ワイン新興国のお薦めワイン5本! ワインテイスター大越基裕さんが解説

ワインの世界は日進月歩。今なお、新しいワインが生まれ続けている! 世界のワイン事情に精通する日本初のワインテイスター・大越基裕さんに、要チェックなワイン新興国とお薦めのワインを聞いた。


メジャー生産国だけじゃない! 知っておきたい各国ワイン事情

「レストランのクオリティやバリエーションの豊富さは世界でもトップクラスの日本。でもワインについては、まだまだフランス志向に偏っている。もっと他の国に目を向けてもいいと思います」

そう話すのは名ソムリエにしてワインテイスター、世界の生産者を訪れている大越基裕さん。

例えば、世界で注目されるギリシャのサントリーニ島の地品種〝アシルティコ〞のワイン。

「日本ではまだマイナーですが、NYやロンドンのトップレストランでは、置いていないところのほうが珍しいほど」

そんな世界のワイン事情を知る大越さんが、今一番注目しているのが、南アフリカだ。

「凝縮感を持ちながら重くなく、ナチュラルでも飲みやすいクリーンな味わいが多いのが南アフリカのワイン。その味わいは現在の世界の潮流でもあるんです」

加えて、ワイン産業の取り組みにも最先端の考え方が反映されている。

「自然環境を壊さず、生物多様性を大事にする国の意思がワイン産業にも浸透しており、畑も必要な場所だけに点在。歴史的に暗黒時代を持つ国だけに、ワイン産業では珍しくフェアトレードに対しての認識も高いです」

ナチュラルワインという視点では、オーストラリアやアメリカでも新たな勢力が芽吹き始めているという。

「特にオーストラリアは、甘くて重いスタイルからナチュラルでジューシーなスタイルを目指す生産者が増加。伝統国のような厳しいルールがないので、自由な発想で自分たちがつくりたい味を追求していて、それがいい結果を生んでいると思います」

ギリシャやジョージアのような歴史的に古い産地も改めてその実力を認識。

「"地品種"が多く、ジョージアは250種を超えるほど。他の産地ではつくれないオリジナリティがあります。話題のオレンジワインも現地では昔から生産。最古の産地でありながら、未知の国だったジョージア。知れば知るほど感じるその実力は、確実に今後の注目国に」

また、レストラン界の変化もワインに大きな影響を与えている。

「料理の潮流が素材至上主義になり、軽めの料理が主流に。それに合わせて、ワインも軽い味わいが人気になってきています。産地も果実味が強く凝縮したブドウを産出する暑い地域よりも、カナダやタスマニアなど涼しい地域が注目されています」

メジャー生産国のワインばかりではなく、新たな味の体験をして欲しい。


大越さんが選ぶ、最注目ワイン新興国とオススメの1本

■オーストラリア:ハーカム・エステート アジザ・セミヨン 2017
「クラシカルなワインが多いなか、軽やかでジューシーなナチュラルスタイルが、新しいワインとして台頭し始めています」。厳しい法律がないため栽培品種にも縛られず、赤ワインに白ブドウを混ぜるなど、自由な発想でさまざまな可能性を追求。「冷涼産地のタスマニアも注目。行くたびに常に新しい発見がある国です」

「ハーカム・エステート アジザ・セミヨン 2017」¥4,400(ワインダイヤモンズ TEL:03-6804-2800)


■カナダ:トーズ・ワイナリー ランドリー・ヴィンヤード カベルネ・フラン2013
アイスワインに代表される甘口ワインで有名だが、最近の注目はシャルドネやピノ・ノワール、カベルネ・フランなどの辛口の白と赤。「軽い料理が多くなった世界のレストラン傾向に合わせ、消費者の志向も軽いワインに。そんななか見直されてきているのが、冷涼な地域でつくられる、線が細くてフレッシュな味わいのカナダワイン」

「トーズ・ワイナリー ランドリー・ヴィンヤード カベルネ・フラン2013」¥5,000(ヘブンリーバインズ TEL:03-5773-5033)


■中国:アオ ユン
アジアの注目株筆頭が中国のワイン。自国消費も多く、他国では入手困難な状況だが、その可能性にかけ雲南省にワイナリーを設けたのが、MHD モエ ヘネシー ディアジオ。「ヒマラヤ山脈の麓、標高約2500mでつくられる赤ワイン "アオ ユン" の質の高さには、多くの人が驚愕。次世代産地として耳目を集めています」

「アオ ユン」¥34,000(MHD モエ ヘネシーディアジオ TEL:03-5217-9731)


■ジョージア:シャラウリ・ワイン・セラーズ ムツヴァネ 2015
その起源は8000年前ともいわれる世界最古のワイン生産国。"クヴェヴリ" と呼ばれる素焼きの伫で醸造する製法は、ユネスコ無形文化遺産にも登録。「地品種が非常に豊富。また、近年話題のオレンジワインも、現地では "アンバーワイン" という名で昔から製造。実力ある生産者とそのワインは、今後さらに注目されると思います」

「シャラウリ・ワイン・セラーズ ムツヴァネ 2015」¥3,600(モトックスお客様相談室 TEL:0120-344-101)


■南アフリカ:ラール・ワインズ サンソ―
「世界で最も美しいワイン畑を持つ産地」。自然環境の多様性を重視し、人の手をできるだけ介入させない自然なつくり方を追求するワイナリーが出てきている。長年国営企業だったが、1990年代に民主化し新たなワイナリーが誕生。「設立10年程度のワイナリーが多いのですが、カルトワインといわれるようなワインも出始めています」

「ラール・ワインズ サンソー」¥4,300(ラフィネ TEL:03-5779-0127)


大越さんが選ぶ、その他の注目ワイン新興国

■アメリカ
ニューヨークのリースリングやカベルネ・フランに注目が集まる。さらに大越氏が熱い眼差しを向けるのは「"ニューカリフォルニア"と呼ばれる、ライトでクリーンな自然派ワイン。カリフォルニアの魅力を、さらに広げています」

■チリ
現在、日本で輸入量No.1の国。「これまでの海側の産地のほか、近年は比較的涼しい東側の標高の高い場所にもワイン産地が拡大。品種はシラーのほか、南部でつくられる古樹のカリニャンも注目したい」

■日本
小規模ワイナリーが増加しつつある日本。「北海道や長野、新潟ではメルローやアルバリーニョなどの国際品種の成功例が増えており、ワインのバリエーションも豊富に。ここ十数年で、質自体がかなり上がっています」

■ギリシャ
「サントリーニ島のアシルティコからつくられる塩気のあるワインや、ナウサのクシノマヴロのようなしっかりした骨格があり熟成にも向くワインなど、地品種が豊富。古い産地だからこその独自性が面白いと思います」


Motohiro Okoshi
日本初のワインテイスター。2001年より、「銀座レカン」のソムリエを務める。渡仏を経て、’13年に独立。レストランやインポーターJAL等へのコンサルタントを行う。外苑前のモダンベトナム料理店「An Di」のオーナー。


Text=牛丸由紀子 Illustration=竹田匡志