日本のトップシェフが集結! イタリアンの巨匠に捧げる全40品のバースデーディナー

去る1月某日、南青山のイタリア料理店『テストキッチンエイチ』にて行われた山田宏巳シェフの誕生日パーティー。全国から総勢40名のスターシェフが駆けつけ、全員が山田シェフのために腕によりをかけた1品を振る舞うという、これまでに類を見ないスペシャルな一夜となった。この、日本中の美食を一夜で食すことがかなう貴重な機会に「CHEF-1×GOETHE北参道倶楽部」のメンバーも特別参加。総料理数はなんと40品! 贅を尽くした、スペシャルなバースデーディナーの全容をレポートする。


参加シェフ全員が1品ずつ振る舞う、百花繚乱の特別ディナー

南青山の閑静な住宅街のなかに佇むイタリアン『テストキッチンエイチ』は、いつもに増して活気に溢れていた。それもそのはず、この日は料理長である山田宏巳シェフの料理人人生50周年のお祝いを兼ねた、バースデーパーティーの開催日。全国各地から40名のシェフがお祝いに駆けつけたのだ。

厨房で下準備を行う参加シェフたち。

パーティーの開始1時間ほど前から、『テストキッチンエイチ』の特徴のひとつである巨大なオープンキッチンは、料理の下準備を行うシェフたちで賑わっていた。さすが、普段は自身の店で腕をふるっているトップシェフたち。ひとりひとりが凛とした雰囲気を身にまとっているからか、一同に厨房に集うと、緊張感がありながらも、より一層華やかさを増す。パーティーの開始前から、店内のボルテージは徐々に上がっていった。

「こんなにたくさんのシェフが集まる機会は滅多にないですよ!」

そう興奮気味に語るのは、完全会員制の焼肉店『クロッサムモリタ』の森田隼人シェフ。山田シェフの誕生日は、5年前から毎年祝っているという。今年は記念の年ということで、各々が想い出の1品を振る舞いたいと語る。

「もちろん緊張もありますが、参加できることを誇らしく思います」と語る森田シェフ。

「これまで、レストランに集まり食事を共にすることはありましたが、山田シェフに料理を振る舞いお祝いすることは初めてですね。今回参加するシェフたちは、みんな自身で選んだ食材を持ってきている。僕は、山田シェフが初めて僕の店に食べにいらしたときにタンが美味しい! と喜んでくれたので、タンを使った料理を出そうと思います」

そう森田シェフが語った通り、今回のパーティーに参加するシェフは全員、自身でメニューを決め、食材の調達も行なっている。パーティーの3ヵ月ほど前に、山田シェフから各々にお誘いの連絡があり、シェフたちはそれぞれが想う究極の一品を考え、当日を迎えた。

フレンチの『レストラン ラ フィネス』の杉本敬三シェフは「事前に、山田シェフから炭水化物、肉禁止令が出たんですよ(笑)」と話す。

「イタリアンは麺類が多くなるだろうから、できたら炭水化物を使わない料理を、と山田シェフから事前に相談がありました。トリュフを使った料理を作りたくて、炭水化物と肉を使わないなかで考えた結果、トリュフのポタージュスープを出すことにしました。一人当たり10gのトリュフを使います。今日は、シェフたちと一緒に料理を食べられるので、とても楽しみ。こういう場で、料理人も食べられる機会は滅多にないのです。でも、1品につき30g食べたとしても、40品だと1.2キロにも! 寿司1カンが30gなので、40カンの寿司を食べることになりますね(笑)」

そう笑みをたたえて、杉本シェフがこれから始まる宴に胸を躍らせていると、時計は17時を回り、会場には山田シェフの開会の言葉が響く。

パーティー開始後、料理を受け取り、ご機嫌な様子の杉本シェフをキャッチ。

「今日は、とにかくみんなで美味しいものを食べよう! という会です。料理持ち寄りの新年会だと思っていただければ。普段は料理人が料理を作り、食べる人は別にいるものですが、今回は料理人全員分の席を用意しました。料理人がコックスーツのまま、料理をいただくための列に並ぶような、面白い景色が見られると思います」

