多種多様の世界がある 京都肉を喰らう

 近江牛、神戸ビーフ、松阪牛とブランド牛産地から近い京都。料亭の工夫ある肉料理や肉尽くしの割烹、肉専門店など実に多彩。洗練された肉文化が息づいているのだ。

『にくの匠 三芳』

緩急ある肉尽くしのコース。溢(あふ)れる旨みに翻弄される

 牛肉を生や焼き、しゃぶしゃぶなどさまざまな料理にして、懐石料理のようなコース仕立てで少しずつ出す肉割烹。今、一番勢いのある店が、祇園町南側の『にくの匠 三芳』だ。
「料理に合う肉を追求するうち、肉それぞれの違いが見えるようになった」と店主の伊藤力さん。2005年の開店当時とは、扱う肉も料理法も随分変わったと話す。多彩な料理にして出す牛肉は、神戸、滋賀の信頼のおける牧場から取り寄せる。産地に出向いて、飼育環境や牛の状態を見ることはもちろん、常に生産者と連絡をとり、その時一番の肉を仕入れる。

1. 2日間ほど寝かしたタンを昆布で締めて。2. 近江牛のスモークには、フォアグラ、イチジク、香味野菜が添えられる。3. さっと出汁にくぐらせたサーロインのしゃぶしゃぶ。 4. 備長炭でじっくり火を入れたロースのステーキ(写真は3人前)。すべて¥20,000のコースから。


 おまかせのコースは月替わりで、肉の旨みたっぷりのスープに始まり、タンの昆布締めや絶妙な火入れの炙(あぶ)り、付け合わせとの相性も楽しみな焼き物やステーキなどおよそ10種。料理に合わせて銘柄や部位を選ぶ。

鮮やかな手さばきを見られるカウンターは8席。


「口に入れた時の肉の温度や香り、口どけなど、肉によって違う質と旨みを味わっていただきたい」と伊藤さん。松茸や秋トリュフといった季節の食材も使うが、あくまで主役は牛肉。
 巧みな流れとメリハリある料理に、肉好きも、新たな肉の味に開眼させられる。

Nikunotakumi Miyoshi
住所京都市東山区祇園南側570-15
TEL075-561-2508
営業時間18:00~23:00
休み日曜、月1回月曜
料金コース:ヒレ¥15,000、特製ヒレ(シャトーブリアン)¥18,000、近江牛ロース¥20,000、神戸牛ロース¥21,000


『下鴨茶寮』

料亭新時代を担う挑戦 和牛を京都の味わいで

 創業安政3年(1856)、京都を代表する老舗料亭は、幅広い年齢層に親しまれる新たな料亭づくりに挑戦している。「お客様の前で調理ができない分、料亭の料理は部屋に運び込まれた時の、驚きや感動が大切です」と話す若き料理長、明石尚宏さん。献立や盛りつけにも、和モダンな感覚を取り入れてきた。
 コースのメイン料理として出される肉料理も、ステーキやすき焼きなど日本人になじみのある料理だけでなく、創意あるものを出したいと言う。

くつくつと煮えた状態で、土鍋で出される「かけ牛鍋」。別の器に盛られたさっと味をつけた牛肉の上に、土鍋の野菜あんを、すくってかけながら味わう。¥13,000以上のコースから。

柔軟な発想で生まれたのは、出汁でさっと火を入れた牛肉に、色とりどりの野菜あんをかけて食べる「かけ牛鍋」。赤身と脂身のバランスがいい、長野牛のくらしたを選んだ。ほどよく脂ののった香りのいい牛肉に、かぼちゃ、トマト、大黒しめじなどの野菜がうまく寄り添う。とろりとしたあんが、牛肉を包み込み、最後まで温かく味わえるのもいい。
 他ジャンルのシェフとのコラボなど斬新な試みに挑む料亭らしい、発想力のある肉料理が誕生した。

Shimogamosaryo
住所京都市左京区下鴨宮河町62
TEL075-701-5185
営業時間11:00~L.O.14:00、17:00~L.O.20:00
休み木曜
料金昼¥5,000~、夜¥10,000~(サービス料別)


『祇園 ぷらむ』 

銘柄牛の神髄を目の前で感じる鉄板ステーキ

 祇園・花見小路から東へ。石畳の通りに面した『祇園 ぷらむ』。オーナーシェフ自らが吟味した旬の食材を使った料理は、鉄板焼や炭火焼をはじめ、韓国料理や和食などジャンルも多彩。なかでも、ほとんどの客が注文するのが村沢牛のステーキ。

