時計のプロが選ぶ「仕事で勝ち抜く腕時計」 #2 スリーク新潟 ショップマネージャー 飯田剛之

この時世、時刻を知るだけならば、スマートフォンでも十分だ。では、なぜ手元に腕時計が必要なのか。それは、男の品格を上げ、信用度を高め、そして、コミュニケーションの端緒ともなってくれるから。すなわち、腕時計を着けるという行為が、仕事面においても大きな意味をもつということだ。そこで、時計のプロに「仕事で勝ち抜く」をテーマに、“はじめての腕時計”としてベストな3本を厳選いただいた。


大海原を切り開く男たちを支えた開拓心を象徴

IWC
ポルトギーゼ・クロノグラフ

自動巻き、SSケース、径40.9mm。¥755,000(IWC TEL 0120-05-1868)

由来が、1930年代にポルトガル商人の依頼で作成した「マリンクロノメーターに匹敵する精度の腕時計」という人気モデルのクロノグラフ。「ポルトガル人」というその名が背景を物語る。1998年の登場以来、ほとんど変わっていないデザインコードは、時計通からも一目置かれる存在と飯田氏も推薦する。

「かつて大海原を切り開いた航海士たちにも頼りにされたというその歴史を鑑みても、自らの道を切り開いて歩むべきビジネスマンにこそ相応しいものです。また、見事な調和を誇る整然としたダイヤルレイアウトは、仕事を進めるのに必要な簡潔な思考をも象徴し、腕元を見るたびに襟を正してくれるはず」と、精緻なデザインにも言及。

「視認性の高さが生み出すドレッシーな佇まいは、ビジネスマンを凛々しく見せてくれることでしょう」


進化する定番を腕元に、仕事でも同様の輝きを

BREITLING
クロノマット JSP

自動巻き、SSケース、径44mm。¥860,000(ブライトリング・ジャパン TEL 03-3436-0011)

クオーツ式時計の台頭により機械式時計の存亡が危ぶまれたなか、1984年にブライトリングが、経営再建の一手として送り出した機械式クロノグラフ「クロノマット」。視認性・操作性・耐久性をクリアした革新性において成功を収めた。なかでも、誕生以来のアイコンだった、ベゼルに90度ごと装着されたライダータブを備えたジャパンスペシャルを、飯田氏はリストアップ。

「仕事に必要なのは、逆境のときこそリスクを負ってでも打ち勝つ気概や新しいアイデア。まさに、クロノマットが背負ってきた歴史背景と大きく重なります。腕元に収めることで、自らを奮い立たせるにはうってつけ」と選定する最大の理由を語る。

「時代の要請に応じて進化してなお定番に君臨するその姿は、自らの仕事がうまくいっても安住しないという矜持にも。そして、見た目においては、ポリッシュされたステンレスの輝きも大きな魅力。仕事においても同様の輝きを放つ将来の自分を、腕元に託することができる意味でも、強い味方となってくれるでしょう」


チャレンジには、初心を忘れないことも重要

HUBLOT
クラシック・フュージョン チタニウム ディープブルー

自動巻き、Tiケース、径42mm。日本限定¥770,000(ウブロ TEL 03-5635-7055)

「“アート・オブ・フュージョン”をコンセプトに、既成概念に囚われない自由なミクスチャーで、時計界を賑わす好ブランド。そこに宿るチャレンジ精神もまた大きな魅力です。なかでも、これから何かを成し遂げるという人にこそ、着けてほしいのが、ブランド初期のモデルの血脈を色濃く残した本作です」と、すっきりしたデザインのクラシック・フュージョンから、最新の日本限定モデルをリコメンド。ブルーの美しさは、ブランドの高い美意識の現れでもある。

「どれだけ成功しても“初心忘るべからず”。ベーシックなモデルを着けることで、自らの土台を見つめ直すことも大事。また、ウブロに成功をもたらしたかつての会長、ジャン−クロード・ビバー氏の“革新なくして未来なし、伝統なくして未来なし”といった言葉からも、そうした哲学を座右の銘として、仕事に生かしていくということができる時計ですね」。

デザイン性の良さだけにとどまることなく、哲学をも感じさせる時計こそ、仕事に勝ち抜くためには必要という飯田氏の思いも込められている。


Takeyuki Iida
新潟都市圏の時計ファンが一堂に会する人気店のマネージャーは、ゲーテ世代ど真ん中の1974年生まれ。時計業界一筋で社歴22年のベテランは、腕時計の見た目やブランドの価値以上に、それを手にする精神的な意義を顧客に伝えることを信条とする熱きハートの持ち主。時計を求めにきた付き添いの人にまで、その魅力を伝えた結果、購買につながることも!


Text=高村将司