東京脱出計画ーESCAPEー絶好の解放区へ

日々の仕事に熱狂するビジネス戦士たちにもたまには、ひと時の休息も必要だ。しかし、慌ただしく大型の休みは難しそう……。そんな時は、少しだけ仕事を忘れて東京からちょっとエスケープ! 森、山、海、渓谷。目先を都心から外に向け、普段、気を張った自分を解放できる快適な場所で安息のひと時を味わう至福。アクセルを踏み、高速を駆け抜けていく麗しのエスケープレストランへご案内します。

『ブレストンコート ユカワタン』

 軽井沢。そこは明治時代、いち早く海外ゲストに向けて開発された国内屈指のリゾートだ。
 高原を吹き抜ける風は夏でも心地よく、周辺で育つ山の幸や高原野菜は力強い味わい。もたらされた海外の文化と、心地よい気候が避暑地・軽井沢を育み、この地で上手く融(と)け合ってきた。だから今なお、この地は休息を求める別荘族やセレブリティが数多く訪れる。日本であって、日本らしからぬこの土地ならではの休息を求めて。
 そして、バカンスで訪れたゲストを十分に満足させる美食もまたこの地が支持されるゆえん。あちこちに軽井沢の豊かさを象徴する美食店が隠れている。
 例えば、ホテルブレストンコートのメインダイニング『ユカワタン』。料理のオリンピックとも称されるボキューズ・ドールで2013年に日本人初の3位に輝くなど、数々の栄光を手に入れた浜田統之(のりゆき)シェフが腕を揮(ふる)う、フランス料理店だ。

「山に教えられることだらけ」と浜田シェフ。山から独創的なアイデアを導き出す。

フランス料理、そう書いてはみたのだが、実際にはここでの料理はジャンルにとらわれない。周囲の山に分け入り、採取する野草や木の実、花にキノコなどを、信州で丹精込めてつくられた野菜や肉、魚と合わせて料理を構築していく。いわば軽井沢でしか生み出せない信州の恵みを使った山のフルコースが味わえるのだ。海のない県だから川魚しか使用しない、そんなこだわりは水のジビエとも称され、清流に育まれる素材とともに、この地の豊かさを教えてくれる。
 さらに、夕食だけではない。同じくホテルブレストンコート内にある『ノーワンズレシピ』は朝食で訪れたいレストラン。蕎麦とリンゴの生産が盛んな信州の特徴を生かす朝食のメインは、なんとブルターニュスタイルのガレット。香り高い焼きたてのガレットに微発泡のシードルを合わせて楽しめるのだ。

1.黄金の鯉。佐久鯉のタルトにシナノユキマスの卵をのせて。料理はすべて¥18,000のコースより。2.6つの石。小さなコースに見立てたアミューズブーシュ。3.鮎と梅。鮎の中にはブーダンノワールが。4.春菊の深緑。春菊のスープの下にコンソメのフランを。

 どちらの店も軽井沢でしか味わえない味覚を個性的に楽しませてくれる。だから、人はちょっと休息したくなった時、また軽井沢が恋しくなるのだ。

左:正面の緑を望めるようにすべてのテーブルが外向きに設置。右上:緑に包まれる一軒家スタイル。右下:エントランスを抜けた先ではボキューズ・ドールのメダルなどが飾られる。

『ノーワンズレシピ』 

季節で内容を変更する名物のガレット。夏はトマトとルッコラがたっぷり添えられている。秋以降はキノコの予定。料理はすべて¥3,200の朝食より。
軽井沢らしい木をふんだんに使った店内。晴れていれば食後のデザートはテラス席でも可能。
左:高原野菜を漬けた自家製のピクルス。右:ガレット以外はビュッフェで提供。見た目も美しいタパスやデニッシュなどが充実。
星野リゾート ホテルブレストンコート
TEL:0267-46-6200(代)
住所:長野県軽井沢町星野
休み:無休
アクセス:JR軽井沢駅よりシャトルバス運行
料金:1泊朝食付き¥17,000~、IN15:00~/OUT12:00
ブレストンコート ユカワタン
営業時間:17:30~
席数:24席
※要予約
※ドレスコード:スマートカジュアル
ノーワンズレシピ
営業時間:7:00~L.O.9:30
席数:80席


軽井沢の路地裏は、隠れた名店の宝庫

『モデスト』

アクセスしなの鉄道中軽井沢駅より車で3分
「瑞々しい野菜を味わいたい!」
 そう思う人に薦めたい。軽井沢を訪れた際、醍醐味の一つがこの地で味わう採れたての高原野菜。中軽井沢の大通りから1本路地に入った『モデスト』もまさに野菜が美味しいイタリアン。シェフ自らが毎日、直売所を回って仕入れる野菜を、優しい味わいに仕上げてくれる。聞けば、堀内耕太シェフは、野菜を使ったイタリアンの名店『カノビアーノ』出身。イタリアでの経験や名店で培った技術を、軽井沢ならではの食材で、遺憾なく楽しませてくれるのだ。