肉の旨みを堪能できる、特撰村沢牛ヘレステーキ150g¥8,000(サービス料別)

畳の上でストレスなく育てられた村沢牛は、めったに手に入らない幻といわれる長野県産の牛。ステーキにはヒレかロースの中心部のみを使用。肉の旨みを堪能できる柔らかな歯ごたえのヒレ、口の中でとろけるロース。誰もがリピーターになるのが納得できる。

Gion Puramu
住所京都市東山区祇園町南側570-128
TEL075-551-3716
営業時間17:00~翌1:00
休み日曜(祝日は営業)
料金おまかせコース¥10,000~、特撰村沢牛のロースステーキ200g¥8,000


『ステーキハウス 新吾』

オーナーシェフの鵜飼進さんは、京都や神戸のホテルで腕を磨き、独立して36年。肉を焼く音や香り、ちょっと触れる感触で、最高の焼き加減がわかるという。

切って味わう楽しみがあるから、ステーキは切らずに塊のままで。

ヒレ肉のなかでも希少なシャトーブリアンのステーキは、表面はこんがり焼き色がつくが、中は美しいローズ色。近江や京都の黒毛和牛の雌だからこそのしっとりした肉質。噛み締めるほどに旨みがじんわり湧いてくる。

¥12,000からのコースには前菜、スープ、サラダ、ガーリックライスがつく。

客の多くは花街を贔屓(ひいき)にする旦那衆。肥えた舌を満足させる折り紙つきのステーキだ。

ふたりがやっとすれ違えるほどの路地。ひっそり感がいい。
Steak house Shingo
住所京都市東山区新門前通大和大路東入ル西之町232-6
TEL075-561-7106
営業時間17:00~L.O.21:00
休み日曜・祝日
料金ステーキコース¥12,000~、アラカルトあり(サービス料別)


『山地陽介』

フレンチ、イタリアンの新店は設(しつら)えにも注目

 今年6月、祇園にオープンした注目店。フランスの数々の名店で活躍した山地陽介シェフが、フランス料理をベースに上質の食材を駆使した料理で魅了する。

「フランスでのさまざまな出会いや経験を料理で表現できたら」と、山地シェフ。
お茶屋の建物をリノベーション。木の温かみのある和める雰囲気。

自慢の肉料理には伏見『京都 中勢以(なかせい)』の熟成肉を使用。牛のセリから熟成の工程まで立ち会うなど、肉の特性を熟知したシェフが最適の調理法で提供してくれる。

柔らかさ、旨みを楽しむシキンボのロースト。¥15,000のコースより。

店内は、木や緑を多用した内装、緊張をほぐす接客など、自然体で食事を楽しめる配慮がなされ、祇園のど真ん中という場所への不安も杞憂だ。


Yamaji Yosuke
住所京都市東山区祇園町南側570-151
TEL075-561-8001
営業時間12:00~15:00/18:00~23:00
休み月曜
料金昼¥5,000~、夜¥10,000~(サービス料別)※完全予約制


『チェンチ』

 2014年、岡崎にオープン。すでに多くの食通が通うイタリアン。生ハムやチーズも新鮮で力のある国産を使うなど、食材の持ち味を引き出す料理が特徴だ。料理は、昼夜ともに月替わりのコースで、写真の「熊本赤牛の炭火焼」は、秋のメイン料理のひとつ。強めに火を入れて、サシのある肉質から脂を落とし、旨みを凝縮させた。

肉々しい濃い味に、カンボジアの生胡椒ソースで辛みを添える。
仔羊のボロネーゼには、バターをのせよりコクのある味に。

他にも、イタリアの素朴な味わいを再現した「仔羊のボロネーゼパスタ」など、素材や手法を変え肉料理を楽しませてくれる。

cenci
住所京都市左京区聖護院円頓美町44-7
TEL075-708-5307
営業時間12:00~15:30(L.O.13:30)/18:00~23:00(L.O.20:00)
休み月曜、日曜不定休
料金昼¥5,000~、夜¥10,000~(サービス料別)※要予約


