人生の勝者が開けるべき、最高級のシャンパーニュとは?【ワイン雑誌編集長が語る】

皇帝ナポレオンが、「勝利の時には開ける価値があり、敗北の時はそれを必要とする」と宣のたまったシャンパーニュ。それでは人生の勝者が開けるべき、最高級のシャンパーニュとは何か? ワイン雑誌『ワイナート』の小松編集長に教えを乞う。


ずばり、「熟成」

シャンパーニュにはたくさんのメゾン(生産者)があり、各メゾンが複数のアイテムをリリースしている。それらアイテムの頂点に君臨するのがメゾンの粋を極めた、最高級のプレステージ・キュヴェだ。

では、そもそもそのシャンパーニュを最高級、あるいはプレステージと定義する基準は何なのか? 小松由加子さんはずばり、「熟成」と答える。

「シャンパーニュは発酵で生じた澱とともに瓶熟成させることが義務づけられています。この澱が風味に厚みや深みを与えるので、一般に熟成期間の長いシ
ャンパーニュほど高級です」

しかしながら、小松さんによると、単純に長く寝かせればよいというものでもないらしい。

「長い熟成を施すには、それに耐えられる上質のブドウが必要になります。上級なものほどムニエが使われず、貴重なグラン・クリュのシャルドネの比率が高くなるのがその証ですね」

また「エモーショナルな部分もプレステージ性には欠かせません」と小松さん。

「ブランドのバックストーリーやメゾンの哲学も大切な要素。当然、生産量が少ないため入手は難しく、だから一度は飲んでみたいと欲望が掻き立てられる
のです」

Yukako Komatsu
小松由加子。美しいビジュアルでワインと食の世界を探求するワイン雑誌『ワイナート』の編集長。プライベートではシャンパーニュをこよなく愛する泡党。


3大メゾンの極上シャンパーニュの誘惑

ドン ペリニヨン、ルイ・ロデレール クリスタル、サロン。誰しも涎を垂らさずにはいられない銘柄だ。もともと熟成期間の長いサロンは言わずもがな、前2者は通常のキュヴェと異なり、さらなる長期熟成を施した逸品。これら3本を知らずして、シャンパーニュの醍醐味は語れない。

上:¥120,000(エノテカ・オンライン TEL:0120-81-3634) 中:¥50,000(MHD モエ ヘネシー ディアジオ TEL:03-5217-9732) 下:¥90,000(ラック・コーポレーション TEL:03-3586-7501)

上:LOUIS ROEDERER クリスタル・ヴィノテック 1996
「クリスタルは若い」そう思いこんでる方へ

ロシア皇帝アレクサンドル2 世御用達のシャンパーニュとして生まれた「クリスタル」。ジャーナリストから「リリースが早すぎ」との指摘を毎度受け、メゾンの出した回答がこれ。「これを飲めば、クリスタルの真価がはっきりわかります」と小松さん。

中:DOM PÉRIGNON P2
第2の熟成ピークを迎えたダークなドン ペリニヨン

高級シャンパーニュの代名詞、ドン ペリニヨン。なかでも「熟成のピークが複数回訪れる」というコンセプトのもと、2 度目のピークに出荷されるのが「P2」。「熟成の素晴らしさを体感できる最良のサンプル。レアだけど大手百貨店で入手可能」

下:SALON サロン2007
追熟でさらに複雑味が増すシャルドネの究極形

単一畑、単一品種、単一収穫年というミニマリズムの権化。ただし、メニルのシャルドネゆえ最低10年の熟成を要する。100年でわずか37ヴィンテージのみリリース。「ある意味、シャルドネの究極の姿。出荷後さらに追熟させると、別世界が花開く」


熟成された最高級シャンパーニュ、どれを選ぶか?