上:フルーツトマトとモッツァレラチーズのソース 生ハムを添えたフェットチーネ¥2,000。中:穴子のソテー ポルチーニ茸の焼きリゾット添え¥1,600。下:清潔感に包まれる店内。


「野菜だけではないんですけど」
 シェフはそう笑うが、素材を大切に、軽井沢らしいイタリアンを表現すると、どの皿にも野菜が浮かび上がる。路地裏の小さな名店には、今日も美味しい野菜を求めて美食家が集う。

MODESTO
住所長野県北佐久郡軽井沢町長倉字平野3430-5
営業時間12:00~L.O.13:30/17:30~L.O.20:30
休み水曜※冬期不定休
席数20席
駐車場6台


アクセスJR軽井沢駅より車で10分石臼挽き蕎麦

 『石臼挽き蕎麦 東間』

 幹線道路の小さな看板を目印に、昼時ともなれば続々と車が集う蕎麦の名店がある。路地裏に佇む『東間』は、約70軒がひしめく蕎麦激戦区の軽井沢の中でも、ツウを唸(うな)らせる1軒だ。


 国内産のそばの実を毎日使う分だけ石臼で挽く。少し粗めの細打ちは、手繰(たぐ)るたび、新鮮な蕎麦の風味が感じられ、3年以上寝かせた本枯節を使うツユに抜群の相性を見せる。
 さらには蕎麦前も充実。豊富な地酒を揃えつつ高原野菜を使った浅漬やごぼうの唐揚げなど、左党が喜ぶ逸品の数々が並ぶ。
 聞けば主人は蕎麦店での修業のほか、割烹でも腕を磨いたそう。旨い蕎麦に、酒を呼ぶ肴の数々。天気がよければテラス席での酒宴もまた風情抜群。高原の風を感じながら、軽井沢の香り高い蕎麦を存分に楽しみたい。

左:もり蕎麦¥880。右上:ごぼうの唐揚げ¥1,030。右下:華美な装飾のない店内はシックで落ち着いた雰囲気。
ISHIUSUBIKISOBA TOMA
TEL:0267-44-6566
住所長野県北佐久郡軽井沢町大字発地1398-58
営業時間11:00~15:00/18:00~21:00
休み火曜※夏期無休
席数56席
個室1室
駐車場13台

『ル・ポワン・ドゥ・ヴュ』 

 かつては織田信長も遊んだという美しい水郷で知られる湖東、近江八幡市。心なごむ豊かな田園風景の中を抜け、湖岸高台の広大な敷地に建つメゾンから、琵琶湖のきらめきを目にした瞬間、日常は音もなく消える。

予約は湖の対岸・比良山系までを見渡す窓際の席を。昼夜ともにコース¥2,700~。要予約。


 遠方からも多くのフレンチラバーが通うこの名メゾン、今春若き杉本学氏がシェフに就任し、さらに料理に輝きが加わった。季節には鮎や川エビなど、琵琶湖ならではの素材を取り入れつつ、洗練を加えた料理は堂々、グランシェフのもの。また経営母体が近江で110余年の歴史を誇る精肉店「カネ吉山本」というだけあり、スペシャリテである近江牛のグリエも目覚ましい味わい深さ。初秋の琵琶湖の、絵画そのもののような風景とともに味わうその至福は、必ず長く深く記憶に焼きつく。

杉本学シェフ。フランス料理と滋賀の極上食材との融合も魅力の一つ。
1.養老豚のテリーヌ。澄み切った美しい余韻と力強いコクが見事に両立。料理はすべて¥8,500のコースより。2.ニベのポワレ、万願寺唐辛子のデクリネゾン。3.近江牛ロースのグリエ、焼きトウモロコシのソースで。
LE POINT DE VUE
TEL:0748-32-8515
住所滋賀県近江八幡市長命寺町182
営業時間11:30~L.O.14:00/17:00~L.O.20:00
休み火曜
席数60席
駐車場30台
アクセスJR近江八幡駅よりタクシーで15分

『琵琶湖ホテル(イタリアンダイニング ベルラーゴ/ハワイアンカフェ オルオル)』

 80年の歴史を誇る、琵琶湖・湖岸リゾートホテルの先駆にして老舗『琵琶湖ホテル』の大胆なリノベーションが話題である。なかでも白眉は、今年7月に完成した『イタリアンダイニング ベルラーゴ』だ。

リゾートの空気感を高めるディープロイヤルブルーの壁と高い天井。丸窓は客船の窓をイメージ。

 ディープロイヤルブルーの壁と、18mもの高さの天井の下のフロアは、格別の非日常感。目の前の琵琶湖に行き交う、優美な遊覧船の姿にも、心がなごむ。そして、メニューで圧巻なのが、徹底して吟味された滋賀県産極上素材の数々と、その見事な活用術。イタリア人シェフ、サルバトーレ・ジュゼッペ氏自ら、生産者を訪れ目利きした素材は、旨みに格別の凝縮感ある100日平飼い近江黒鶏、清新な滋味のビワマス、弾けるミネラルと生命感に圧倒される大津産の地野菜まで。鮮烈な素材力を、シェフの故郷シチリア流に仕上げた料理は、どの皿からも湖国の野太い自然の力を、しっかりと身体に取り入れたことを実感できる。

