男を刺激する新作時計#2 自慢できる最先端ウォッチ【バーゼルワールド・レポート】

スウォッチ グループの離脱をはじめ、出展ブランドの激減など、昨年来ネガティブな 情報が飛びかっていたバーゼルワールドが、3月21日~26日の日程で開催された。 果たして、この「世界最大の」ウォッチ&ジュエリーショーは、今年どうなったのか? そこで発表された新作は? そして、現場で明らかになった意外な事実とは。

天才技術者の仕事が、ウォッチの未来を左右する

危機に見舞われているバーゼルワールド。しかしフェアの後退感とは裏腹に、各ブランドからのブランニューモデルは力作揃い! 第二回は“世界一”“世界初”など、技術の粋を凝らした、刮目すべき新作をピックアップした。

2017年秋、ゼニスはヒゲゼンマイやテンプに代わる、まったく新しいオシレーションシステム(調速脱進機構)を発表した。シリコンプレートを、数式によって導きだされた特殊な形状に成形したこの新システムは、オランダの物理学者ホイヘンスが1675年に開発したヒゲゼンマイの“呪縛”から逃れるべく、約340年ぶりにチャレンジしたものだ。これを搭載した「デファイ・ラボ」は、当初10本のみが生産・販売されたが、将来的に量産化が可能であると明言されていた。

その言葉通り今回のバーゼルワールドで、これをブラッシュアップしたレギュラーモデル「デファイ・インベンター」がベールを脱いだ。’17年の段階でも、新オシレーションシステムの振動数は、通常のものの3~4倍の毎時10万8000振動だったが、それを毎時12万9600振動にまでアップし、精度・信頼性を高めている。チタンケースに、アルミニウムの特殊合金であるアエロニス素材のベゼルを備えた外装からも、ウォッチの未来を担う意気込みが伝わってくるようだ。

タグ・ホイヤーからは、’33年に発売されたダッシュボードクロックをルーツとし、自動車と航空の世界観を兼備した「オータヴィア」が新デザインとなって登場した。ここに紹介しているのは、その3針タイプ。ヴィンテージ感のあるスポーティな外装に、COSC認定を受けたキャリバー5を搭載している。このキャリバーの特筆すべき点は、新開発のカーボンコンポジット製ヒゲゼンマイを採用していることだ。これまでのヒゲゼンマイは、鉄、ニッケル、クロームなどの合金であるエリンバーを原材料としていた。これに代わるカーボンコンポジット製ヒゲゼンマイは、非磁性かつ軽量で、重力や衝撃の影響を極めて受けにくく、完全な同心円の振動が得られ、高精度も期待できるという。

フェア期間中に、筆者はラ・ショー・ド・フォンにあるタグ・ホイヤーのファクトリーを訪ね、この新しいヒゲゼンマイの製造プロセスを見学した。シリコンウェハースに特殊なエッチング加工を施し、オーブン内で加熱処理する過程で、カーボンをシリコンウェハース上に付着させる製造方法が採られていた。1枚のシリコンウェハース上に330個ものヒゲゼンマイが一度に成形されていたのには、驚かされた。将来的には、さらにクオリティを安定させ、量産化に向かう構えのようだ。

この開発に携わったのは、LVMHのウォッチに大きな進化をもたらした、天才的な技術者にして物理・数学者でもあるギィ・セモン氏である。実は、前述したゼニスの新オシレーションシステムも、セモン氏の仕事である。彼が腕時計の未来像に大きな影響をもたらしていることは間違いない。大いに注目しておきたい。

ZENITH

デファイ インベンター
2017年に従来のテンプとアンクルを用いない革命的なシステムを備え、10本限定で発売された「デファイ ラボ」を量産化。毎時12万9,600振動の超ハイビートで精度、耐磁、耐衝撃性にも優れる。

自動巻き、Tiケース×アエロナイトベゼル、径44mm。¥2,040,000[予価/10月発売予定](LVMHウォッチ・ジュエリージャパンTEL:03-5677-2091)


TAG HEUER

オータヴィア キャリバー5 COSC
1933年のダッシュボードクロックをルーツに、自動車と航空の世界観を融合した「オータヴィア」が新デザインで登場。キャリバー5に自社開発の新カーボンコンポジット製ヒゲゼンマイを搭載。

自動巻き、SSケース、径42mm。¥425,000[予価/6月発売予定](LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ ホイヤー TEL:03-5635-7054)


世界一を樹立した技術力にゾッコン

シチズンの年差±1秒という、世界最高精度のウォッチ「ザ・シチズン キャリバー0100」にも目を見張った。昨年、創業100周年を記念し、ソーラー発電式のエコ・ドライブで年差±1秒を実現したムーブメント、キャリバー0100が先行発表されていたのだが、これが製品化された形だ。

キャリバーの心臓部に当たる水晶振動子は通常、音叉型水晶振動子が用いられるのだが、ここでは直方体に近いATカット型水晶振動子を採用。音叉型の256倍に当たる8.4MHzもの高振動が得られ、温度や重力などの影響に強く、経年変化しにくいなどのメリットを持つ。だた、電力消費が大きく、技術的なハードルとなっていた。この問題をクリアするべく、省電力化を進め、製品化に漕ぎつけた。研ぎ澄まされた1秒を意識した、端正な外装デザインからも、自信が伝わってくる力作だ。

ブルガリからは、5度目の世界記録樹立となる、世界最薄機械式クロノグラフ「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」が発表された。ムーブメントの外周部に回転錐を配したペリフェラルローター式はじめ、厚みを抑える工夫を随所に導入したブルガリ初の自社製クロノグラフキャリバーは、厚さわずかに3.30mm。ケース厚は6.90mm。3時位置にGMT機能を備えながら、この薄さは驚異的だ。ただ単に薄いだけでなく、サンドブラスト仕上げのグレーのワントーンで、ケース、文字盤、ブレスレットを統一したクールな外装もブルガリらしい。

CITIZEN

ザ・シチズン キャリバー 0100
昨年、創業100周年記念で発表した年差±1秒の世界最高精度のエコ・ドライブムーブメント、キャリバー0100を製品化。

世界限定100本。光発電エコ・ドライブ、WGケース、径37.5mm。¥1,800,000[予価/今秋発売予定](シチズンお客様時計相談室 TEL:0120-78-4807)


BVLGARI

オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT
5度めの世界記録樹立となる、世界最薄機械式クロノグラフを発表。ペリフェラルローターによる自動巻きで、ケース厚は6.9mm。 3時位置にはGMT表示も。

自動巻き、Tiケース、径42mm。¥1,920,000[予価/6月発売予定](ブルガリ ジャパンTEL:03-6362-0100)


方向性の違いはあれど、未来志向の最先端技術を詰めこんだ4モデル。持てば自慢できるウォッチであると、保証しておこう。

#3に続く
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Text=まつあみ靖