さらに小松さんお薦めの銘柄を8本。ローズ・ド・ジャンヌを唯一の例外として、熟成という意味においてそれぞれ一家言あるブランドばかり。これらを味わえば、最高級とは何ぞやが一目瞭然。

右:¥29,000(MHD モエ ヘネシー ディアジオ TEL:03-5217-9736) 右中:¥58,000(MHD モエ ヘネシー ディアジオ TEL:03-5217-9906) 左中:¥70,000(サントリー TEL:0120-139-380) 左:¥16,000(参考上代)(日仏商事 TEL:03-5778-2494)

右:KRUG クリュッグ グランド・キュヴェ エディション167
アッサンブラージュの秘技が光る

「グランド・キュヴェ」は原則7年以上の熟成だが、20年以上昔のリザーブワインも含まれている。「アッサンブラージュが見事。さらに熟成感を味わいたければエディションナンバーの古いものを」

右中:MOËT & CHANDON モエ・エ・シャンドン MCⅢ
コンセプトが秀逸なモエ・エ・シャンドンの集大成

メタル、ウッド、ガラスと、3つの異なる環境を通じてつくられたワインをブレンドさせたウルトラ プレミアムキュヴェ。「コンセプトが秀逸でパッケージもゴージャス。これぞモエ・エ・シャンドンの集大成」

左中:LAURENT - PERRIER アレクサンドラ・ロゼ 2004
嫁ぐ娘に父が贈った独創的なロゼ

初ヴィンテージの1982年以降、7ヴィンテージのみリリース。黒ブドウと白ブドウの果皮を漬けこむ醸造法も独特な、芸術的ロゼ。「現当主アレクサンドラの結婚を祝うため、父親がこっそりつくり、披露宴で発表。そのストーリーに感涙」

左:CEDRIC BOUCHARD ローズ・ド・ジャンヌ・レ・ズルシュル
ピュアさを極めたポスト・セロスの最右翼

単一畑、単一品種、単一年のキュヴェを少量ずつつくる、職人的なつくり手。「小規模生産者で有名なのはジャック・セロスだけど、今さら感が否めない。セドリック・ブシャールのこちらは知る人ぞ知る銘柄。ピュアさがいさぎよし」


右:¥80,000(ペルノ・リカール・ジャパン TEL:03-5802-2671) 右中:¥65,000(アンリ・ジロー ジャパンTEL:03-5777-2639) 左中:¥25,000(日本リカー TEL:03-5643-9770) 左:¥33,000(日本リカー TEL:03-5643-9770)

右:PERRIER - JOUËT ベル・エポック・ブラン・ド・ブラン
エレガントさの極致を追求

特級畑クラマンの特別な2区画で収穫されたシャルドネのみを用いて醸造。エミール・ガレのアネモネを纏う、ベル・エポックの神髄。「エレガントさや複雑な味わいを追求した1本。いろいろな銘柄を味わった人に」

右中:HENRI GIRAUD アルゴンヌ 2008
特別な樫樽で仕立てたヘビー級パンチ

アルゴンヌの森の樫樽で1年熟成のうえ、8年間瓶熟成。黒ブドウのピノ・ノワールが90%を占める。「シャンパーニュ地方のアルゴンヌの森を守るため、毎年、販売本数分の樫の木を新植。パンチの効いたリッチな味わい」

左中:RARE CHAMPAGNE レア 2004
温度しだいで表情を変える重層感と旨味

パイパー・エドシックのキュヴェ・レアがリブランディング。レア・シャンパーニュと名を改めたもの。「40年で8ヴィンテージのみとまさにレア。温度が上がると重層感が増し、旨味も深まる。その表情変化を楽しみたい」

左:CHARLES HEIDSIECK ブラン・デ・ミレネール 2004
リッチでエレガントなアンビバレントさ

創業者は〝シャンパン・チャーリー〞の名で有名。これはコート・デ・ブランの4つの特級畑とひとつの1級畑のシャルドネをブレンド。「私が個人的に大好きな銘柄(笑)。リッチかつエレガントというアンビバレントな味わい」


ONE MORE CHAMPAGNE

価格算定不能

アラン・ロベール メニル・トラディシオン
もう新たにつくられることのない究極のレア

マニア垂涎の1本。当主アラン・ロベールが数年前に引退。後継者もいなかったので、畑はサロンに売り払い、現在、在庫を少しずつ出荷。メニル・トラディションは特級畑ル・メニル・シュール・オジェのシャルドネを樽発酵のうえ、長期熟成させたもの。もはやつくられることのない究極のレアアイテムだ。


Text=柳 忠之 Photograph=SHINMEI、Getty Images