左:滋養豚のポルケッタ。¥3,800のコースの一例。右:大津マノーナファームホウレン草ペペロンチーノ¥1,180(税サ込み)。

 さらに食後には、もう一つの感動が待っている。それは、屋上に期間限定でオープンした『ハワイアンカフェ オルオル』での時間。屋上から見下ろす湖の眺めと、間近に迫る比叡山の姿を愛でつつ傾けるカクテルやシャンパーニュ。その至福の味わいは、爽やかに頬をなでる湖の風が、ひときわ心地よく高めてくれるに違いない。

左:ブルー・ジンバック¥800(税サ込み)ほかカクテルも充実。右:人気のビルドバーガー¥1,800。
琵琶湖ホテル
TEL:077-524-7111(代)
住所:滋賀県大津市浜町2-40
休み:無休
アクセス:JR大津駅より無料シャトルバスにて約5分
料金:1泊朝食付き・デラックスツイン¥26,136~、IN14:00~/OUT11:00
イタリアンダイニング ベルラーゴ
営業時間:11:30~L.O.21:30
席数:169席
※ドレスコード:スマートカジュアル
ハワイアンカフェ オルオル
営業時間:11:30~L.O.21:30※10月12日まで営業
休み:荒天時
席数:12席
個室:半個室2室

古我邸 

 大正から昭和初期にかけて西洋建築が花開いた鎌倉。山深くまで茂る木々を背景にしたこの洋館もそのうちの一つ。もともとは三菱財閥・荘(しょう)清次郎の別荘で、完成に15年もの歳月を費やした。築100余年の歴史的洋館は古きよき時代の残り香を漂わせ、瀟洒(しょうしゃ)なフレンチレストランとして今に親しまれている。


 コース中心のメニューは、三崎漁港で水揚げされる地場の鮮魚に、味も香りも濃い鎌倉野菜がふんだんに取り入れられている。味噌や柚子胡椒など和の要素の織り交ぜ方も秀逸で、例えば胡瓜のブランマンジェはクリーミーな舌触りのなかに青じその風味が凛と際立ち、印象深い。

1500坪もの敷地内に開かれた緑に囲まれたダイニング。
瀟洒な洋館を目の前にゆるやかな坂を上ると風格ある扉が。

 この地の豊かな自然と共鳴した美味を楽しみ、心を解放する最高のひと時。「やはり鎌倉はいい」。改めて実感するはずだ。

1.胡瓜のブランマンジェと穴子の白焼き 和だしのジュレ 大葉のソルベオクラの星を添えて。料理はすべて¥7,000のコースより。2.本日のフロマージュ(+¥600)。3.オーストラリア産シャロレー種仔牛フィレ肉のロティー松の実風味 オレンジの香るマデラソース(+¥1,200)。
KOGATEI
TEL:0467-22-2011
住所神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-7-23
営業時間11:00~L.O.14:00/17:00~L.O.20:00
休み火曜
席数58席
アクセスJRほか鎌倉駅西口より徒歩6分

『沼津倶楽部 割烹 映』 

 “東海道随一”ともいわれる景勝地、千本松原に隣接する『沼津倶楽部』。緑したたる3000坪の敷地内は、1907年にミツワ石鹸の2代目当主が近代建築の粋を集めて建てた数寄屋造りの和館と、『二期倶楽部』の設計で知られる故・渡辺明氏による新館を擁し、ゲストを魅了する。

昨年、国の有形文化財に登録されたという長屋門。


 美しき庭園とモダンな建築とともに人々の感性を刺激するのが『割烹 映』の旬味。銀座で人気を集める『割烹 智映』の北山智映さんが監修を務める日本料理のコースは、食材への慈しみが溢(あふ)れる美味が揃う。
 沼津や、智映さんが足しげく通う明石の漁港から揚がる新鮮な魚介を中心に、地元で採れた野菜などを盛り込み、素材の持つ生命力や四季の移ろいを食べ手に伝える。心地よい“気”が宿る空間で美味を堪能したい。

1.八寸。旬の野菜、肴(さかな)にひと手間加えた品々。料理はすべて¥15,000~のコースの一例。2.焼物。豚バラ肉角煮のグリル 季節野菜添え。3.椀物。蟹真丈 車海老 青唐 菊花餡掛。
NUMAZU CLUB KAPPO EI
TEL:055-954-6611
住所静岡県沼津市千本郷林1907
営業時間11:30~L.O.14:00/18:00~L.O.21:00
休み水曜
席数32席
個室1室(6名用)
駐車場15台
アクセスJR三島駅より車で20分
※3日前までに要予約。宿泊利用についてはHPを参照。
http://www.numazu-club.com

Text=大西健俊、粂 真美子、寺下光彦、小寺慶子 Photograph=鈴木拓也、富澤 元、福森クニヒロ


*本記事の内容は15年8月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)