“なんでも鑑定団の時計担当”が惚れ込むヴァシュロン・コンスタンタンの極上クロノグラフ

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなるヴィンテージウォッチの魅力を、さまざまな角度から掘り下げる本企画「ヴィンテージウォッチガイド」。第9回目も、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団!」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんをゲストに迎え、1940年代に製造されたヴァシュロン・コンスタンタンの稀少なクロノグラフを紹介する。

ドレスウォッチに匹敵する美しさを宿したクロノグラフ

需要と供給のバランスから相場が成り立つヴィンテージウォッチの世界では、人気や稀少性は必ずと言っていいほど重視される。その反面、市場には価格以上のクオリティを持つ時計との出合いが溢れている。

「オークションでの落札価格が顕著な例ですが、パテック フィリップの絶対的な権威やネームバリューはヴィンテージの市場でも揺るぎませんが、これに比肩する実力を持つ数少ないブランドのひとつとして、ヴァシュロン・コンスタンタンの名が挙がります。海外に比べると日本では人気が落ち着いているため、パテック フィリップよりもだいぶ買い求めやすい価格でありながら、時計のクオリティはほぼ五分五分。とりわけクロノグラフの出来栄えは素晴らしいものがあります。製造本数が極端に少ないので、探したところでそう簡単には見つからないので出合いありきです」

最初期のクロノグラフらしい非防水構造の角型のプッシュボタンがいかにもヴィンテージらしいRef.4072。スナップ構造を採用し、さまざまなケース素材で展開していた。こちらは70年以上前の個体だが、驚くべきコンディションを保っている。1940年代製、手巻き、18KYGケース、径35mm、¥5,000,000

複雑な設計の極みである超一級のクロノグラフは、最先端の技術が注ぎ込まれた時計ならではの輝きを放つ。この個体が持つドレスウォッチに勝るとも劣らないエレガンスについて、川瀬さんは以下のように見解する。

「当時、このクラスのブランドが手掛けるクロノグラフは高級機であったため、ケース素材はイエローゴールドが主流でした。稀に14金を見かけることもありますが、ほとんどのモデルが18金を使用しています。文字盤も非常に手が込んでいて、ブランド名などを、プリントではなく象嵌で表現していたりと手間暇かけて作られています。これに加え、植字の十字マークやインデックス、針などの素材をすべてゴールドで統一しているため、美しさが引き立っているのです。ベルト幅にも目を向けてみましょう。ここが細くなると時計全体が華奢に見えてしまうのですが、この時計は20mmと幅広です。それゆえ、上品ありながら力強い印象が感じられるのでしょう」

宝飾品の世界では、目に見えない細部まで手を抜かずに仕上げるのが超一流の証だという通説があるが、これは機械式時計にも同じことが当てはまる。

「クロノグラフの根幹を支えるムーブメントは、バルジュー社のCal.23をベースにヴァシュロン・コンスタンタンが改良を加えたCal.492を採用しています。仕上げのレベルひとつとっても、ヴァシュロン・コンスタンタンの凄まじいほどのこだわりが伝わります。ほぼすべての受けにコード・ド・ジュネーブの装飾を施しているのですが、見えない部分まで抜かりなく仕上げを入れています。これを裏蓋の内側までやり遂げているのですから驚きを隠せません。ここまで徹底すると生産効率は確実に落ちますが、それを補って余るクオリティがこの時計の何よりの魅力だと言えます」

50年以上も生産され、クロノグラフ動作をより安定させつつ耐久性も高めたコラムホイール式を採用したバルジューのクロノグラフ専用ムーブメントCal.23。この超高級機をヴァシュロン・コンスタンタンが独自の視点でブラッシュアップさせたのが、こちらのCal.492。製造本数も非常に少ない。
裏蓋の内側に施した仕上げまで一切隙がないところが、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計製造のレベルの高さを物語っている。


ケアーズ森下本店
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営:10:00~19:00(月~金曜)、11:00~19:00(土・日・祝日)
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Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。

Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典