日本のトップシェフが一堂に会す"ありえない"食イベント 「Chefs Gathering」に潜入

去る2月、東京・渋谷にあるTRUNK(HOTEL)の一室で、とあるイベントが開催された。投資事業を行う傍ら著書を多数手がけ、B級グルメから三ツ星レストランまで食の世界を極める本田直之氏の声かけで実現した「Chefs Gathering(シェフズ ギャザリング)」は、聞けば、今の料理界を牽引するシェフ30名強が集い、“和・洋などの業界の垣根を越えて料理を作りながら食べて飲む”会なのだという。いわば予約困難なレストランの味がホテルの一室で飛び交うようなもので、ここに参加できるのは本田氏が招待したシェフと少数の限られたゲストだけ。このシークレットなイベントに、編集部が潜入した。 

「御料理 宮坂」の宮坂展央氏のパフォーマンスに歓声を上げ、調理の様子を動画や写真で記録する参加者たち。

日本のガストロノミーを牽引する新進気鋭のシェフの集い

TRUNK(HOTEL)の最上階、キッチンを備えるテラススイートに、両脇に材料を抱えたシェフ達が次々と集ってきた。「おお!」「久しぶり!」と威勢のよい声で挨拶を交わすその面々たるや、豪華そのもの。

東京で最も予約が取れないといわれる鮨職人、「はっこく」佐藤博之氏や「東麻布天本」の天本正道氏、イタリアンの精鋭「ペルグリーノ」の高橋隼人氏、焼肉の概念を変えた「よろにく」桑原Vanne秀幸氏など、ここには書ききれないが、国内外でその名を轟かすシェフたちが顔を揃えている。

普段はフードジャンルを超えて交流する機会の少ない彼らがライブで料理をふるまい、酒を酌み交わしながら交流を深めるというのが「Chefs Gathering」のコンセプトなのだ。

左から「81」の永島健志氏、「ジャン・ジョルジュ東京」の米澤文雄氏、「アジアベストレストラン50」の日本評議委員長を務めるコラムニストの中村孝則氏、主催者の本田直之氏

夜9時半、本田氏による乾杯の音頭を革切りにイベントはスタート。焼酎「百年の孤独」のレアもの、「平和酒造」のクラフトビール300本など、上質なお酒類もスタンバイしている。キッチンからは続々と料理が運ばれ、その度にシェフ達は歓声をあげ、写真を撮り、その味を確かめようと手を伸ばす。まるで男子校の学祭や同窓会を思わせるような、賑やかでリラックスした雰囲気だ。

食材まわりの取りまとめを担当したという「ジャン・ジョルジュ東京」の米澤文雄氏は「初めましてのシェフも多いし、その方と知り合いになれるってやっぱありがたいですよ」と生き生きとした表情で立ち回っている。

会場には、グルメ通で知られるアンジャッシュ渡部建氏の姿も。「こんなに心がほどけているシェフ達を見られる機会は無いので、素晴らしいですね」

「銀座 しのはら」の篠原武将氏、佐藤氏、天本氏らが並んで寿司を握るという贅沢な場面も。

単に料理をふるまうだけではなく、この場でしか実現しないシェフ達のコラボレーションメニューも目玉のひとつ。桑原氏の「楠さんが揚げたビーフカツでサンドイッチつくるから!」という声かけに「すごくないですか!?」と即座に反応したのは、TRUNK(HOTEL)を運営するTRUNK代表取締役社長の野尻佳孝氏だ。
 
「トップのシェフ同士がこんなに無邪気に交流出来る場って今まで無かったですよね。ここは元々創発を生みたいと思ってつくったホテルなんです。この部屋ではシェフ達が集まり、(ロビー階の)下のバーでは別の出会いが生まれているかもしれない。そういう、至るところで何かが生まれるインフラになればいいなって思っています」

左からアンジャッシュ渡部氏、野尻氏、「リストランテ・ラ・ブリアンツァ」の奥野義幸氏、「天ぷら くすのき」の楠 忠師氏、「鳥しき」の池上義輝氏。全員が72年生まれで、横のつながりも強めているという。

シェフたちによる豪華メニューの数々はこちら!

さまざまなシェフから「参加したい!」との声が相次いでいるという「Chefs Gathering」の開催は今回で2度目。その主催者である本田直之氏はこう語る。

「以前、『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』という本を書いたタイミングで、パリでシェフたちを集めてパーティをやったんです。その時に言われたのが“普段、こういうメンバーで集まらない”ということ。パリにいる日本人シェフたちは繋がっているのかなと思ったら、意外と繋がっていない、みたいな。それは、日本に帰ってきても同じでした。じゃあ、シェフの会をやろうよってなったのが去年の8月(第1回目)だったんです」

「シェフの考えや哲学をもっと知ってもらえるような手伝いをしたい」と本田氏。

トップクラスのシェフ同士が互いの料理を食べ、フィードバックを与え合う。話が盛り上がり、キッチンで一緒に料理をつくり始める。国内外、和洋の垣根を越えた常識では考えられない化学反応がそこここで起こる「Chefs Gathering」は、今後、日本の料理界に“何かを起こす”予感を感じさせる。
 
「ひと昔前の日本の料理界は垣根も上下関係もあったけど、今は、若くても面白い奴は面白いってフラットな感じになってきていると思う。それをもっと加速させる手伝いができたら嬉しいですね。垣根を壊さないと、面白いコトって生まれないから。このイベントから何が起きるかは分かんないけど、10年後には何か起こるんじゃないのかな? と。単にそれがやりたいだけだし、シェフたちの活躍を応援したいんです」

Naoyuki Honda                            レバレッジコンサルティング代表取締役社長。ハワイ、東京に拠点を構え、世界中を旅しながら仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。屋台、B級グルメから三ツ星レストランまで、食の世界にも造詣が深い。『レバレッジ時間術』(幻冬舎)『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』(ダイヤモンド社)『オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった』(日経BP社)など著書も多数。食べログにて『本田直之 グルメ密談 トップシェフが内緒で通う店』を連載中。

TRUNK(HOTEL)
住所:東京都渋谷区神宮前5-31
TEL:03-5766-3210
https://trunk-hotel.com/

Text=ゲーテWEB編集部 Photograph=田尻陽子

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