"なんでも鑑定団の時計担当"が語るオメガの手巻き時計【ヴィンテージウォッチガイド④】

時短とは無縁。手間暇を惜しまず掘れば掘るほど面白くなるヴィンテージウォッチの魅力を、さまざまな角度から掘り下げる本企画。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団!」の鑑定士としても知られるケアーズ会長・川瀬友和さんをゲストに迎え、伝説のキャリバー321の復活で話題沸騰中のオメガの手巻きモデルの実力を検証する。


オメガの真髄が宿る"量産モデル"が狙い目

ここで改めて言うまでもないことだが、機械式時計を入手するに当たって、予算と同様に重要になるのが、出合いや機運である。ましてやヴィンテージウォッチとなると話はさらにややこしくなる。チャンスを逃して買えなくなることなんてザラだろうし、実機を目にすることさえ難しいレアモデルが無数に存在する。

「ヴィンテージウォッチの初心者にとって、オメガはあらゆる視点から購入しやすいブランドのひとつだと言えます。時計のブランドは一般的に高級機の開発に力を注ぐことが多いのですが、かつてのオメガは量産モデルに非常に強いこだわりを持って生産に取り組んでいました。従って、汎用ムーブメントのひとつ見てもずば抜けてクオリティが高いのです。良質な個体が数多く現存していることもあり、買い求めやすい価格で探すことができます。それと真逆になりますが、『スピードマスター』のファーストモデルのように、世界的なオークションですらほぼ見かけることがない稀少モデルがいくつかあります。そんな間口の広さや懐の深さが、ヴィンテージの世界におけるオメガの魅力なんですね」

名機だと誉れ高い手巻きムーブメント"30ミリキャリバー"

自動巻きが主流の現行モデルに対して、ヴィンテージウォッチに該当する機械式時計は手巻きが非常に多い。それはオメガも然りで、非常に豊富な選択肢がある。ケアーズ森下本店の店頭から川瀬さんに2本の時計を選んでもらった。

「やはり3針の手巻きは外せません。なかでも通称“30ミリキャリバー”と呼ばれる一連のムーブメントを搭載したモデルは根強い人気があり、該当する手巻きムーブメントは1939年から登場しました。当時では大きな直径30mmというサイズは、精度と耐久性を追求するためにパーツを大型化した結果として生まれたものでした。イギリス軍に公式採用されたこともこのムーブメントの信頼性を証明しています。こちらのモデルには、高級機らしい仕様の証であるブレゲヒゲを採用したCal.285という、この時代のオメガ手巻きの高級ムーブメントが搭載されています。きちんとしたメンテナスを行うことで高い精度が期待できます」

普段使いに適した防水ケース仕様のラウンドモデル。このように、特別なペットネームがないモデルでも面白い時計が見つかることもヴィンテージウォッチならではの醍醐味だと言えよう。1962年製、手巻き、SSケース、径35mm、¥240,000
“30ミリキャリバー”を代表する名機Cal.285。堅牢な設計に加え、大きなテンプが精度の高さを物語る。

名キャリバー321を搭載した「スピードマスター」4th

言わずと知れた“ムーンウォッチ”「スピードマスター」。数あるオメガの傑作でも最も有名なモデルだと言っても過言ではない。ヴィンテージウォッチの世界でも1957年に登場した幻のファーストモデルを筆頭に非常に人気が高く、該当するモデルはすべて手巻きのムーブメントが搭載されている。

「こちらの第4世代にあたるRef.145.012は、アポロ11号の月面着陸から約50年ぶりに再生産がはじまったことで話題を集めているクロノグラフムーブメント321が搭載されています。321の特徴として、主に高級機で見受けられるコラムホイール式であることと30mmキャリバーの時代から受け継がれた、耐久性に優れたピンクゴールド色の銅メッキがムーブメント全体に施された点が挙がるのですが、後継機のRef.145.022では生産効率を重視したカム式の861が採用されるようになります。この点もヴィンテージウォッチとしての評価の対象として見逃せません。大変貴重なオリジナルのブレスレットが付属している点も高ポイントだと言えるでしょう」

キャリバー321を搭載する最終モデルとしても人気のRef.145.012。完成されたデザインは永遠のスタンダードとして多くのファンに親しまれている。1967年製、手巻き、SSケース、径40mm、¥1,300,000
パーツ単体で探すのは至難の業だと言われているオリジナルのブレスレット。Ref.145.012の場合、こちらの短めのバックルだと年式が一致する。
研磨によって多少掠れてはいるが、裏蓋にはシーホースマークの刻印がしっかり確認できる。


ケアーズ森下本店
住所:東京都江東区森下1-14-9
TEL:03-3635-7667
営業時間:10:00~19:00(月~金曜)、11:00~19:00(土曜・日曜・祝日)
休み:水曜(祝・祭日を除く)
https://www.antiquewatch-carese.com/



Tomokazu Kawase
1957年東京生まれ。1989年、地元の江東区・森下でケアーズを創業。以来、30年以上もの間、厳選したヴィンテージウォッチのセレクションと自社に工房を構える独自のスタンスが内外で支持されている。現在は同店の会長に就任。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られている。


Text=戸叶庸之 Photograph=江藤義典