世界が絶賛するクラフトジンの秘密とは?【サントリー大阪工場】

羽田や成田から飛行機で海外へ向かおうとすると、免税店でひときわ目をひく商品がある。サントリーのクラフトシリーズだ。ジャパニーズクラフトジン「六 ROKU」、ジャパニーズクラフトウオツカ「白 HAKU」、ジャパニーズクラフトリキュール「奏 KANADE」は、いま海外や免税店での人気がすさまじいという。新世代のジャパニーズ酒はどうやってつくられるのか、サントリーの大阪工場を取材した。シリーズ第2回。  


卓越した技と日本の自然が生んだ唯一無二のジン

クラフトジンブームが世界中で起きている。イギリスの「シップスミス」が少量生産したジンがその発端だと言われるが、その波は日本にも押し寄せた。国内外の小さな蒸留所で個性的なジンがつくられるなか、2017年にサントリーがジャパニーズクラフトジン「六 ROKU」を発売した。現在「六 ROKU」の販売量は海外9割、日本1割。そういう意味では、日本から世界で羽ばたいたジンだ。

サントリーで初めてジンがつくられたのは1936年。ジンをつくり始めて80年、その歴史が次の時代に継がれるジンをつくりだした。「六 ROKU」が目指すのは「旬の材料を選び、伝統的な技をふまえて丁寧につくる」和食的な存在で、まさに和食に寄り添うジンだという。

「日本人には味や香りを細かく感じる繊細さがあります。和食の炊き合わせという料理は、まさにその象徴です。一つひとつの材料によって熱の入れ方や味のつけ方などを変えてたきあげ、最後にそれらを合わせます。『六 ROKU』も「炊き合わせ」と同じように注意深く丁寧につくっています」と話すのは、商品開発部の技術顧問・鳥井和之さん。

その言葉通り、「六 ROKU」はさまざまな素材をブレンドしながらも、それらの個性が出すぎることなくきちんと主張するつくりになっている。それぞれの旬の時季に収穫された桜、桜葉、柚子、煎茶、玉露、山椒といった6種類の日本的なボタニカルは、個々に持ち味を発揮し互いに引き立てあうのだ。

ジャパニーズクラフトジン「六 ROKU」(4000円)。6種の和のボタニカルを使うことからこの名になったそう。六角形のスタイリッシュなボトルには、桜や柚子などボタニカルの図柄が刻まれる。 

サントリージンのつくり方の大きな特徴は2回蒸溜すること。まずはベーススピリッツにジュニパーベリーだけを一晩漬けこんで蒸留し、さらにその蒸溜液にコリアンダーなど他の伝統的なボタニカルを漬け込んで2回目の蒸溜を行い、ベースとなる伝統的なジン原料酒をつくる。それとは別に6種のボタニカルをそれぞれ素材に合わせて浸漬させ、素材に合った蒸溜器で蒸溜。最後にそれらをブレンドする。どの工程にも素材や蒸溜具合を見る職人の勘と目、ブレンダーの確かな舌が要るから、ひとときも気を抜けない。

たとえば原料酒のひとつ「桜」は、通常流通している様な塩漬けではなく生の桜や葉を使ってつくられる。浸漬するアルコールの度数が高いと風味が損なわれるので一般的な60度より低めのものを使う。またその後の蒸溜も、温度をさげたり、減圧するなど素材を見て変えるという。手間も時間もかかるが、こうしてつくった原料酒は確実にリアルで豊かな風味を生む。

日本以上に、ジンに親しむ欧米などの地でこのジンが認められるのは、こうして丁寧につくられたジャパニーズクラフトジンの深みのある味わいと繊細な香りがあるからだ。すでにブームになっている和食との親和性も相まって、バランスのいい「六 ROKU」は世界のバーテンダーが認めるスピリッツのひとつになった。

4基の蒸溜器が並ぶ「スピリッツ・リキュール工房」。100年に亘るサントリーの洋酒製造の技がここに結集している。

柚子の苦味とシトラス感、桜餅のような香り、茶葉の優しい苦味などが混ざり合う。ベースのジン原料酒はシャープで爽快感がある。

「ソーダで割っても風味が生きたままで、水っぽくならない。繊細な香りが白身のお刺身など和食とよく合うんです。寒い時期には、お湯割りにしてもおいしいですよ」と鳥井さん。

複雑なカクテルはバーで、ソーダ割やお湯割りは自宅でとさまざまに楽しめるのも、このジンが世界に認めれる理由だろう。

Text=中井シノブ Photograph=伊藤信