杉本シェフも語っていたように、このバースデーパーティーの最たるところは、シェフたちが料理を作るだけではなく、料理を食し、楽しむことができる点。山田シェフのお祝いのために駆けつけたお客さん40数名に加え、参加シェフ40名分の料理と席も確保されているのだ。シェフたちは、自身の出番以外は、お客さんとして過ごすことがかなう。長年シェフの立場で料理を供してきた山田シェフだからこそ気がつく、心遣いだろう。

参加者のべ80名以上の前でスピーチを行う山田シェフ。

「とはいえ、40品ぜんぶ食べられるでしょうか。好きな料理人の料理だけ食べていただければ、丁度いいのかもわかりません(笑)」

締めにはジョークも交えつつ、山田シェフの挨拶が終わり、いよいよ怒涛の40品バースデーディナーの幕が開いた。

先陣を切ったのは、完全紹介制『エレゾハウス』の佐々木章太シェフ。北海道大学と共同生産している短角牛の生ハム、『ELEZO短角和種ブレザオラ』を披露した。

『ELEZO短角和種ブレザオラ』に加えて、さまざまな肉を層にした特製の『パテアンクルート』も振る舞われた。

「山田シェフからのお題がなく悩みました。考えた結果、“命から料理まで” を信条とし、AからZまで自社で生産及び狩猟しているエレゾの特徴を表現できる料理を選びました」

と、生産から加工、調理まですべて行う『エレゾハウス』ならではの強みを見せた。

左から、『赤坂璃宮』の譚彦彬シェフ、山田シェフ、佐々木シェフ、『銀座 やまの辺』の山野辺シェフ。

バースデーパーティーに参加した40名のシェフたちは、大きくふたつに分かれる。山田シェフとおなじイタリア料理を専門として、過去におなじ厨房に立ち苦楽をともにしたシェフたちと、異なるジャンルでありながらも交流があり、山田シェフのことを慕うシェフたちだ。

イタリアンを専門とするシェフたちからは、熟練の料理とともに、山田シェフの長い料理人人生を感じさせるエピソードが飛び出した。長きに渡る付き合いだからこその山田シェフに対する想いが、より一層料理に深みを与える。

『カノビアーノ』の植竹隆政シェフが振る舞ったのは『鳩とトリュフのミックスショートパスタ 』だ。

「たくさんのシェフの調理風景を観察できて、楽しい。興味津々です!」と笑顔をみせる植竹シェフ。

「山田シェフとはもう、30年以上の付き合い。今日は、山田シェフの好物である鳩料理を。仏産の鳩の心臓、内蔵、レバー、砂肝、身をエシャロットと、きのことともにスープで煮込み、4種類ほどのショートパスタと和えて、仕上げに黒トリュフのみじん切りと、パルメザンチーズをかけて完成。これは、山田シェフを想像しながら構想した、山田シェフのための料理。僕は自分のことを山田シェフの弟子だと思っているので、こうして師匠の誕生日に呼んでもらえることは光栄です」

『鳩とトリュフのミックスショートパスタ 』

『リストランテ濱崎』の濱崎龍一シェフからは『蟹のパスタ』が供された。

「山田シェフには、ほのぼのするところがあって、くっついていってしまう。慕っています」と、山田シェフとポーズをキメる濱崎シェフ。

「手に入ったばかりの、石川県能登の手毬椎茸を加えました。シンプルだけど、蟹と椎茸は相性がいいのですよ。山田シェフには『バスタパスタ』の頃からお世話になっています。シェフは、一言で言うなら天才。加えて人望と思いやり、人間力がある。でなければ、こんなに人は集まらないでしょう。厳しいだけではなく、こういった楽しさも忘れない。そんなシェフの仲間に入れてもらえて嬉しい」。

『蟹のパスタ』

『ブルガリ イル リストランテ』のルカファンティンシェフと井上勝人シェフも自店の営業の傍ら駆けつけた。料理名は『トルテリーニ黒トリュフ パルミジャーノのソース』だ。

『トルテリーニ黒トリュフ パルミジャーノのソース』

「トルテリーニは、パスタ生地のなかに詰め物をして、リング状にしたイタリアの郷土料理。カッポーネという去勢の鶏と、初乳の乳を使った味の強いパルメザンチーズと、黒トリュフを合わせました。山田シェフは日本におけるイタリア料理のパイオニア。なので、イタリアの伝統的な料理を出したかったのです」と本場のシェフならでは本場のの想いを語った。

