新世代の気鋭店乱舞。実力派の底力にも確信! 歓迎再来!中華熱狂時代

革命をもたらしたヌーベルシノワの出現から二十数年……。モダン中華の流れが定着し、ここ数年、話題も停滞気味に思えた中国料理界に、近年まれに見るブームが起こりつつある。カウンター割烹スタイルの台頭、驚きの発想と手法を取り入れた気鋭店の誕生など、アツくて大きな波が押し寄せてきている。“今”を走る中華新時代。肌で感じて、熱狂せよ。

独創的世界で魅了する隠れや系ネオ中華

青山 はしづめ(アオヤマ ハシヅメ)
<東京/表参道>

「民は食を以(もっ)て天と為す」の言葉が示すとおり“食”を何よりも重んじる中国。つまり、豊かな食は、健康な精神を育むのに欠かせない要素である。2015年5月12日、青山にオープンしたばかりの『はしづめ』は、そんな思想を重んじつつも、型にはまらぬ中国料理を供する一番の注目店だ。
 裏通り沿いに佇むバーの扉を開け、上階に進むと、どことなく和の情緒を感じさせる空間が。ここで供されるのは、四川や広東、上海などのジャンルを超えて、独創的感覚で旬の食材を生かすネオ中華だ。『四川飯店』出身の初見直人シェフ渾身(こんしん)の逸品の数々でゲストを大いに楽しませる。自慢のフカヒレの姿ステーキは、上湯(シャンタン)とモミジ(鶏の足)から取る白湯(パイタン)を合わせたスープで、じっくり煮込んだものをカリカリにソテー、肉団子には干し野菜を加え、柔らかさを出すなど、手間を惜しまずに調理し、食材の持ち味をいっそう引き立てることに注力する。

.フカヒレの姿ステーキ 蟹味噌あんかけ/フカヒレは戻してからスープで1時間半煮るのがこだわり。手間のかかったひと品。

「素材の味を楽しんでいただきたいので、化学調味料は使いません。量を食べても胃もたれがしないよう、白絞油(しらしめゆ)ではなく、コーン油を使うようにしています」と食べ手への配慮も完璧だ。
 趣向を凝らした料理の〆(しめ)に登場する麺は、この店を語るうえで外せないマストメニュー。実は『はしづめ』は、もともと品川で66年前に製麺所として開業。日本で初めて翡翠麺(ひすいめん)を開発したことでも知られている。麺類を中心に、カジュアルに中国料理を楽しむことができる広尾店で人気だったフレッシュトリュフそばやフカヒレそばも、今後はコースに組み込んでいく予定。
「自家製麺のバリエーションは100以上。季節によって、いろいろな麺料理を出していけたら」というから楽しみだ。
 豊かな食に触れることで、心を満たし、明日への活力を蓄える喜び。裏通りでひっそりと営む隠れ家で、大切なあの人をネオ中華の世界へ誘いたい。

青山 はしづめ(アオヤマ ハシヅメ)
TEL:03-3478-3520
住所:東京都港区南青山3-10-34 2F
営業時間:18:00~L.O.21:00
休み:日曜・祝日
席数:12席
個室:1室(2~4名用)
アクセス:地下鉄表参道駅A4出口より徒歩5分
※要予約


和の食材を巧みに駆使。今、格段にアツイ本格四川&新進中華の旬店

虞妃(ユイフェイ)
<東京/代々木上原>

 洗練された飲食店の多い住宅地・代々木上原に、また一つ誕生した瀟洒(しょうしゃ)なレストランがここ、中華ダイニング『虞妃』だ。
 間接照明の静かな灯りに、凛としたカウンターがシックな趣を醸し出すその佇まいは、バーと見間違えるほど。オープンキッチンの店内で、鍋を振る佐藤剛シェフは33歳と若いながらも都内の名店をはじめ、本場四川でも修業した実力派だ。
 ここではそれらの経験をベースに、四川料理の神髄は捉えつつ、新たなテイストにも挑戦。朝天干辛椒(チョウテンガンシンジャオ)や自家製発酵唐辛子など、数種の唐辛子に花椒(ホァジョー)、発酵調味料といった現地の調味料も使用。和の食材も取り入れ、日本人好みのマイルドな味わいで個性溢れる料理を提供する。

雪降和牛の魚香炒め¥2,800/自家製の発酵唐辛子を用いたひと品。山形の尾花沢牛のなかでも極上の雪降和牛を使用。日本の食材も徹底的に吟味。

 例えば、海南島(ハイナントウ)の黄辣醬(ホァンラージャン)を用いたミル貝の炒め物。黄辣醬のシャープな辛みをカボチャペーストの甘みが和らげミル貝に優しく絡む。また、四川料理でおなじみのよだれ鶏にもひと工夫。パサつきやすい鶏胸肉をフレンチのように低温スチームでしっとりと仕上げている。タレは10種余りのスパイスを使う自家製辣油に山椒油、ネギ油など、持ち味の違う香油をブレンド。四川特有の風味を損なうことなく辛さは控えめで、食感のソフトな鶏肉との相性も上々だ。
 シェフの経験とセンス光る逸品の数々に心して挑みたい。

