今さら聞けない! 機械式腕時計7大機構<ミニッツリピーター編>

クロノグラフ、トゥールビヨン、永久カレンダー、ムーンフェイズ、レトログレード、パワーリザーブ、ミニッツリピーター。いつの時代も大人の男たちを魅了し続けてきた機械式腕時計には、こうした数々の革新的な「機構」が存在する。時計好きを公言しているあたなは、本当にすべてを理解しているだろうか? 今さら聞けない基本的な機構を、時計ジャーナリストの篠田哲生氏が徹底解説する。最終回は「ミニッツリピーター」。

【ミニッツリピーター】

機械式時計における超複雑機構は、トゥールビヨンと永久カレンダー、そしてミニッツリピーターである。その中でもミニッツリピーターは、最も歴史と権威がある。もともと時計は教会の塔などに取り付けられ、任意の時間になると鐘を鳴らして、祈りの時間を知らせた。

つまり時間とは音で知るものだったのだ。懐中時計の時代に入ると、貴族は時計を個人所有できるようになったが、当時は満足な照明もないので暗闇で時間を知る方法がなかった。そこで時計内部にゴングとハンマーを組み込み、音で時間を知らせる機構「ミニッツリピーター」が考案されたのだ。

誕生は17世紀のイギリスだったが、現代のようなリング型のゴングを考案したのは、アブラアンールイ・ブレゲである。メカニズムは非常に難解ゆえに割愛するが、時計内部には高音と低音に調律された二本のゴングが入っており、それを叩くハンマーも二本内蔵。ケースサイドのスライダーを動かすと作動する。

現在時刻が9時21分だとすると、まずは低音(アワー)が9回鳴り、そのあと高音と低音の組み合わせ(クオーター)が1回鳴り、最後に高音(ミニッツ)が6回鳴る仕組み。つまり、9回(9時)+1回(15分)+6回(6分)で9時21分を表している。

ゴングやハンマーを4組も搭載し、複雑な音を奏でる「ウエストミンスター・カリヨン」はその上級モデル。さらには正時になると、その数だけ鐘を鳴らす「ソヌリ」や15分ごとにキンコンと奏でる「プティ・ソヌリ」という機構もある。こういった機構は“鳴り物”と呼ばれ、極めて高価になる。それはどれだけ技術が進化しても、最後は人間の耳で音を聞き、調整しなければいけないから。時計は楽器なのだ。


注目のミニッツリピーターはこの1本!

AUDEMARS PIGUET

ジュール オーデマ・ミニッツリピーター・スーパーソヌリ
1875年に、山深きウォッチバレーに創業した老舗。常に先進的な時計を作っており、同社の傘下にあるオーデマ ピゲ・ルノー エ パピは、複雑時計工房として称賛を集める。このモデルはそういった時計作りの様々なノウハウを生かしたモデルで、最大の特徴は美しくて豊かな音を奏でるミニッツリピーター機構「スーパーソヌリ」を搭載している点。これはローザンヌ工科大学と組んで心地良い音色を解析して、理想の音を導き出したもの。音響板を使って増幅された音を響かせつつ、防水性も20mを確保した。全てが異色の時計である。

2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。手巻き(Cal.2944)、PTケース、径43㎜、時価(オーデマ ピゲ ジャパン TEL 03-6830-0000)


Text=篠田哲生