左から、ルカシェフ、山田シェフ、井上シェフ。井上シェフが料理の説明をしていると、ルカシェフができたての料理を山田シェフの口元へ。

また、異なるジャンルで活躍するシェフたちからも、多彩な料理とともに山田シェフへの感謝の意が述べられた。勉強熱心で、好奇心の旺盛な山田シェフは、他ジャンルの店にもよく足を運ぶという。シェフたちからは、その親交の厚さが伺えるエピソードが披露された。

中華料理店『銀座 やまの辺』山野辺仁シェフが振舞ったのは、自店の看板メニューのひとつでもある『天然とらふぐ白子の麻婆豆腐』。

左から、『割烹 山路』の畠山義春シェフと山野辺シェフ。調理中に畠山シェフの『筍ご飯』とコラボレーションすることを決めたという。

「もともと、山田シェフのことはテレビで拝見していました。料理のジャンルは違うけれど、カッコよくて憧れです。2011年の震災の時に一緒にボランティアを行ってから、相談にのってもらったり、一緒にいろいろなところに連れて行ってもらったりするように。重鎮のシェフであるのはもちろんですが、兄貴でもあり、友達でもあり、たまには年下のような顔も覗いたり……。僕が独立するきっかけをくれた恩人です」

『筍ご飯』と『天然とらふぐ白子の麻婆豆腐』

なんと、山野辺シェフは、一品料理のほかにも巨大な野菜彫刻を用意! 丸3日間、仕事終わりに店のスタッフを総動員して作り上げたという。これには山田シェフも満面の笑みを浮かべ、記念撮影に応じていた。

『銀座 やまの辺』スタッフ総出で作り上げた野菜彫刻。

続いて、『トレフミヤモト』の宮本雅彦シェフが振る舞ったのは、『フォアグラとトリュフのクロメスキ』だ。

クロメスキは、固形の食材ではなくソースだけ食べたいという考えから生まれた、古典的なフランス料理。伝統的な調理法は牛の天然脂とトリュフとフォアグラを揚げるものだが、宮本シェフはこの調理法をアレンジし、トリュフをゼラチンで固めることで現代風に昇華させた。

『フォアグラとトリュフのクロメスキ』

「多ジャンルの料理人が参加するなか、実はフランス料理人は僕をいれて2人だけ。なので、フランス料理の存在感を示したかった。この料理を選んだ1番の理由は、山田シェフの大好物だからです。店のコースのなかで、提供するのは1つなのですが、山田シェフには3〜4つお出しすることもあります。後輩シェフとして辛いのは、山田シェフのために特別なことをすると、2倍3倍になって返して下さるところ(笑)」と語った。

山田シェフと宮本シェフ。

〆には、ラーメン店『魚雷』の塚田兼司シェフと、同じくラーメン店『らぁ麺やまぐち』の山口裕史シェフとのコラボレーションによる『山田シェフに捧ぐ地鶏醤油そば』が振る舞われた。山田シェフは、自他ともに認めるラーメン好き。『らぁ麺やまぐち』のもとには、週に1回のペースで訪れるほどだという。

左から、塚田シェフ、山田シェフ、山口シェフ。

「とりやきOniyaのシャポン、信濃地鶏、名古屋コーチンの胸肉、日向鶏のモモ肉、手羽元、幻の豚肉、TOKYO Xのモモ肉など、20リットルのスープを作るために、28キロ分の食材を使用し、とにかくゴージャスなスープにしました。いろいろな部位といろいろな銘柄を使うことで、味をふくよかに。今夜はお祝いなので、通常営業ではできない、原価度外視の食材を贅沢に使いました」

『山田シェフに捧ぐ地鶏醤油そば』

参加した「CHEF-1×GOETHE北参道倶楽部」のメンバーたちも、1品1品想いのこもった美食の数々と、一夜限りの豪華絢爛な雰囲気を存分に愉しんだよう。

「本当に貴重な経験! たくさんのシェフの話が聞けて楽しかった。40皿ものコースを食べるのははじめてでしたが、さいごまで美味しくいただきました」

と、大きく膨らんだお腹を満足げにさすった。

『CHEF-1×GOETHE北参道倶楽部』のメンバーたちと、杉本シェフ。

なぜ、山田シェフはこんなにも多くの料理人に愛されるのだろうかーー。このパーティーの最後の最後に、その一片が垣間見えた。なんと、山田シェフはサプライズで参加シェフ全員の顔をイラストに起こし、オリジナルTシャツを製作していたのだ。

