【腕時計に傾倒する男たち②】不動産会社経営M.T氏の場合

情熱的な作り手によってカタチづくられ、命を吹きこまれ、時を刻みだす、 そんな高感度腕時計との出会いは必ずや人生を豊かにしてくれるだろう。 男が時計に心酔する理由にはロマンティックが溢れている。

「圧倒的な熱量が感じられるアートのような時計に惹かれます」

人一倍の自己投資とわがままを貫き通し、究極の腕時計を選択する男がいる。

「時計を集めだしたのは、20歳ぐらいから。もともと機械の複雑な機構が好きで、それを持ち運べる時計にたどりついたという感じです。名のあるブランドはひととおり買ったんじゃないかと思います。いつの間にか普通の時計では物足りなくなってしまって、たどりついたのがリシャール・ミル。数本買い続けたら、案の定最上位のモデルが欲しくなって。ところが、製造数が極端に少なくて、そう簡単には入手できなかったんです」

M.T氏の念願がかなったのは、パリで開催される「シャンティイ アート&エレガンス」という、リシャール・ミルがスポンサードするイベントだった。

「そこで紹介してもらったクリスタルケースの時計は、まさかの2億円超えで、さすがにおいそれと買える金額じゃなかった(笑)。でも、僕はなんでも一番のものが欲しいから、思い切って買うことに。出会いありきの1本だから、今思えば自分の直感を信じて正解でした。今日持ってきたパルミジャーニ・フルリエも気に入っています。これはフランス・モルツハイムにあるブガッティ本社まで出向いて、特注で作ったワンオフモデルです。せっかくお金を払うなら人とかぶらないのが欲しい」

トレイに並ぶ4本のうち、3本がリシャール・ミル。左上がフェリペ・マッサ パートナーシップ10周年記念モデル「RM 056」。中央上がラファエル・ナダルの限定モデル「RM 27-03」。ケースと一体化されたユニークな地板を持つ。右上がスプリンターであるヨハン・ブレイクのスピリットを表現した「RM 59-01」。独特のブリッジが際立つ。右下が天才時計師率いるパルミジャーニ・フルリエ渾身の力作「ブガッティタイプ 390」のカスタムモデル。そして、M・T氏が取材時に装着していたのはリシャール・ミル「RM 50-02」。エアバス・コーポレート・ジェットとのパートナーシップによって生まれたマルチコンプリケーションだ。カフリンクスもなんとリシャール・ミル。

人と人とのつながりがレアモデルを引き寄せる

やはり特別な時計を手にするためには、資金はもちろん、コネクションが欠かせない。

「時計はカミネひと筋です。店長とは、かれこれ20年来の付き合い。そこでの信頼があるから、希少な時計を僕に紹介してくれる。それなりの時計を手に入れるには、"運"と"ひいきのお店"との円滑で濃い関係が何より大事だと感じます。レアな時計は一期一会のようなものですから」

錚々たる時計のコレクションと同じように、M.T氏の言葉には説得力がある。

「経験って、お金に変わるんですよ。だから僕はとことん一流品にこだわる。最近、時計に関して思うことは、これ見よがしに高そうに見えるデザインには興味がなくて、そういう次元を超越したアート作品のようなプロダクトに惹かれます。そこには必ず作り手の情熱が感じられますから。あと、流れるような曲線が好きなんですよ。時計もクルマも、女性のヒールなんかもあの湾曲したデザインが最高にいいですよね(笑)」

神戸市中央区に店舗を構え、"トレンド" をコンセプトにするカミネ 元町店。優雅でゆったりとした空間が広がる2階にはリシャール・ミル サロンを展開する。
M.T氏
1977年生まれ。不動産会社経営。25歳で起業。不動産業をはじめとした多事業を展開する会社経営者。20年前にカミネに来店して以来、機械式時計の収集に余念がない。高級車にも目がなく、マクラーレン、ランボルギーニ、フェラーリなどを複数台所有。

Text=戸叶庸之  Photograph=鞍留清隆