世界のレストランに精通する中村孝則が、ザ タヴァン グリル&ラウンジに見る美食のトレンド

ホテルはもてなしの集大成だ。会食に、デートに、どんな時も安心感と信頼を与えてくれる。とはいえ、本当に便利で、賢い使い方とはどんなものなのだろうか? ここ数年、新しいホテルが続々とオープンするなか、ラグジュアリー ライフスタイルホテル「アンダーズ 東京」の生まれ変わったメインダイニング、『ザ タヴァン グリル&ラウンジ』に中村孝則氏は着目。美食のトレンドとホテル利用の最新事情などと合わせて、大人が嗜むに相応しいその利用術を伺った。


カジュアルユースなホテル新時代の到来

訪れる食の名店は、年間約200軒。美食の真髄を極める中村孝則氏は、パスポートを使わない月がないという超多忙なジェットセッターだ。ゆえに、上質なホテルで安堵する束の間のひと時が欠かせない。

「初めて訪れる国ではグローバルブランドのホテルを選ぶことも多いのですが、それは絶対的な安心感があるから。利便性や快適さはもちろんのこと、コンシェルジュサービスがしっかりしている世界展開のホテルは、ビジネスユースやおもてなしの場でも、使い勝手は抜群です。自分のスタイルに合う、お気に入りを作っておくといいですね」

では、宿泊以外の利用はどうなのか。日本では未だに家族の記念日や思い出作りのためにホテルを利用する人も多いが、もっとカジュアルに、もっと日常生活に寄り添うように、ホテルを利用する客層が増えているという。

「クラシックホテルのオーセンティックなサービスも魅力的ですが、今は、肩肘張らずに個々のスタイルで利用できること、それがホテルの潮流のひとつかもしれません。この『アンダーズ 東京』は “日本におけるラグジュアリー ライフスタイルホテルの先駆者”ともいえる、ホテル新時代を象徴するような存在ですね。大都会の真ん中にあるモダンな雰囲気と、フレキシブルで軽やかな対応は、絶妙な心地よさがあります」

日本でライフスタイルホテルが増えつつある今、こだわりを持った人々が自分のスタイルで楽しめる時代になってきたという証なのかもしれない。

食のトレンドの最新キーワードは、その地に根づく独自性

温度1〜2度、湿度95%以上に保たれた雪室の熟成肉のグリルを食べられるのは、都内ホテルでは『ザ タヴァン グリル&ラウンジ』だけ。栃木県産 ティーボーン(750g)¥24,000、北海道産 シャトーブリアン(400g)¥18,000 (税・サービス料別途)

食のシーンでも、ホテルは過渡期を迎えている。中村氏が長年、日本評議委員長を務める『世界のベストレストラン50』と『アジアのベストレストラン50』でも、ホテルダイニングがいくつもランキング入りしているそうだ。

「マカオや香港でも、ホテルのレストランが実力をどんどん伸ばしています。最近、バンコクの有名レストランのオーナーが来日して『アンダーズ 東京』に滞在されていたのですが、こちらのダイニングで食事をご一緒しました。食通にとっても刺激を与えてくれるようなレストランがあること、それがホテル選びの重要なポイントだと思います」

総料理長のショーン・キーナン氏はオーストラリア出身。シグネチャーメニューのグリルは、肉を香ばしく、旨味を閉じ込め、ジューシーに焼き上げるラバストーン(溶岩石)を使った高温の特注オーブンを採用。

そんな中村氏も注目する『アンダーズ 東京』のメインダイニング、『ザ タヴァン グリル&ラウンジ』は新総料理長を迎え、今年4月にリニューアルしたばかり。『アンダーズ 東京』といえば、その地の伝統や文化をホテルに反映する“センス オブ プレイス”をコンセプトにしているため、ダイニングでは、ここでしか味わえない日本の魅力を結集した食事をすることができる。

看板メニューは、雪室(ゆきむろ)という技法を用いて、熟成した肉のグリルだ。ショーンさんが日本で古来から伝わる知恵の結晶、天然の冷蔵庫である雪室に着目した理由は2つある。1年を通して、一定した低温・高湿度環境が保てることにより、肉の鮮度が保持されること。そして、冷蔵庫とは異なり、温度の変動や光の変動も受けないため、肉がストレスフリーな熟成をすること。つまり、肉が無駄なく熟成され、旨味が増し、柔らかい触感になるというわけ。

「ほぉ……これは美味しい! シャトーブリアンはまるで昆布〆めしたような、しっかりとした旨みを感じますね。フィレも想像以上に柔らかい。サーロインは脂が甘いのに、まったくしつこくなく、後味がすっきりしていて、いくらでも食べられますね。雪室は、新潟などの雪国で昔から受け継がれてきた暮らしの知恵。地域ごとの食文化の独自性を追求する傾向は、ホテルダイニングのトレンドなんです。世界の最先端を行くホテルブランドのメインダイニングだからこそ、でしょうか。雪室に目をつけるとは、さすがですね」