山田シェフから参加シェフ全員にプレゼントされた特製Tシャツ。

こうして臆することなく気持ちを形に表すことができるのが山田シェフが慕われる所以なのだろう。山田シェフを中心に、普段はなかなか交わることのないシェフ同士が交流を深め、新たな輪が広がっていくのだ。

パーティー終了後、2名から始まった記念撮影はどんどん人数が増えていき、この状態に。

「僕の心臓は生まれてから66年間、動き続けています。これからもまだまだ動き続けると思います。みなさん、引き続きよろしくお願いします」

山田シェフがこう締めると、会場からは大きな拍手が鳴りやまなかった。


 <山田宏巳シェフ バースデーパーティー> コース料理一覧表(※敬称略)
『きた福』阿部光峰 『キャビア1キロ』
『銀座いしざき』石崎洋一 『但馬太田牛の巻き焼きステーキ
『東洋軒』 猪俣憲一 『松坂牛のタルタル』
『カノビアーノ』植竹隆政 『鳩とトリュフのパッケリ』
『クッカーニャ』緒方俊文 『平松牧場和牛のラザニア』
『ミ ディーカ』笠原俊文 『スカンビのパスタ』
『うぶか』加藤邦彦 『松葉蟹の祝い惋』
『のいきっちん』神田賀子 『鯛の昆布締めキャビアを添えて』
『割烹 智映』北山智映 『クエの鱗ロースト、薬膳椀、叩きと極薄にスライスした極太太巻』
『割烹 樋山』熊木望 『天然とらふぐ唐揚げ』
『クラッティーニ』倉谷義成 『スパゲッティアーリオ、オーリオ、ペペロンチーニ。チキン味』
『神戸屋レストラン』小関博之 『帯広、山西さんの百合根(月光)のパスタ』
『ビンゴ』小林秀徳 『牡蠣のフリット』
『エレゾハウス』佐々木章太 『短角和種プレザオラ』
『ラ フィネス』杉本敬三 『トリュフのスープ』
『龍圓』栖原一之 『上海蟹の内子とフカヒレと、あんかけ焼きそば』
『中国飯店』 『里芋葱油炒め』
『魚雷』塚田兼司&『らぁ麺やまぐち』山口裕史 『山田シェフに捧ぐ地鶏醤油そば』
『割烹 山路』畠山義春 『筍ご飯、握り寿し海老』
『リストランテ 濱崎』濱崎龍一 『蟹のパスタ』
『イル リボーゾ』原田誠 『鰆のアフミカート プロセッコのクリームソース』
『トラットリア チャオ』平林良一 『仔豚のロースト』
『ピ・グレコ』福本俊輔 『ミックスホルモンのニョケッティ』
『サラマンジェフ』藤井正和 『越前ズワイガニと永平寺産、根菜のセルクル、越前セイコガニの内子ソース』
『玉井堂本舗』別所美治 『花びら餅と祝い菓子二種』
『セッタンタ』水口秀介 『甘鯛の鱗焼きとホタテのカプチーノ』
『トレフミヤモト』宮本雅彦 『フォアグラとトリュフのクロメスキ』
『クロッサムモリタ』森田隼人 『特選牛の吟醸熟成タンの薪焼き』
『京都ネーゼ』森博史 『京都亀岡産、牧野産のお野菜とコッペ蟹とふぐの白子と共に』
『オット』山形聡 『毛ガニと塩のパンナコッタ、ジャガイモのムース』
『Test Kitchen H』山田宏巳 『卵黄のジェラート』
『やまの辺 江戸中華』山野辺仁 『天然とらふぐ白子の麻婆豆腐』
『リストランテヒロ青山』山本淳 『ホワイトアスパラと青豆のラヴィゴットソース』
『ラパルタメント ディ ナオキ』横江直紀 『栗粉を練り込んだビーゴリ、猪のラグーソース』
『ブルガリ イル リストランテ』ルカファンティン&井上勝人 『トルテリーニ黒トリュフ パルミジャーノのソース』
『メルボルン』鷲田富弥 『握り寿司マグロ』
『割烹 渡辺』渡辺大生 『鮃の昆布巻、北前SP』


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Text=加藤久美子(ゲーテWEB編集部)