投資家・経営コンサルタント 吉川慎二 プレミアムな男たちが行きついたワイン好きの果て Part.5

都内某所、オフィスビルの地下1階。部屋の扉を開けると、手製のラックに納められたワインの山が眼前に迫る。ここは投資家・経営コンサルタントである吉川慎二氏のワンセラーだ。そのワインの本数、実に3500本超。

名珍品5500本超!情熱をワインに注ぎ込んだ男

レストランのワインセラーでも酒屋の倉庫でもない。これらは個人の蒐集品であり、その銘柄もDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)にアンリ・ジャイエ、スクリーミング・イーグルにハーランなど、世界の一級品で彩られている。さらに、軽井沢にもセラーを持ち、その所蔵総数は5500本以上を誇る。

ふたつのセラーの主は吉川慎二氏。メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア本部長も務めた敏腕の元証券マン。そんな吉川氏がワインに興味を持ったのは、大学を卒業した年に経験したある出来事がきっかけだった。

「社会人になって初めてのクリスマスイブをフレンチレストランで過ごした時、そこのソムリエに言われるがままワインを選びました。その時に、将来、ビジネスディナーのホストを務めることだってあるかもしれない。これからはワインくらい自分で選べるようにならなければ……と思ったんです」

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ご多分に漏れず、ボルドーの5大シャトーからワインの世界に飛びこんだが、アメリカ人の同僚と会食中、「ワインはやはりブルゴーニュ。ブルゴーニュを知らなくてはワイン通と呼べない」と言われ、負けん気の強い吉川氏はブルゴーニュワインを学ぶため、ワインスクールの門を叩く。ところが入ったのは上級コースでちんぷんかんぷん。授業後の懇親会で自分がブルゴーニュに関してまったくの初心者だと告白した。すると、生徒のひとりから「ワインは飲んだもの勝ち。飲まずに類推するプロよりも、飲んだ素人の意見に価値がある」と言われ、ここから吉川氏のワイン人生が一変する。

2007年に日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。シンガポール駐在から帰国した’12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで見事、優勝を果たす。’14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任し、現在は2期目の常務理事。しかし、3期目を務める気はないそうだ。

「プロの世界を垣間見て、一介の愛好家では成しえない人脈も作れました。でもワインは趣味として楽しみたい……。生涯アマチュアを貫いた伝説的ゴルファー、ボビー・ジョーンズのようにとでもいいましょうか」

WINE PROFILE

ワインの師匠は?
――ワイン講師であり、同い年の親友でもある故小林史高氏

好きなワインの傾向は?
――造り手や産地・ビンテージの個性が感じられるワイン

ワイン消費量は?
――週5~6本くらい

“ワインバカ“なエピソード
――生涯飲み切れるかわからない量のワインを所蔵

TOKYO/2006年から使用する都内某所のワインセラー。「コレクターにはワインを最高の状態で保管する義務がある」と吉川氏。
Shinji Yoshikawa
1962年生まれ。メリルリンチのアジア本部長を経て、現在は個人で経営コンサルタントを営む。2012年のワインエキスパートコンクールで優勝。日本ソムリエ協会常務理事。

MY BEST PREMIUM WINE

Text=柳忠之 Photograph=枦木功