【ブランパン】ダイバーズウォッチの祖・フィフティ ファゾムス 70周年記念 ACT3 が凄い理由

ダイバーズウォッチの定義を作った、フィフティ ファゾムス

空気ボンベを背負って水中で活動するスキューバダイビングの技術が確立した1940年代以降、水中で行動する際に使用する計器の開発が急ピッチで進んだ。

フランス海軍では、コンバットダイバーと呼ばれる潜水特殊部隊の編成を進めており、海中でも正確に時刻を読み取れる時計を求めていた。そこで部隊を率いるふたりの海軍士官は、ダイバーでもあったジャン＝ジャック・フィスターがCEOを務めるブランパンにコンタクトをとった。

フランス海軍が求めたのは、優れた防水性だけでなく、反射しにくい黒いダイヤルや読みやすい大型表示、タンクの残量を示す回転ベゼル、そして深海や夜でも情報を読み取ることができる夜光表示といったスペックだった。海中の世界を知っていたフィスターは、すぐにその必要性を理解した。それに加えて新たな提案として、ベゼルが誤作動してもボンベの残量を多めに表示しないように逆回転防止機構を組み込んだ。さらに防水面の弱点であるリューズをなるべく操作しないように自動巻きムーブメントを搭載し、さらに耐磁性能を加えることでダイバーのための時計として完成度を高めた。

1953年にデビューを果たした時計は、「フィフティ ファゾムス」と命名する。ファゾムとは、水深の測定単位のことで、１ファゾム＝1.8288ｍに相当。つまりこのモデルは50ファゾム＝約90mもの防水性能を有していること意味している。

非常に優秀なダイバーズウォッチであったため、アメリカ海軍やドイツ海軍も「フィフティ ファゾムス」を制式時計に採用することになる。そしてフィフティ ファゾムスが定めたスペックが、その後のダイバーズウォッチの基準となった。

それゆえフィフティ ファゾムスは、モダンダイバーズの原点と呼ばれるのだ。

フィフティ ファゾムス 70周年記念 ACT3

70周年を迎えた「フィフティ ファゾムス」は、三部作でアニバーサリーを祝った。「ACT1」は、2003年に誕生した復刻モデルへのトリビュートモデル。「ACT2」は3時間計を備えた未来志向の高性能ダイバーズウォッチ。そして伝説のミルスペックダイバーズウォッチからインスピレーションを受けたモデルが、この「ACT3」である。

まず目に飛び込んでくるのは、6時位置の水密性表示。時計内に水が浸入するとこのディスクの色が変わるため、誤って使用する前にメンテナンスに回すことができるというもの。アメリカ海軍のミルスペックに準拠した機能だが、まさに本気の時計といった雰囲気があり、ヴィンテージウォッチ市場でも高い人気を誇る。これを「ACT3」に取り入れた。

さらにケース素材には、ブロンズに37.5％のゴールドなどを組み合わせた９Ｋブロンズゴールドを使用。「ACT3」では、ゴールドを加えているのでブロンズ特有の緑青が発生せず、美しいケースの発色をいつまでも保つことができるようにした。そしてムーブメントに非磁性素材を使うことで1000ガウスの耐磁性を実現したことで、シースルーバック化にも成功している。

過去の傑作のエッセンスを巧みに取り入れつつ、現代の時計愛好家を刺激する時計にまとめる。それが「フィフティ ファゾムス 70周年記念 ACT3」なのだ。

フィフティ ファゾムス 70周年記念 ACT3