ワイン樽熟成の日本酒が大ヒット! 日本酒スタートアップWAKAZEのパリでの挑戦とは?

かつてはひたむきに酒に向き合う、職人気質な仕事と思われていた酒造り。しかし今は、経営やマーケティングセンスを武器に、イノベーションを起こす者が業界を牽引している。酒ビジネスの新境地に挑む猛者たちの熱き想いを追った。


洋食にもマッチする日本酒「オルビア」で大成功

甲州ワイン樽の香気を纏い、ボディと円熟、芳しさを併せ持つ、油分の多い洋食にもマッチする日本酒「ORBIA(オルビア)」。日本酒スタートアップのWAKAZEが2017年に開発したこのシリーズは大ヒットし、以後、ワイン樽熟成は日本酒のトレンドとなった。

「我々のようなスタートアップ企業の存在意義は、既存にないユニークな取り組みにある」と語るのは、CEOの稲川琢磨氏。経営戦略コンサルタントを経て起業したという稲川氏が次に仕かけるのは、フランスで醸造する"SAKE"だ。今年9月にパリ郊外に酒蔵をオープン予定で、フランスの米所カマルグ産のジャポニカ米と、現地の水を利用するという。

「パリはトレンドが生まれやすい場所であり、フランスはドリンクペアリングを大切にする国。パリに留学していて市場勘もあったため、パリになるべく近い場所でのビジネスを決めました」

WAKAZEの代名詞である、オーク樽熟成日本酒「ORBIA」。ボディの強さと食中に楽しめる香りを大切に、洋食との相性を追求した新タイプの日本酒。フランス産は別ブランドで展開予定。

パリで造り、売る! 日本酒侍の挑戦

パリで展開する主なラインナップは、フランス料理とのペアリングを意識し、フランス産ワイン樽で熟成させるSAKEと、柚子や山椒などのボタニカル香をつけたSAKEだ。

そこには、近年、フランスがクラフトビールブームに沸き、多様な味の地ビールが人気を得ている背景があるという。そして3つ目が、日本では免許の制限で手がけることが困難な正統派のSAKE。現地生産で輸送コストをカットし、低価格で提供することで裾野を広げるのが狙いだ。

「日本人が手がける史上初のフランス産のSAKE。そこには、ヨーロッパの巨大アルコール市場という大きなビジネスの可能性があると考えています。日本が誇る酒文化を、我々若い日本人が世界に啓蒙するという文化的意義もあります」

ヨーロッパにおける日本酒の新たな歴史が、今、WAKAZEによって紡がれようとしている。


Text=加納雪乃 Photograph=山下郁夫