焼肉

熟成肉もブランド牛も! 京建築が風情を添える

 多彩な牛肉文化を持つ京都でも、ステーキに並び、好んで食されるのが焼肉だろう。料亭や町家を改装した店も多く、風情ある場で味わえるのも特徴だ。
 そんななか、幅広い層に支持され、頭角を現すのが『焼肉ダイニング 甲』。近年、定番化しているドライエイジングではなく、肉の魅力を最大限に生かす“枯らし熟成”を実践する。これは赤身の持つ旨みをトータルに底上げした熟成で、甲オリジナルの手法。
 京風情を満喫したいなら、豪商の邸宅を利用した『京やきにく 弘 八坂邸』。200坪の邸内には日本庭園があり、その庭を望む座敷や蔵を改装した静かな個室もある。和牛専門店が母体のこの店は、ブランド牛は使わず、オーナーの目利きで、鹿児島、長野、京都など、その時期一番の和牛を選びリーズナブルに提供するのが身上だ。
 抜群の焼き加減を望むなら『鴨川たかし』がいい。カウンター席に座ると、料理人がそれぞれの肉に最も合う焼き加減で焼いてくれる。肉はストレスなく牛を育てる日野の岡崎牧場から直接仕入れた、深い旨みと芳醇(ほうじゅん)な香りのある特選牛。サーロインステーキもあって、高級焼肉の醍醐味を堪能できる。


『二条城前 焼肉ダイニング 甲』

滋賀県近江八幡の亀井牧場の近江牛を1カ月かけて熟成させる。「おすすめ盛り合わせ」は、ハネシタ、ランプ、縦バラ、サーロイン、マキロース、イチボなど希少部位も贅沢に楽しめるひと皿。好みの味を伝えれば応じてくれる。

滋賀県近江八幡の亀井牧場の近江牛を1カ月かけて熟成させる。「おすすめ盛り合わせ」は、ハネシタ、ランプ、縦バラ、サーロイン、マキロース、イチボなど希少部位も贅沢に楽しめるひと皿。好みの味を伝えれば応じてくれる。
Yakiniku dining Kinoe
住所京都市中京区押小路通柳馬場東入ル等持寺町34-1
TEL075-211-2991
営業時間17:00~L.O.23:00
休み無休
料金おすすめ盛り合わせ¥5,000(2人前)、コース¥3,000~

『京やきにく 弘 八坂邸』

昭和初期の豪商の邸宅を改装した焼肉懐石店。柔らかく、じんわり旨みが広がる絶品のマンゴータンなど、4種を塩焼きで味わう「本日の厳選和牛厚切り盛り合わせ」(手前)と「和牛鹿の子寿司」。ともにおすすめの八坂懐石¥8,000より。

柔らかく、じんわり旨みが広がる絶品のマンゴータンなど、4種を塩焼きで味わう「本日の厳選和牛厚切り盛り合わせ」(手前)と「和牛鹿の子寿司」。ともにおすすめの八坂懐石¥8,000より。
Kyoyakiniku Hiro Yasakatei
住所京都市東山区東大路通八坂西入ル小松町11-9
TEL075-525-4129
営業時間17:00~L.O.23:00
休み無休
料金コース¥8,640~、和牛八坂蒸し¥650、ワイン¥2,800~

『鴨川たかし』

大自然でじっくり育てられた近江牛は、深みのある味わいと豊かな香り。上質の肉の美味しさを存分に楽しめるよう、ベストな状態に焼いてくれる。特上ロース、ヒウチ(モモ)、みすじなどを塩焼きで、わさびをつけ味わいたい。

大自然でじっくり育てられた近江牛は、深みのある味わいと豊かな香り。上質の肉の美味しさを存分に楽しめるよう、ベストな状態に焼いてくれる。特上ロース、ヒウチ(モモ)、みすじなどを塩焼きで、わさびをつけ味わいたい。
Kamogawatakashi
住所京都市中京区中町通竹屋町上ル末丸町265-1
TEL075-231-6336
営業時間11:00~14:00(L.O.13:30)/17:30~L.O.22:00
休み火曜(祝日は営業)
料金特上ロース¥3,240、ヒウチ¥1,950、みすじ¥2,380(すべて税込み)


Text=中井シノブ、廣瀬由仁子、山本真由美 Photograph=福森クニヒロ、高見尊裕、竹中稔彦、エディ大村、伊藤 信


*本記事の内容は15年10月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)