今秋オープンの「パーク ハイアット 京都」がコラボする日本酒、ジンとは?

かつてはひたむきに酒に向き合う、職人気質な仕事と思われていた酒造り。しかし今は、経営やマーケティングセンスを武器に、イノベーションを起こす者が業界を牽引している。酒ビジネスの新境地に挑む猛者たちの熱き想いを追った。


京都を代表するふたつの気鋭酒造メーカーとのコラボ

10月30日、パークハイアット京都がいよいよ開業する。世界的ホテルブランドに地元の期待も高まるなか、お酒を通して、その存在意義を模索しているのがビバレッジ部門を率いるソムリエ・田中智浩氏だ。

「私たちはハイアットの最上級ブランドとしてのホスピタリティに加え、その土地への感謝や敬意を踏まえたサービスを提供したいと考えています。京都の文化や伝統工芸は、長い歴史のなかで磨かれ受け継がれたもの。それらをただお薦めするのではなく、背景にあるつくり手の想いや物語まで伝え、お客様に奥深く感じていただきたいのです」

そんな想いを実現すべく、目下進行中なのが、京都を代表するふたつの気鋭酒造メーカーとのコラボレーションだという。 

酒蔵内で談義する松本酒造杜氏の松本日出彦氏(左)と、パーク ハイアット 京都のビバレッジマネージャー田中智浩氏(右)。

松本酒造は伏見にある老舗の酒蔵。看板商品である「澤屋まつもと守破離」を手がける杜氏の松本日出彦氏は、日本酒業界に一石を投じるつくり手として注目を集めている。「日出彦さんの酒造りは、米の味わいをお酒で表現しようというもの。理想の味のために田んぼの土の改良から関わるなど、米を主体にした前代未聞の取り組みをされています」(田中氏)

もう一方のパートナーは、「季の美」で知られる京都蒸溜所。日本におけるクラフトジンブームの火つけ役で、柚子、玉露など京都産の和の素材9種を含むボタニカルを原料にしたジンは、世界的評価を得ている。田中氏は、味や品質はもちろん、京都に焦点をあて、本質を求めて突き進む姿勢に共感したという。

角田紀子クロール氏(右)、「季の美 青龍」のラベルデザインを手がける息子のダグラス氏(左)と熱心に打ち合わせ。

この3者による取り組みは、単なるローカルの共演ではない。「僕がやっていることは、一般的な日本酒造りとは違うからこそ、これで合っているのか? と常に自問自答しているんです。それに、世界トップのホテルブランドが共感してくれた。自分の挑戦がいい方向に向かっていると、素直に思えているところです」と松本氏。京都蒸溜所共同創業者である角田紀子クロール氏も、これはイノベーション精神が紡いだ縁の賜物だと話す。

「創業何百年という老舗をはじめ、地元の方々が受け入れてくださったからこそ今の私たちがいます。革新的でありながら絶対に品質を落とさない姿勢が、ご縁につながっていると感じます」

外の新しいものを受容しながら、優れた美意識を生みだしてきた京都。パーク ハイアット京都はつくり手の想いのみならず、そんな京都の精神をも伝える媒介者となるかもしれない。

松本酒造
1791年に東山で創業後、名水を求め伏見の現在地へ。代表ブランド「澤屋まつもと」は兵庫県東条の山田錦を使用。ナンバリングした田んぼ別に仕込みを変えた日本酒を造るなど、米の個性に着目した酒造りを目指す。
京都蒸溜所
金融業界出身のデービッド・クロール氏と角田紀子クロール夫妻が、2015年に日本初のジン専門蒸溜所として設立。米のスピリッツと伏見の水をベースに、檜や山椒など和のボタニカルを使ったジンは世界的ブームに。


Text=山本真由美 Photograph=福森クニヒロ