“なんでも鑑定団の時計担当”が語るロンジンの秘められた実力【ヴィンテージウォッチガイド⑥】

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなるヴィンテージウォッチの魅力を、さまざまな角度から掘り下げる本企画。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団!」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんをゲストに迎え、目が肥えたマニアたちを唸らせる人気ブランド、ロンジンの実力を検証する。

クロノグラフ界の頂点に立つ名門ロンジン

前回も述べたように、ヴィンテージウォッチの世界において、クロノグラフとは世界中のマニアから熱狂的な支持を集めている重要な分野だ。この数年、ロレックスのコスモグラフ デイトナの異常なまでの人気ぶりから、クロノグラフ全般の急激な価格高騰が起こり、オークションなどで浮世離れした資産価値を持つ個体が多数登場している。現在は多少は落ち着いているものの、一部のレアモデルに関しては一向に価格が下落する気配は見られない。パテック フィリップと並び、頂点に君臨するブランドのひとつがロンジンなのである。

「ロンジンは一説によると、クロノグラフをはじめて開発したブランドのひとつだと言われている名門中の名門です。懐中時計から腕時計の時代に移って、クロノグラフが発展した最大の理由は、戦争で腕時計の需要が急速に高まった時代背景が関係しています。そもそも軍用時計とは命に関わるツールであり、優れた精度と耐久性を兼ね備えていないと採用されることはありません。ロンジンは世界中の軍隊に時計を供給していた実績があり、これはすなわち、時計メーカーとしてのずば抜けた実力を証明しているのです」

ロンジンのクロノグラフは近年、劇的に価格が高騰している。中でも極めて人気が高いのがキャリバー13ZNを搭載している個体にほかならない。無数のデザインが存在し、そのどれもが資産性がすば抜けて高い。1944年製、手巻き、SSケース、径37mm、¥4,000,000

ロンジンの名機中の名機、キャリバー13ZNとは?

ロンジンのクロノグラフの代名詞であり、クロノグラフマニアが心酔する名キャリバーがある。それこそが、13ZNである。

「キャリバー13ZNとは、ロンジンが開発した腕時計用のクロノグラフ専用ムーブメンドです。初代の13.33はこだわりが強すぎたことから、あまりにも組み上げの効率が悪かったため、量産に適していませんでした。この課題点を克服したのが二代目の13ZNであり、これは決してコストダウンではありません。その証拠として、13ZNはフライバック機能を追加しています。これは後にロンジンが手掛けるクロノグラフ全般の特徴になっていきます。13ZNのクオリティを物語るのが、細部の仕上げです。面取りはもちろん、目には見えない裏側まで、パーツを徹底して磨き上げています。それでいて、地板などの骨組みは耐久性を重視している点が、とてもユニークなんですね」

仕上げの美しさと耐久性を合わせ持つのが、13ZNの個性であり、並みいる競合ブランドの製品を凌ぐ理由なのだ。  

この数年、あまりの人気から13ZNを市場で見かける機会は激減しており、資産的価値は増々高まるばかりだ。

「この当時は、あのパテック フィリップですら自社でクロノグラフのムーブメントを開発することができなかったことを考えると、いかにロンジンが優れていたかが分かります。13ZNを搭載する個体なら、コンディションや稀少性にもよりますが、1000万円以上の価格がつくこともめずらしいことではありません」

ケアーズ森下本店
住所:東京都江東区森下1-14-9
TEL:03-3635-7667
営業時間:10:00~19:00(月~金曜)、11:00~19:00(土曜・日曜・祝日)
休み:水曜(祝・祭日を除く)
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Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。  


Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典