムキーパーがいなければオリンピックは成り立たない

――オメガブランドにとって、五輪の計時はどのような位置づけなのでしょうか?

「公式タイムキーパーとしては特別な役割があります。スポーツにおいて3つの必要な要素があります。1つ目が選手、2つ目が会場となるスタジアム、そして3つ目がタイムキーパーです。結果を示すタイムキーパーがなければオリンピックは成り立たないわけで、そういう意味ではスポンサーや他のパートナーとは差別化がされていて、責任があると考えています」

――競技中にテレビ放送で映る世界記録のラインもオメガの開発。そうした計時にまつわる、多角的かつ革新的な技術についてご見解をお聞かせ下さい。

「オメガは世界で唯一、完全なテクノロジーソリューションをオリンピックのようなイベントで提供している会社です。タイムキーピングだけではなく、情報の収集を行って、そのデータハンドリングまでをシステムを通じて行っています。そのデータを変換してリアルタイムで提供しています。その中には放送事業者も含まれており、グラフィックとともにそれを提供するようなことを行っています」

オメガ タイミングCEOのアラン・ゾブリスト氏

――競技場での計時だけでなく、そうした特殊な技術を開発するようになった経緯と、現在の印象的な技術が何かあれば教えて下さい。

「この流れというのは非常にユニークなことであり、これはオメガが計時機器そのものも製造しているからということが言えます。このようなソリューションが使われている競技は100以上にわたっています。そして、今このようなテクノロジーで何が印象的かと言うと、ある何らかのパフォーマンスなどの計測をする時に情報をフォーマットとして扱って、それをリアルタイムで使うということに100分の1秒で処理をしているということが非常に大きいと思っています」

――これまでの大会でもっとも印象に残っている計時のシーンは何ですか?

「すべてユニークで、どの種目も違う機器を使っているので、なかなか難しいですね。しかし、複雑さという意味では、陸上がおそらくオペレーション上もっとも複雑だというふうに思っています。というのも、テクニカルな部分で、選手がジャンプをしたり、投げたりする種目がある一方で、短距離や長距離といった走るということも行っているわけで、同時にさまざまなことが起こるというのがオペレーション上、もっとも複雑になる要因です。そういう意味でタイムキーピングにかかわっている人員はもっとも多く、40人ぐらいいます」

――スポーツにとって、計時とはどのような意味を持つと思いますか?

「タイムキーピングがなければ、結果はないわけで、もっとも重要な側面であると考えています。選手に"タイムキーピングは何か"と聞くと"すべて"と答える人が多いです。公式タイムキーパーの役目としては、僅差の部分を厳密に計るということだと思います。僅差で金メダル、銀メダルを分けるわけですし、また、勝負において非常に接戦が多く、2008年の北京五輪競泳では、300分の1秒という差で決まったレースもありました。2016年のリオデジャネイロ五輪での競泳でも3人の選手が同じレースで銀メダルに輝いたことがあります。そういった僅差は人の目では判断することができないので、それは優れたタイムキーパーの役目であると考えています」

「すべての結果のタイムキーピングをするということに誇りを持っています」

――1年後の東京2020オリンピックでの取り組みについて、特徴的なものがあれば教えて下さい。

「新しいモーションセンサーテクノロジーを導入していく予定です。選手が勝ったのか、負けたのか、またどれぐらいのポイントだったのかをパフォーマンスを通じてわかるようなシステムです。これは、昨年冬季五輪にも使われたもので、それを夏季でもお披露目する予定です。モーションセンサーテクノロジーとは、2つのテクノロジーが含まれます。ひとつは、選手に着用してもらって動きをとらえるセンサーです。バイオメカニズムで何歩くらい歩いたかとか、またどれぐらいの高さでジャンプをしたかとかをとらえていくものです。もうひとつがカメラのテクノロジーです。非常に多くの情報を瞬時に提供することが可能となっています」

東京2020オリンピックまで残り1年となった7月24日、東京の玄関口でもある東京駅 丸の内中央広場に設置された「オメガ 東京2020 カウントダウンクロック」お披露目セレモニーが開催された。

――今後の五輪とのかかわり合いを教えて下さい。

「IOCとの契約は、2032年まで。'22年の北京冬季五輪、'24年のパリ夏季五輪、'26年のミラノ冬季五輪、'28年のロス夏季五輪までは決まっている。'32年はオメガが五輪で計時を務めてから100周年を迎えることになるので、そういう意味で大きなことになっています」

――計時の最高責任者として、東京2020オリンピックにはどのような期待を抱いていますか? やはり世界記録を期待しますか? 

「2年前から東京にチームを駐在させていまして、組織委員会とやり取りをしています。テストイベントも始まっていて、来年まで続く予定で、今のところ順調ですので、非常に楽しみにしています。世界記録は、タイムキーパーが決めることではなく、選手のパフォーマンスによるものです。世界記録のタイムキーピングをすることに最も誇りを持つということではなく、すべての結果のタイムキーピングをするということに対して誇りを持っています。それはすべての選手に対してであり、どのスポーツであっても、どの国であっても変わらない。そこに最も誇りを感じています」


東京2020オリンピックに向け2本の限定モデルを発売

東京2020オリンピックまで残り1年となり、世界的イベントを記念して2本のタイムピースが完成した。1本は、シリーズ初となるセラミック ダイアルを採用した「シーマスター アクアテラ 東京2020 リミテッド エディション」。もう1本は日本仕様の「シーマスター プラネットオーシャン 東京2020 リミテッド エディション」。いずれも、世界限定2020本。


Composition=鈴木 悟(ゲーテWEB編集部) Photograph=吉田タカユキ(ポートレイト)