多彩な美味で魅了する最旬のホテルレストラン

ホテルのレストランに求めるのは、やはり贅を尽くした味わいや上質なおもてなし空間。加えて、新シェフ就任でさらに進化を遂げるレストランや、限定企画メニューの面白さにも注目したい。ホテルを使い慣れた人にも耳寄りな、最旬の美食をここに。

海外ゲストをもてなすならバーの奥に潜む鮨の特等席へ
<虎ノ門>

簾(すだれ)のような文様(もんよう)の入ったガラスが隠れ家の風情を醸し出す。

 エントランスを抜けた先に、開放的な雰囲気のなか、バーカウンターやソファ席など、随所に和モダンな意匠がちりばめられた空間が広がり、心がゆっくり解(ほぐ)れていく。この空気感こそ、ホテルが提唱する上質な日常そのもの。52階にあって東京湾やお台場などの夜景が魅力的な「ルーフトップバー」の奥には、忘れてならない隠れ家がある。それが「ザ・スシ」だ。 

握り/愛知県産で大ぶりのトリガイ、黒ムツやスミイカなど。料理はおまかせ¥15,000やお好みの一例。

 バー内にある暖簾(のれん)をくぐった先に密やかに設えられた、それはカウンターわずか8席という特等席。茶房を思わせる落ち着いた趣きもまた心地よく、旬の食材を使った王道の日本料理と、正統派の江戸前握りが楽しめる。料理長の増田美里氏は言う。

「外国の方が半分ぐらいでしょうか。皆さん、喜ばれます」

 伝統が集約された隠れ家だからこそ、こちらも誇らしくなる。海外ゲストを日本という我が家に招く喜びが味わえるのだ。

握りはバーで楽しむことも可能。「ルーフトップバー」が誇る名バーテンダーが鮨に合わせて作るオリジナルカクテルも白眉。
アンダーズ東京 ザ・スシ (The SUSHI)
TEL:03-6830-7739 
住所:東東京都港区虎ノ門1-23-4 52F
アクセス:地下鉄虎ノ門駅1番出口より徒歩5分
営業時間:17:00~22:00
休み:無休
URL:http://www.andaztokyodining.com


陳シェフの復活で進化を遂げた名中華の現在地
<恵比寿>

復活を遂げ、食材探しに余念のない陳啓明シェフ。

”ウェスティンホテルに「龍天門」あり"の名声を築き上げた広東料理の巨匠、陳啓明(チンケイメイ)氏。3年前、定年を機に惜しまれつつも一度は去った陳氏が復活! 去年の10月から厨房に立ち、陣頭指揮をとっている。

乳鳩のサクサク焼き。生後20日目の鳩で1羽¥4,500。中央は鳩の卵¥4,500。1週間前までに要予約。カスタマイズできる陳シェフスペシャルコースは¥15,000~(応相談)。

「復帰してまず最初に手をつけたのは、食材の見直し。広東料理は、食材の持ち味を生かす料理ですからね」の言葉どおり、食材は自ら産地に赴き、その目と舌で納得したものばかりを揃える。野菜は千葉県八千代の契約農家が作る中国野菜、魚介は三浦三崎港から直送され、八ヶ岳中村農場からは龍皇赤鶏(りゅうおうあかどり)が届くといった具合。なかには生後20日目の乳鳩(にゅうきゅう)のような、本場の香港でしか食べられないようなレアな食材も。

 メニューに記されているのは食材名のみ。それも、ゲストと調理法を相談しつつカスタマイズなコースを作りたいとの想いが息づいているからだ。

広々と落ち着いた設えの空間。
ウェスティンホテル東京
広東料理 龍天門 (Cantonese Ryutenmon)
TEL:03-5423-7787 
住所:東京都目黒区三田1-4-1 2F
アクセス:JR恵比寿駅東口より徒歩7分
営業時間:11:30~15:00(土曜・日曜・祝日~16:30)/17:30~21:30
休み:無休
URL:http://www.westin-tokyo.co.jp/


4卓だけの完全予約制。極上フレンチに五感も悦ぶ
<箱根>

「1日4組ほど」でシェフの世界観に浸ることが可能。

 週末を極上の一日にしたい。そんな時は、箱根の隠れ家フレンチ「べルス」へ。

 メニューはなく、食材名を列記したカードが登場する趣向にまず心が躍る。緑豊かなリゾートホテルの最奥にある一室で、麗しき美味を堪能できる完全予約制のフレンチレストランだ。

蝦夷豚、クールジェット、ブータルグ。「海のニュアンス」を加えるべくカラスミを添えた。

 料理は食材名からは想像もつかないほどの美しさ。ある時はキュウリの清涼感、またある時は馥郁(ふくいく)たるブルーチーズ。苦みや酸味、甘みなど、多様な味わいが複雑に絡み合い、調和のとれた美味しさにまた感動する。

 金山康弘総料理長はパリにある「ラ・ビガラード」で食通を唸らせてきた料理人。味と香り、プレゼンテーションで自然を体現する彼の皿は繊細で、だからこそ、「この距離が大切」というシェフズテーブルの構造にした。

「放牧18カ月で野生に近い」蝦夷(えぞ)豚も最高の火入れ加減。五感を刺激する贅沢な週末だ。

ひっそりとした佇まいの入口。
ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ
レストラン ベルス (Restaurant Berce)
TEL:0460-82-2000
住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320
アクセス:西湘バイパス箱根口ICより約30分
営業時間:18:30~L.O.20:00(3カ月前から4日前までの完全予約制)
休み:不定休
URL:http://www.hakone.regency.hyatt.jp