また、新鮮な魚介を使った料理も外せない。なかでも、シグネチャーディッシュのロブスタービスクは人気の一品で、サフランが香る別添えのルイユソースを好みで入れながらいただく。サラダやマリネなどのアペタイザーも充実しているうえに、そのプレゼンテーションが食欲を刺激してくる。ビスクは目の前で器に注ぎ、シーザーサラダはひと手間、ふた手間をかけ完成。食べる前から、有意義な食事の時間が流れて行く。

もてなしの切り札は眺望と温かなサービス

虎ノ門から望む東京の絶景を味わえるのもこのレストランの魅力だ。地上51階からのナイトビューは、大都会の煌めきを手中にするような輝かしさで、目にした瞬間、圧倒される。同時に、木材をふんだんに使ったインテリアには、和のテイストが入っているので、どこかほっとする雰囲気を醸し出ている。そんな興奮と安心感を併せ持つ場所ゆえ、接待やデート、いずれでも利用したくなるのだ。

大きな窓に囲まれた開放感あふれる空間で、周りに視界を遮るビルがない、見事なナイトビュー。星が瞬く美しい夜は、お台場やレインボーブリッジ、スカイツリーまで見渡せる。

「この眺望も、食事のシーンを盛り立てる重要な役どころ。タヴァンから眺めるこの絶景は、ゲストを高揚させますよね。料理のクオリティはもちろん、グローバルなホテルダイニングはやはりサービスの質が肝となります。ここタヴァンは、相手や目的を問わず、スマートで温かみのある気取らないサービスが好印象です。テーマ性のあるアートを配した、洗練された空間で素敵な音楽と会話を楽しみながら、美味しい料理とお酒をいただく。まさに、大人の理想に適うダイニングですね」

記憶に残るホテルダイニングの鮮やかな演出

食事を終えたら、『ザ タヴァン グリル&ラウンジ』のラウンジ&バーでひと息つくのをお薦めしたい。大きな窓一面に広がる夜景をバックに、平日はミュージシャンが生演奏を繰り広げる。実は、グランジやオーパスワンなどのプレミアムワインをバイザグラスで楽しめるサービスもスタートしたという(在庫状況は問い合わせ要)。高価なボトルでも、特殊なワインディスペンサーを使って一杯ずつ飲めるのは、好きなものを好きなだけ、というここのアットホームな雰囲気を体現しているようだ。

そして、やはりカクテルも、日本ならではの作り方をしているのが興味深い。マティーニなら、国産の旬のスイカを使ったり、ウィスキーソーダなら、日本のウイスキーと果物を使うという徹底ぶり。例えば、お相手の好きな果物や場所を押さえておけば、ちょっとしたサプライズも。音楽をアテに、そんな粋なお酒を酌み交わせば、相手との距離もぐっと縮まるはず。

「音は、人の五感のなかでも特にダイレクトに記憶に残りますから、素晴らしいディナーの後なら、なおさら、その余韻を少しでも長く楽しみたい。そんな時に、心地よい音楽があれば、お酒も進みますよね。これだけ雰囲気の良いバーだと、あれこれと飲んでしまいそうです(笑)。また戻ってきたくなる、そんな温かみのある場所ですね」

ザ タヴァン グリル&ラウンジ
TEL:03・6380・7739(レストラン予約)
営業時間:ダイニングエリア/朝食6:30〜11:00、ランチ11:30〜15:30、ディナー18:00〜22:30、ウィークエンドブランチ 11:30〜13:00、13:30〜15:30 ラウンジエリア/10:30〜23:30、アフタヌーンティー 14:00〜17:00(土曜・日曜・祝日13:00〜15:00、15:30〜17:30)※ラストオーダーは各営業時間の30分前 席数:ダイニング108席、ラウンジ65席(プライベートルーム2室、セミプライベートルーム3室 ※プライベートルーム セミプライベートルームの利用料金については、公式HPをご覧ください)。

公式サイト
http://andaztokyodining.com


Takanori Nakamura
コラムニスト・美食評論家。1964年神奈川県葉山町生まれ。ファッションからカルチャー、旅とホテル、ガストロノミー、ワインやシガーまで、ラグジュアリー・ライフをテーマに、企画、執筆、講演活動などを行う。2007年にフランス、シャンパーニュ騎士団のシュバリエの称号を、'10年にはスペイン、カヴァ騎士の称号を受勲。プライベートでは、「渋谷金王道場」に所属する剣士でもあり、剣道教士七段の腕前。「大日本茶道学会」茶道教授でもある。

Text=飯嶌寿子 Photograph=鈴木拓也


タヴァンがリニューアルオープン!