「アジアのベストレストラン50」にみる、日本勢の活躍とアジアガストロノミーの今

2019年の「アジアベストレストラン50」で、過去最高12店のランクインという結果を収めた日本勢。ベスト10以内に4店舗という圧倒的な力を見せつつも、念願のアジアベスト1の奪還は今回もお預けとなった。一方、相変わらずの強さを見せるタイ、少数精鋭で挑むシンガポール、安定の香港。そして、マレーシア・クアラルンプールからもニューカマーを迎えるなど、アジアのガストロノミーの勢いはさらなる盛り上がりを見せている。


過去最高の日本勢の健闘とアジア全域のガストロノミーの盛り上がり

回を重ねるごとに華やかさを増す「アジアのベストレストラン50」が、去る3月 26日、昨年に続きマカオ「ウィンパレス」で行われた。今回の最大の焦点は、4年連続1位の座を守るタイ「ガガン」の牙城を、昨年の2位「傳」、3位「フロリレージュ」を崩せるか、ということだった。しかしながら、大方の予想を覆し、1位の座にはシンガポールのフレンチレストラン「オデット(Odette)」に。

残念ながら、日本勢の首位奪還(7年前の1回目はNARISAWA)は来年以降への持ち越しとなったが、3位「傳」、5位「フロリレージュ」、8位に「NARISAWA」、9位が「日本料理 龍吟」と、最終的にはトップ10に4店がランクインし、日本のダイニングシーンの圧倒的な力を示す結果となった。

そのほかのトップ10は、4位がバンコク「ズーリン」、6位上海「ウルトラバイオレット」。7位台北「ムメ」と10位シンガポール「バーンズエンド」の2軒は、新規のトップ10入り。なかでもムメは28位からのジャンプアップと、台湾の勢いのよさを感じさせる。

続いて14位に大阪のフレンチレストラン「ラシーム」、18位にブルガリホテルアンドリゾーツの「イル リストランテ ルカ・ファンティン」が入り、さらに、23位「茶禅華」、24位「ラ メゾン ドゥ ラ ナチュール ゴウ」、25位「鮨さいとう」、26位「レフェルヴェソンス」と続く。トップ30に、日本各地の実力派レストランがずらりと顔を揃えたことは、日本のダイニングシーンの魅力がアジアにあまねく伝わっているといえるだろう。

見事1位に輝いたのは、昨年の5位からジャンプアップした、シンガポール「オデット」 ジュリアンシェフ(中央)。

「レフェルヴェソンス」の生江史伸氏は、前日のシェフズトークの登壇者にも選ばれており、環境問題に関して料理人が発信できること、料理人の役割などを流暢な英語で語った。生江氏は2018年のアジアのサステナブル・レストラン賞も受賞している。アジアのリーダーたるべき日本は、“レストランと環境問題”というこの分野でこそ、アジアを牽引していかなければならないと強く思わせられる。

初の日本の中国料理の高評価と、海外で活躍する日本人シェフ

もうひとつの嬉しいニュースは、ニューカマーが2軒加わったことだ。麻布の一軒家で洗練の中国料理を供する「茶禅華」が初登場で見事に23位にランクイン。日本の中国料理がアジアの中でこれだけの高評価を受けたことは快挙といえる。茶禅華より上位の中国料理店は、わずか1軒、香港の「チェアマン」のみ。香港、上海の料理人からも、茶禅華の素材を突き詰め、引き算で組み立てる中国料理は高く評価されているという。

また、プライベートダイニングとして食通の羨望を集める「SUGALABO」が47位に入賞したことは、ある意味、最もサプライズなニュースだったといえるかもしれない。紹介制のダイニングである「SUGALABO」が海外フーディの評を集めたということは実に興味深い。また、2年前にアジアベストパティシエを受賞した成田一世氏がパティシエとしてスタッフに加わっていたことも、驚きに拍車をかけた。この強力なタッグは今後のベスト50レストランに新風を吹き込んでくれるに違いない。

31位にランクインした台湾の「祥雲龍吟」の稗田良平シェフ。「日本料理龍吟」で修業したのち、2014年に「祥雲龍吟」のオープンと同時にシェフに。

海外組の日本人の受賞は、「祥雲龍吟」(台湾)、「TAVIE」(香港)のほかに、オーストラリアをベースに活躍する和久田哲也氏のシンガポール支店「WAKUGIN」(40位)の計3軒。国内の12軒に加え、合わせて15軒の日本勢がランクインしたことになる。アジア全体を見渡せば、日本12軒、香港・マカオ11軒、タイ8軒、シンガポール6軒と、この4か国がアジアのガストロノミーを牽引していることが一目瞭然だ。

中国メインランドが2軒と少ないのは、評議員が足を運ぶことによって得票が決まるシステムの中では、中国大陸への集客がまだまだ厳しいということの現われでもあるが、中国各地の名店がランクインするようになれば、アジアベストがますます楽しくなるだろう。新規参入国で注目すべきは、マレーシアの「DEWAKAN」(46位)。マレーシアの伝統を再構築したモダンマレーシア料理が高い評価を受けたことは、明るいニュースであり、アジアのガストロノミーのレベルが大きく上がっていることの証といえるだろう。

アジア全域のガストロノミーの勢いが増すなか、日本の食の力を「アジアのベストレストラン50」でより強固に見せていくためには、評議員にさらに日本へ足を運ばせることが必要になってくる。その絶好の機会である2020年のオリンピックイヤーへ向けて、海外でのポップアップレストランや海外シェフとのコラボレーションなど、より積極的な発信が必要になるのではないだろうか。


Text=小松宏子