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2022.07.10

88本総額29億円越え! 世界を熱狂させた「ロイヤル オーク」オークション

新興の富裕層を巻き込み、かつてない白熱した落札が繰り広げられる時計オークション。連載「オークションから読む高級時計の行方」では、ジャンルは一切問わず、高級時計のトレンドを占う注目の時計をフォーカスする。第7回は、2022年5月6日にフィリップスがスイス・ジュネーブで開催したオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」の50周年記念オークション「The Royal Oak 50th」を取り上げる。【過去の連載記事】

連載「オークションから読む高級時計の行方」

88本のオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」が完売した前代未聞のオークション

高級時計の市場をラグジュアリースポーツウォッチが席巻して久しいが、空前のブームを牽引したブランドのひとつがオーデマ ピゲであり、アメリカの世界的な金融グループであるモルガン・スタンレーが発表した2021年の売上高が時計ブランドで世界第4位になったことからも異論を挟む余地はないだろう。

オーデマ ピゲのフラッグシップモデル「ロイヤル オーク」が誕生から50周年を迎えた今年、フィリップスはオーデマ ピゲ・スイス本社の協力を得て、新旧の希少なコレクションを集め、前代未聞の「ロイヤル オーク」をテーマにした時計オークション「The Royal Oak 50th」を2022年5月6日に開催した。

世界54ヶ国から1000人以上がオークションに参加し、このうち430人が会場に訪れた。その熱狂ぶりは凄まじく、出品された88本の時計は完売、売上は2230万3780スイスフラン(日本円で約29億3210万円)という驚異的な記録を残した。※2022年5月6日時点のレートでスイスフランを133.30円で計算

Ref.5402ST

開催前から話題であったロット8のRef.5402STの登場で会場のボルテージは最高潮に。©️PHILLIPS

抜きん出た希少性価値を持つ超レアモデルが登場!

ここでは、88本のロットの中から飛び抜けて高い注目度を誇る5本の「ロイヤル オーク」を紹介する。

今回のオークションにおけるスターロットであるロット8は、ヴィンテージロイヤル オークにおける史上最高額、105万8500スイスフラン(日本円で約1億4100万円)を更新。この個体の来歴は、「ロイヤル オーク」の最初期ステンレススチールモデルRef.5402STの中でもケースナンバー1000番以下が存在する”Aシリーズ”、しかも2番目に製造されたものであること、なおかつ1972年のバーゼル時計見本市のオープニングでマスコミや一般に公開された4本の「ロイヤル オーク」のひとつであることが確認されている。

ロイヤル オーク Ref.5402ST

ロイヤル オーク Ref.5402ST(1972年製造)©️PHILLIPS

同じくRef.5402STでありながら、まったく異なる魅力を放つロット88は、偉大なファッションデザイナーとして世界中で愛され続ける故カール・ラガーフェルドが所有していた伝説的な1本である。このブラックPVD加工にカスタマイズされたステンレススチール製の時計は、生前に残されたカール・ラガーフェルドのポートレイトでも時折見かけられることから、一部のマニアの間では知られた存在であった。話題性に負けず劣らず、予想落札価格の10~20万スイスフランを遥かに上回る、93万500スイスフラン(日本円で約1億2500万円)で落札された。

ロイヤル オーク Ref.5402ST

ロイヤル オーク Ref.5402ST ブラックPVD加工(1973年製造)©️PHILLIPS

オーデマ ピゲはこれまで様々な別注モデルを展開しているのだが、ロット40のRef.25654PTはその頂点に立つ1本に位置付けられるだろう。1988年に製造されたイギリスの宝飾店アスプレイの別注によるプラチナ製の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」は、美しいトロピカルダイヤルの経年変化であったことやナンバリングが1番であったことから世界中のコレクターから絶大な評価を得た。102万2200スイスフラン(日本円で約1億3620万円)という落札額は、「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」における史上最高額を更新する結果となった。

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.25654PT

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.25654PT(1988年製造)©️PHILLIPS

ユニークな質感のブルーダイヤルが注目されたロット10は、80万4400スイスフラン(日本円で約1億720万円)で落札され、Ref.14802のオークションレコードを塗り替えた。このモデルはRef.14802の20周年を記念して、2000年にイタリアのトスカーナ限定で20本で発売された。39mm径のプラチナケース&ブレスレットの雰囲気と相まって、独特の魅力を放っている。

ロイヤル オーク Ref.14802

ロイヤル オーク Ref.14802PT(2000年製造)©️PHILLIPS

ラストを飾るのは、オープンワークダイヤル×永久カレンダーの組み合わせが強烈なインパクトを残したロット33のRef.25829TP。「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」のシリーズに連ねるRef.25829は、1996年から2013年まで製造されたRef.25820のオープンワークバージョンであり、こちらのタンタニウム×プラチナ製のモデルは1997年に限定16本で製造された。今現在、「ロイヤル オーク」のコレクションは多彩なコンプリケーションを取り揃えており、絶大な人気を集めるが、このモデルは記念碑的な傑作として評価されたと言える。落札価格は76万8100スイスフラン(日本円で約1億240万円)で、Ref.25829における史上最高額を更新した。

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.25829TP

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.25829TP(1997年製造)©️PHILLIPS

熱狂とともに幕を閉じた「ロイヤル オーク」の50周年記念オークションは、ラグジュアリースポーツウォッチの今後を占うターニングポイントとして語られていくことになるだろう。

 

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オークションから読む高級時計の行方

インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。

TEXT=戸叶庸之

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