【パネライ新CEOインタビュー】"変えずに変える"ブレない手法とは?

パネライを世界的な人気ブランドに仕上げ、昨年退任したアンジェロ・ボナーティ。 彼のあとを引き継いだのは、ジャンマルク・ポントルエだった。 上海で行われた国際イベント「Survival Instruments for ModernHeroes」にて雑誌「ゲーテ」編集長、二本柳陵介がパネライの新しいCEOに話を聞いた。


ブランドの認識を変えずに少しずつ進化していく

個人的に、ここ2、3年のパネライには非常にポジティブな印象を抱いている。新作には新しい素材を投入し続けつつ、時計自体の仕上げも格段によくなった。今年の1月に発表された、限定品もユニークだった。それは購入者に、その時計を買った者しか経験できないプログラムが付加されているのだ。イタリア海軍特殊部隊の訓練に参加できたり、ギョーム・ネリーにフリーダイビングを教わるというスペシャルなプログラムの数々で、発表当時にはとても話題に上がった。

5 月中旬、上海にて期間限定で開催された、パネライのバーチャル沈没船探検ツアー。顧客、プレスなどが集まり、海に起源を持つパネライの世界観を堪能した。

パネライの顔と言えたボナーティ退任後を引き継ぐという難題を、ポントルエ氏はスムーズにこなしているように感じた。

「日本では銀座店をとても素晴らしい場所に移転し、その他の地方都市の店も堅調です。今まで時計メーカーとしてのイメージが強かったので、ライフスタイルブランドとして変換し、新しい価値を提案しています。スイスで制作している技術力と、イタリアならではのライフスタイル。その融合の表現を強化しています」

ポントルエ氏は続ける。

「ブランドビジネスにおいて、どのブランドも誰もが見てわかるアイコンを作ることが大切なのです。例えば、ポルシェの911。誰もが知っていて、ちょっとずつ変化していくのだけれど、911のアイデンティティは損なわないですよね? 我々もそういう存在でありたい。パネライには『Laboratorio di Idee(アイデアの工房)』があります。常にチャンレジしていくために、この部署がとても大切ですし、ブランドを体現している部署なのです」

今回は大掛かりな国際イベント「Survival Instruments for ModernHeroes」を上海で行った。その意義は何だったのだろう?

「ユーザーにもプレスの皆さんにも、パネライファンというコミュニティを強化していきたいのです。そのために、新作を一般公開よりも早く見られたり、今回のような体験を共有できる場を作り、パネライのユーザーである喜び、誇りを感じてもらいたいのです」

今や腕時計は時刻を確認するというよりは、エモーションや自尊心を提供している。「変えずに変えてきた」パネライのブレない手法は、これからも支持され続ける。


Text=二本柳陵介(雑誌ゲーテ編集長)  Photograph=井田宗秀、パネライ