“なんでも鑑定団の時計担当”が語る失われた名門「レマニア」の伝説とは?

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなるヴィンテージウォッチの魅力をあらゆる角度から掘り下げる本企画「ヴィンテージウォッチガイド」。第12回は、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団!」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんをゲストに迎え、優れたムーブメントの開発力を武器に数々の伝説を築いたレマニアの実力を検証する。

オメガのスピードマスターを成功に導いたレマニアの功績と実力

機械式時計の文化にとって、ヴィンテージウォッチとはある種の鉱脈であり、そこには、失われてしまった技術はもちろん、現存しないブランドとの貴重な出会いがある。2007年にブレゲのムーブメント製造部門として吸収合併されたクロノグラフの名門レマニアもそんなブランドのひとつに数えられる。

「1884年、エボーシュ(ベースムーブメント)のメーカーとして、スイスのジュウ渓谷で立ち上げられたレマニアは、ヴィンテージマニアの間で非常に評価の高いブランドです。その理由のひとつに挙がるのは、オメガとのクロノグラフの共同開発にあります。かの有名な“ムーンウォッチ”、スピードマスターの成功の要因である手巻き式ムーブメントCal.321もレマニアの存在なくしては語れません。最近だとスピードマスターの人気ぶりからCal.321の後続機であるカム式のCal.861の評価まで高まっています。その一方で、レマニアは自社ブランドも展開し、優れた時計を製造していたことでも知られています」

付属品として箱&ギャランティが付くレマニアの個体。当時のスタンダードとも言える角型プッシャーの非防水モデルであることに加え、クロノグラフとしては極めてシンプルな文字盤であることが特徴。1940年代製、手巻き、SSケース、径34.5mm、¥1,200,000

第二次世界大戦の前後を堺にクロノグラフは隆盛を極め、需要の変化ともにデザインも多様化へと向かっていく。

「1940年代のクロノグラフは2レジスターが主流でしたが、レマニアはムーブメントの製造に特化していたため、最先端であった3レジスターにもいち早く着手していました。同じメーカーであれば、どちらのムーブメントも基本的な設計はほぼ変わらないため、その土台となる手巻きムーブメントの完成度が品質を大きく左右します。これはクロノグラフの良し悪しを見分ける上で外せないポイントです」

クロノグラフに限らず、ヴィンテージウォッチを購入する際は、とにもかくにも“個体の質を見極めること”が重要である。これは、ビギナーであろうと、マニアであろうと、変わらない絶対条件であろう。

「こちらのレマニアの時計について特筆すべき点は、第一に“ほぼ未使用”であることに尽きるでしょう。この年代のモデルが未使用に近いコンディションで出てくるケースは奇跡に近く、レマニアでは創業してからはじめての出来事でした。ですから、それだけでも十分な価値があります。搭載されているムーブメントは、Cal.321のレマニア版にあたるCal.CH27C12。クロノグラフとしては非常にすっきりした文字盤のデザインなので、シンプルな時計を探されている方にお薦めの1本です。確かに、評価が高ければ高いほど比例して時計の価格は上がりますが、間違いのない個体でコンディションを保つ事ができれば、多少無理して買っても損をすることはまずないかと思います」

ケアーズ森下本店
住所:東京都江東区森下1-14-9
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Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。

Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典