伝統と革新を融合した美しき皿で美食の大家・魯山人の世界観を表現
<日本橋>

上から桜鯛のポワレ モリーユ茸 ヴァンジョーヌ風味 グリーンアスパラガス、フォアグラとトリュフのパイ包み焼き/ソースペリグー、キャビアの一皿 じゃが芋のクレープ ヴォナ風 ウォッカと生姜風味のフロマージュブラン。料理はすべて「魯山人の食卓」ディナーコース¥25,000より。料理に合うお酒のマリアージュ¥8,000~も。

 著書のなかで「我々は食を食うことによって、美を食うのである」と高らかに宣言した陶芸家・北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。生涯をかけて食と美を追求した彼の世界観が体験できる期間限定メニューが「魯山人の食卓」だ。

 魯山人に縁のある現代陶芸家の作品と、古典的フレンチの手法を貫きつつも、同時代性を表現する料理長ニコラ・ブジェマ氏の料理が拮抗(きっこう)する各皿は見事。

旬料理長のニコラ・ブジェマ氏。

 例えば、キャビアというフレンチ王道の前菜には九谷の染付を。手がけた3代目の須田青華(すだせいか)氏は初代が魯山人との交流でも知られた、伝統ある窯元である。そのほか、鮮やかな朱色の丸皿にはフォアグラのパイ包み焼きにペリグーソースの取り合わせなど、いずれも見目(みめ)麗しい。

 箸で食すことを基本とする特別コースのため、料理はすべてひと口サイズの気遣いも嬉しく、眼福(がんぷく)に与(あずか)かりつつ、じっくりと美味を味わいたい。

モダンな雰囲気の店内。
マンダリン オリエンタル 東京
フレンチファインダイング シグネチャー
(French Fine Dining Signature)
TEL:0120-806-823(フリーダイヤル)
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 37F
アクセス:地下鉄三越前駅A7・A8出口直結
営業時間:11:30~14:30/18:00~22:00
休み:無休
URL:http://www.mandarinoriental.co.jp/tokyo


ルノワールの名画の色彩を感じるアートな美食体験を
<六本木>
「ルノワールメニュー」(~8/22)

ルノワールメニューは全4皿で¥9,500。『春の風景』をイメージした、季節野菜ハーブ コンディメンツ。

 フランスを代表する印象派の巨匠ピエール・オーギュスト=ルノワール。その個展が今、国立新美術館で開催中だが、それにちなみ、ザ・リッツ・カールトン東京ではスペシャルコースを企画。期間中は45階のモダンビストロ「タワーズ」で味わえるのをご存知だろうか。

開放的で落ちつきのある空間。

 例えば、アスパラやスナップエンドウといった旬の野菜やハーブをお花畑の如く色鮮やかに盛りつけた前菜は、『春の風景』と題する一枚の絵からイメージしたひと皿。メインの鴨料理は、1873年に描かれた鴨が泳ぐ風景画『マール オ カナール』に想いを寄せて作られるなど、ルノワールを愛するフランクリー・ラルーム副料理長による感性豊かな料理が登場する。

 ルノワールの絵画を連想させる色彩美と繊細な味わいで、アートな美食を満喫したい。

ダックコンソメをかけていただくワイルドアニス風味の鴨のロースト。料理の提供はディナータイムのみ。
ザ・リッツ・カールトン東京
タワーズ (Towers)
TEL:03-6434-8711
住所:東京都港区赤坂9-7-1 45F
アクセス:地下鉄六本木駅8番出口直結
営業時間:6:30~10:30(土曜・日曜・祝日~10:00)/11:30~14:30
(土曜・日曜・祝日ブランチ11:00~14:30)/17:30~22:00
休み:無休
URL:http://www.ritz-carlton.jp


希少な石垣牛を使用。極みの1万円カツレツカレー
<六本木>
期間限定メニュー「石垣牛カツレツカレー」(~8/31)

石垣牛カツレツカレー¥10,000/ランチタイムのみの限定メニュー。サラダ、スープ、デザートつき。

 産地を厳選し、旬にこだわる食材をマルシェのように並べたディスプレーが印象的な鉄板焼レストラン。同店が夏限定で供するランチは、カツレツカレー。希少な石垣牛フィレを厚切りのまま豪快に使い、お値段、なんと1万円也。しかし、本多良信料理長は笑顔で言う。

「100gはありますから逆に、リーズナブルかもしれません」

 熟練の手捌きにより、サクッと焼き上げられた石垣牛は衣をまとっている分、ジューシーで旨みも濃厚な印象。カレーは香味野菜や種々のスパイスのほか、ココアパウダーでコクと風味を追加したオリジナル。あとから刺激的な辛さが追いかけてくる。フライドオニオンが醸す食感のコントラストも痛快で、何より、石垣牛の脂の甘さとスパイシーなカレーの相性は抜群。贅沢なランチに、パワーも漲(みなぎ)る。

鉄板焼テーブルなどモダンな趣き。
グランド ハイアット 東京
けやき坂(Keyakizaka)
TEL:03-4333-8782
住所:東京都港区六本木6-10-3 4F
アクセス:地下鉄六本木駅1C出口より徒歩約3分
営業時間:11:30~14:30(土曜・日曜・祝日~15:00)/18:00~21:30
休み無休
URL:http://tokyo.grand.hyatt.com/ja/hotel/dining.html

Photograph=大谷次郎、菅野祐二、鈴木拓也、中庭愉生 Text=田代いたる、森脇慶子

※料金はすべて消費税・サービス料別。*本記事の内容は16年5月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)