“なんでも鑑定団の時計担当”が一押しする根強い人気を誇る防水クロノグラフ

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなるヴィンテージウォッチの魅力をあらゆる角度から掘り下げる本企画「ヴィンテージウォッチガイド」。第13回はテレビ東京「開運!なんでも鑑定団!」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんが、1940年代の防水クロノグラフの魅力から昨今の市場動向を探る。

実用性に秀でたジラール・ペルゴの防水クロノグラフ

無数にあるヴィンテージクロノグラフを選ぶ基準に一概に正解はないかもしれないが、見逃してはならないポイントは確実にある。そのひとつが“防水性能”である。

「いざ探してみると分かるのですが、40年代を中心とした時代のクロノグラフは非防水の時計が圧倒的に多く、故障を避けるために夏場の着用を控える方もいます。そのため、防水機能を持つクロノグラフは年代・ブランドを問わず、非常に人気が安定しています。こちらのジラール・ペルゴの特筆すべき点は、プッシュボタンに防水性を備えている事に加え、スクリューバックの防水ケースであるところです。これは1940年代当時における最先端を行く技術であったに違いありません」

ケース・プッシュボタンともに防水仕様の3レジスターのクロノグラフ。すべての針に焼き入れを施したブルースチールで統一した文字盤は視認性を約束してくれる。この当時のジラール・ペルゴのクロノグラフはほとんどがユニバーサル製のムーブメントを採用しており、こちらはCal.281を搭載。1940年代製、手巻き、SSケース、径33.5mm、¥600,000

ケースの設計以上にヴィンテージのクロノグラフの魅力として欠かせないのが、言わずもがなムーブメントである。マニアの中には、搭載されているムーブメントを基準に購入するツワモノさえいる。

「1791年創業の名門ジラール・ペルゴさえ、この当時、自社でのクロノグラフ専用ムーブメントの開発は不可能でした。そこでクロノグラフのベースムーブメントを供給していたユニバーサルに依頼して、クロノグラフを製造していたんですね。決め手となるのは、通称“トリプルサイン”と呼ばれるムーブメントを含む、文字盤、ケースの3箇所に記されたブランドネームでしょうか。個体のオリジナリティや価値を保証する上で見逃せないポイントです(例外モデルも有り)。」

ユニバーサルのCal.281をジラール・ペルゴが自社でチューンナップした手巻き式ムーブメント。裏蓋がねじ込み式の、防水性に特化した設計には、ブランドの美学がふんだんに感じられる。プッシュボタンの内部にはパッキンが入る。

オメガの屋台骨を支え続けるティソの底力

2本目に登場するのは、経年変化の味わいと2つ目のデザインが絶妙に絡み合うティソのクロノグラフだ。前述のジラール・ペルゴと同様、防水ケースであることも支持されている理由に挙がる。

「オメガと関係の深いブランドであるティソは、ネームバリューの面ではいくらか劣る部分があるかもしれませんが、プレミアという視点であれば凌ぐ場合があります。この個体がまさにそうです。初期のスクリューバックケースと生産数が少ない黒文字盤という2つのレアポイントを押さえています。やはり希少モデルは根強い人気があります」

ステップベゼルと大型のプッシュボタンが重厚感を演出するクロノグラフ。ブラックワントーン文字盤で全体を引き締めた人気のスタイリング、マニアックな1本だ。1940年代製、手巻き、SSケース、径32.5mm、¥1,380,000

この個体は嬉しいことに正面からだけでも十分な満足感が得られるのだが、時計の裏面にも目を向けたい。

「レマニア製のCal.13CHは、オメガのCal.33.3CHROと並び、クロノグラフのマニアからも評価が高い名機です。小ぶりなムーブメントを覆うスクリューバック式の裏蓋には、ミリタリー調の独特のディテールが見受けられます。このような骨太なデザインもまたティソの真骨頂だと言えるでしょう」

オメガと同レベルのムーブメントを多用していたこともティソが評価される所以だ。Cal.15TLの小型化に成功したことから生まれた手巻きムーブメントCal.13CHは必見の価値がある。
特徴的な裏蓋には、耐磁性や防水性などのスペックのほか、シリアルナンバーが刻印されている。


ケアーズ森下本店
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Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。

Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典