演出家が語る『料理の鉄人』の裏側。歴代鉄人が集結した同窓会に潜入!

1993年から6年間にわたって放送され、その後の料理界に多大な影響を及ぼした伝説の番組『料理の鉄人』。その放送開始25年を祝って、去る2月11日、同窓会『絆の鉄人』が開かれた。

会場に足を踏み入れると、歴代鉄人の巨大ポスターが目に入る

この日集まったのは、歴代の鉄人、挑戦者、関係者あわせて総勢100名以上。番組で司会を務めていた鹿賀丈史氏のVTRが流れ、おなじみの「アレ、キュイジーヌ!」の掛け声が響くと、懐かしい衣装に身を包んだ歴代の鉄人、道場六三郎氏、陳建一氏、坂井宏行氏、中村孝明氏、神戸勝彦氏(森本正治氏はハワイの新店オープンと重なり欠席。石鍋裕氏はインフルエンザのため欠席)が登場!会場のボルテージは一気に最高潮に。鉄人の面々は過去の挑戦者たちと語り合い、当時を懐かしがった。

歴代の鉄人たち。左から、坂井宏行氏、道場六三郎氏、陳建一氏、中村孝明氏、神戸勝彦氏。

さて、この日のイベントの目玉企画は、“10分間料理対決” 。当時の番組の再現企画で、鉄人と挑戦者が、お題の食材を使用して料理を作り、その出来栄えを競う。今回の挑戦者は「神田川本店」の谷口広一料理長。そして、谷口氏が指名したのは、中華の鉄人・陳建一氏。鉄人側からも、会場からも、大きなどよめきが起こった。

戦いの火ぶたが切って落とされる。来場者が見守る中、この日のテーマである大きなダチョウの卵は、シェフの手によって見事、四川料理と、日本料理に姿を変えた。

「二度と作れない卵料理」

鉄人・陳健一の料理は、その名も「二度と作れない卵料理」。豆板醤やラー油など、中華ならではの味付けを施した、牛肉と卵の炒めもの。対して、挑戦者・谷口広一の料理は「魂の柚子蒸し」。柚子の中身をくりぬいて創作した柚子皮の器が目にも鮮やかな一品である。

審査員は服部氏に加え、太田レポーター、フリーアナウンサーの阿部知代氏の3名。

試食後の結果発表で、勝者は挑戦者・谷口広一氏に決まった。惜しくも敗れた陳氏は、「疲れたけれど、やっぱり楽しいね!勝ちたかったけれど、これでよかった。勝つと、またやらなくちゃならなくなるから(笑)。これからは、お互い料理人生を楽しみましょう!」と、谷口氏へエールを贈った。

結果発表後、固く握手を交わす陳氏と谷口氏。

最後は、鉄人たちを囲んで、挑戦者、関係者も一緒に記念写真を撮影。終始和やかな雰囲気だった同窓会は、鉄人たちの料理に対する熱い想いを再び垣間見られた会でもあった。


田中経一氏インタビュー

本イベント、鉄人同窓会「絆の達人」が開かれるきっかけをつくったのは、『料理の鉄人』をモチーフにした小説『キッチンコロシアム』の著者であり、番組のの演出家でもあった田中経一氏。小説を執筆するにあたり、多くの料理人と連絡をとった結果、本同窓会が開催されるにいたったという。その田中氏が2月末に上梓した新著『愛を乞う皿』は、鬼才と呼ばれ、怪物と恐れられた、芸術家・北大路魯山人の生き様に迫った一冊。今回は、その執筆の経緯を語ってもらった。

「なぜ、魯山人のことを書こうと思ったかというと、彼にまつわる資料が、彼について好意的に書かれているものばかりではなかったからです。そこに、人間的魅力を感じました。こんなに悪いことばかり書かれている偉人はいないぞ、と(笑)。魯山人を題材にした人間臭い伝記を書きたいと思い、筆をとりました。

あとは、『料理の鉄人』でご一緒した審査員で、魯山人の愛弟子である食物史家の故・平野雅章さんの影響が大きかったです。生前、平野さんは「魯山人の伝記を書くのは難しい、彼の人格は複雑で、とても書ける気がしない」と言っていました。魯山人のことを知るために、彼に関する多くの本を読みました。ミステリアスな人生をおくった人だということはわかりましたが、どの本からも魯山人の真の姿がみえてきません。本当の魯山人はどんな人物なのだろう? という疑問がわきました。そした平野さんが、魯山人について語っていたことの意味がわかりました。今回は、非常に困難な執筆でしたが、彼の想いや、周囲にいる人の想いを推測して、読んだ人がもやもやした疑問の残らない、北大路魯山人像が描けたと自負しています。

魯山人の最期は切ないもので、ひとり、とても孤独なまま亡くなりました。魯山人の生い立ちは厳しいもので、親に捨てられた過去を持っています。彼は生まれてから亡くなるまで、困窮や孤独を感じ続け、それと同時に、親の愛、温かい家庭をいつも夢見て、周りに振り向いて欲しいという想いから、作品を作り続けていたのではないでしょうか。そういった彼の強い渇望が、自身の作品に乗り移り、なにかを乞い続けていたと感じます。だから本の題名は、“愛を乞う皿”なのです」

Keichi Tanaka
1962年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、テレビ業界へ。その後、フリーの演出家として独立。フジテレビ「料理の鉄人」「ハンマープライス」「クイズ$ミリオネア」「VVV6」やテレビ朝日「愛のエプロン」など数々のテレビ番組を手がけ、多くの受賞歴を持つ。2014年、『麒麟の舌を持つ男』で小説家デビュー。他の著書に『生激撮!』『龍宮の鍵』『キッチンコロシアム』がある。

田中経一著『愛を乞う皿』 幻冬舎 ¥1,800

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