【G-SHOCK×トランスフォーマー】夢のコラボレーションが実現! その制作秘話<後編>

耐衝撃性能を追求した腕時計「G-SHOCK」と変形おもちゃの「トランスフォーマー」。どちらも日本で生まれ世界で認められたプロダクトであり、今ではひとつのカルチャーとなっている。そんな両者がコラボレーションを行った。その名も『マスターオプティマスプライム-レゾナントモード(with G-SHOCK)』。G-SHOCK『DW-6900TF-SET』をロボットの胸部に内蔵させることができる特別仕様で、2形態に変形可能。G-SHOCKの“生みの親”伊部菊雄氏(カシオ計算機)とトランスフォーマーの“生みの親”大野光仁氏(タカラトミー)の対談でスペシャルコラボ実現までの道のりをたどった。


35年分の熱狂が形になった

耐衝撃性能を磨き、スポーツやファッションなどのユースカルチャーと連動することで“ライフスタイルツール”となったG-SHOCKは、時計を超えた存在となった。一方、自動車や飛行機などが変形してロボットとなるトランスフォーマーも、アニメや映画になることで、おもちゃを超えた存在になった。しかし両者はともに、始めから順風満帆ではなかった。

『マスターオプティマスプライム-レゾナントモード(with G-SHOCK)』。G-SHOCK『DW-6900TF-SET』をロボットの胸部に内蔵させることができる。人型のロボットモードと、G-SHOCKを美しく飾るペデスタル・プライムモード(台座モード)の2形態に変形可能。時計は国内外で人気の高い「DW-6900」をベースモデルに採用。ELバックライトには「マスターオプティマスプライム」が所属する正義の軍団「オートボット」のエンブレムが浮かび上がる。¥29,000[2018年12月発売予定]

伊部菊雄氏(以下伊部) 私はG-SHOCKの生みの親ではありますが、苦労したのは初めの数年だけ。それ以降はユーザーが育ててくれたブランドだと思っています。発売後10数年は売れなかったのですが、それでもG-SHOCKに魅力を感じてくれたファンに支えられてここまで来れました。

大野光仁氏(以下大野) トランスフォーマーも同じですね。当初は自動車や飛行機といった身近なモノがロボットに変身する子供のおもちゃとしてスタートしました。しかしアメリカのハズブロ社と組み、アニメ化されると大きな話題となり、そしてハリウッドで映画化もされました。ファンの熱意によってどんどん世界が広がっていく。それは驚きの連続でしたね。

左:G-SHOCKの“生みの親”伊部菊雄氏(カシオ計算機)。右:トランスフォーマーの“生みの親”大野光仁氏(タカラトミー)

――苦労の末にたどり着いた両者のコラボレーションは、比較的順調に進んだ。それは両社が豊富な経験を積んできたからである。

大野 まず決めたのは「G-SHOCKを乗せる台座が変形する」ということ。そこでまず台座のデザインを固め、スケッチを描き、モックアップを作ってディテールを詰めていきました。本当はすべてのG-SHOCKが収まるようにしたかったのですが、フロッグマンやレンジマンなど極端に大きなモデルもあるので断念しました。しかしカシオから提案されたG-SHOCKの定番である「6900」シリーズを見て、デザインやバランスの良さに惹かれました。一気にイメージが膨らみましたね。

伊部 レッド×ブルー×シルバーを基調としたカラーリングも特別ですし、ELバックライトにはエンブレムが浮き上がる仕様もカッコいいですね。しかしロボット内に時計本体を内蔵するという試みは初めてですよね。大変だったんじゃないですか?

大野 まずは困難だったのは、バンドの処理ですね。さらには時計という大きなパーツを組み込むので、全体的な大きさも必要。さらには時計が映えるバランスも意識しました。ただしG-SHOCKは樹脂素材で、トランスフォーマーのボディもプラスティックということで、組み合わせてみると非常に収まりが良く、デザインに馴染んでくれました。時計とロボットという全く異なる二つのモノが融合し、新しい価値を生み出せたと思います。

「トランスフォーマーはファンの熱量で世界が広がっていった」と語るタカラトミーの大野氏。

――この前代未聞のコラボレーションは、販売方法も新しい。「マスターオプティマスプライム レゾナントモード」は、G-SHOCK「DW-6900」とのセットモデルが2万9000円で、変形ロボットフィギュアのみの『マスターオプティマスプライム』は1万6000円。G-SHOCKとのセットは全世界のファンに向けて販売するが、残念ながら販売数はかなり少ない。しかし前代未聞のコラボレーションは、今までにない話題となるだろう。

伊部 全世界のトランスフォーマーファンに、我々のG-SHOCKを知ってもらう。これも大きな価値があります。

今までになかったコラボレーションと絶賛するカシオ計算機の伊部氏。

大野 もちろん我々からしても、時計好きの人々にトランスフォーマーのことを知ってもらういい機会にしたいですね。

伊部 しかもこのコンビの良い点は、誕生年が1年しかずれていないので、40周年も45周年も一緒に祝うことができる。そういった関係性を築けたのも大きな価値がありました。しかし大野さんの創造性には驚かされますよ。形状だけのデザインではなく、変形するという構造まで理解しているわけですからね。

大野 伊部さんの面白いのは、誰も思いつかなかったことを実現させたこと。“壊れない時計”というコンセプトを35年以上前に考案し、それが今も守られているのですから。

伊部 それは大野さんも同様ですよ。本来動くはずもない自動車の模型をロボットに変形させるなんて、ある種の"非常識"ですから(笑)。

大野 作り手として、こんなに楽しい仕事はない。パズルのような感覚ですね。

伊部 私も好きで仕事をしているように思われますが、大野さんはそれ以上ですね。しかし好きでなければ、どこかに妥協が生まれこれほどのクオリティには達しませんから。

大野 たしかに自分からやりたい。というチャレンジ精神がなければできないでしょうね。

――世界に誇れる日本生まれのブランドが融合し、新しい物語が始まる。それは常熱体質な二人のクリエイターの“35年分の熱狂”が、丸ごと詰まった特別な価値を持っている。

Kikuo Ibe
1952年生まれ。'76年、カシオ計算機に入社。設計部に配属され、デジタル時計の構造開発を担当。'81年、時計を落として壊した実体験をもとに自らの提案で「G-SHOCK」を商品化。その後、商品企画部でメタル「G-SHOCK(MR-G)」などの企画も担当。ブランドの世界観を広める活動にも携わっている。
Kohjin Ohno
1959年生まれ。'80年、タカラ(現タカラトミー)に入社。「トランスフォーマー」の前身「ダイアクロン」シリーズ、「ミクロマン」シリーズの開発に携わる。以降、企画開発担当者として「トランスフォーマー」シリーズを中心に現在まで30年以上、おもちゃ開発一筋の人生を歩んでいる。


Text=篠田哲生 Photograph=吉田タカユキ


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