虞妃(ユイフェイ)
TEL:03-6407-0217
住所:東京都渋谷区上原1-17-14 LAビル1F
営業時間:11:30~L.O.14:00/17:00~L.O.22:00
休み:水曜
席数:カウンター14席、テーブル4席
アクセス:小田急線・地下鉄代々木上原駅南口より徒歩3分


ENGINE(エンジン)
<東京/神楽坂>

 店名は文字どおり、機動力のエンジン、類人猿から人への進化、そして縁を結ぶ人のトリプルミーニングが込められている。オーナーの松下和昌シェフは、西麻布に、かつてあったヌーベルシノワ『A-Jun』ほか、家庭料理『に萬』では和食も経験。赤坂の人気店『うずまき』で腕を磨き上げ、2015年2月、中華の激戦区・神楽坂に店を構えた。
 豊富なキャリアに基づく料理は、時季の食材を取り入れた季節感溢れる中華だ。築地で仕入れる魚介に滋味深い野菜など、その時季を代表する旬素材による期間限定の美味で心を?(つか)む。
 例えば、鮎なら三枚に下ろしてからワタのペーストを挟んで品のいい春巻きに。鰹なら香味野菜に日向夏、辣油や豆板?が調和するタレでタタキ風に。〆鯖は山椒のソースを添えて提供。トマトで甘みと酸味を加えた定番の黒酢の酢豚は安定感抜群。担々麺や炒飯を揃える〆物は、この時季、冷やし中華を推したい。水ナスやトマトなどは生のまま、ニガウリ、レンコン、鶏肉は茹でてから食べ応えのある具にして濃縮したゴマダレを纏(まと)わせる。歯応えのいい平打ち麺と最後の一滴まで飲み干したくなるスープと合わせて、垂涎の麺料理をさらりと完成してみせる。
 若手料理人のなかでも引きだしの多さは群を抜く。そう唸らずにはいられない1軒だ。

鮎の春巻き¥900/骨まで揚げて丸々1匹使用。赤酢で味わう。
ENGINE(エンジン)
TEL:03-6265-0336
住所:東京都新宿区神楽坂5-43-2 roji神楽坂1F
営業時間:11:30~L.O.14:00/18:00~L.O.22:00
休み:日曜・祝日
席数:カウンター6席、テーブル12席
アクセス:地下鉄牛込神楽坂駅A3出口より徒歩5分


自然派ワインの妙とシェフの技に酔うカウンター中華!

臨場感あるオープンキッチンを採用したシェフズカウンター/21時以降はアラカルトにも応じる。

私厨房 勇(シチュウボウ ユン)
<東京/白金高輪>

 有名シェフがプライベート空間で料理を振る舞う、香港の“私厨房(シィフォンチョイ)”がイメージだ。店内はカウンターわずか10席。極めて贅沢なつくりのこちらは、千葉県柏『文菜華』で修業後、松戸で『中国麺飯 勇』を開き、2014年移転してきた原勇太シェフの店だ。

三元豚スペアリブの豆鼓蒸し/塊で蒸したメインディッシュ。ワインとも好相性。料理はすべて¥6,000のコースの一例。

 メニューは8品構成のおまかせコースが主体。味わいや温度帯の違う小料理を盛り合わせた前菜を皮切りに、美味の連鎖がスタートする。三元豚のスペアリブは下味をつけてから蒸し上げるため、ボリューム感満点でもしつこさは皆無だ。鮑(あわび)のリゾット炒飯は、先に炒飯を炒めて油で米をコーティング。鮑の肝のスープで煮込み、アルデンテの仕上げに。この本流とひねりの絶妙なバランス感こそ、原シェフの真骨頂といえる。
 ソムリエ厳選のフランス・ジュラ地方の黄色ワイン、ヴァン・ジョーヌとのマリアージュはこれ以上ない組み合わせ。紹興酒とのマッチングを凌ぐ、といってもいい。通うほどに魅力を増す、贔屓(ひいき)にしたい店だ。

私厨房 勇(シチュウボウ ユン)
TEL:03-5422-9773
住所:東京都港区白金6-5-5 モリハウス1F
営業時間:18:00~L.O.23:00 ※21:00以降はアラカルト対応可
休み:月曜
席数:カウンター10席
アクセス:地下鉄白金高輪駅より徒歩13分

Text=小寺慶子、森脇慶子、粂 真美子 Photograph=上田佳代子、冨澤 元

*本記事の内容は15年6月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)