目指すはアジア制覇! 外食産業のカリスマが仕掛ける焼肉のファストフードとは?

8月29日の"ヤキニクの日"に、新業態焼肉店「焼肉ライク」1号店が東京・新橋にオープンする。"焼肉のファストフード店" と位置付けられたこの店を仕掛けるのは、「外食産業のカリスマ」として知られる西山知義氏。焼肉レストラン「牛角」を創業し、わずか7年で1000店舗まで成長させ、2012年に創業したダイニングイノベーションでは、高級焼肉店「焼肉Kintan」や、焼鳥店「すみれ」を国内外へ展開し、辣腕を振るってきた。そんな同氏が新たに手掛ける「焼肉ライク」とは、どんな店なのか? オープンの狙いや今後の展開について伺った。


"焼肉のファストフード店"で新たな市場を創り出す

ダイニングイノベーションでは多彩なジャンルの飲食店を運営していますが、なかでも焼肉は特別な存在。私自身、常に「次の焼肉のカタチはどのようなものになるんだろう?」と考え続けています。「牛角」は、当時高級品であった焼肉をリーズナブルかつカジュアルに食べられる料理にした。逆に「焼肉Kintan」では、高級レストランのような内装で、ワインとのマリアージュを楽しみながら味わう焼肉を提案しました。時代のニーズに合わせて、新しい業態を生み出していくことが成功につながるとともに、外食産業全体の価値を高めます。

焼肉の次のカタチを模索するうちに見えてきたのが"焼肉のファストフード店"です。成長している業界には、高級店とファストフード的な店の両方が存在しています。高級寿司店と回転寿司店、高級美容室とQB HOUSEのような低価格のヘアカット店。両者があるから、幅広いニーズに応えられるわけです。

でも、焼肉にはファストフード店がありませんでした。上質な肉を出す高級店や、リーズナブルな店はありますが、ぱっと焼肉を食べたいと思ったときに、1人で行ける低価格の店はなかったのです。「焼肉ライク」では、テーブルに1人1台のロースターを設置。ビジネスマンや女性が衣服に臭いが付くのを気にしないで過ごせるよう、煙を吸い込む無煙ロースターを採用しました。

手軽さが売りですが、肉の種類は多彩。いろいろな部位を食べられることが焼肉の魅力ですから。注文は全9部位を好みで組み合わせるカスタム式。「カルビ100gを醤油タレで、サガリ50gを塩タレで、それにネギ塩タンを50g」というように、量やタレを細かく設定することができます。そのほか、初めての来店者が注文しやすいように、ごはん、キムチ、スープが付いたセットメニューも用意します。値段は肉の単品が100g330円から、セットメニューは530円からです。

"安くて美味しい"を実現するために

なぜ、このような低価格が実現できたのか? ひとつはメニューの絞り込みです。「焼肉ライク」では、焼肉屋の定番である冷麺やビビンバなどは扱いません。シンプルに焼肉とごはん、スープ、キムチだけで勝負します。この絞り込みにより、仕入れのシステムやスタッフのオペレーションが単純化され、コストを抑えることができます。

さらに「焼肉ライク」では低価格で焼き肉を提供するために"高回転”を強く意識しています。注文を受けてから料理を出すまでわずか3分。さっと出して、さっと食べていただく。お客様の平均滞在時間は25分と想定しています。もちろん、これは1号店である新橋店での想定。ビジネスマンの利用が多く見込まれる立地では25分程度だろうと予想していますが、今後、ショッピングモールや家族利用が多い郊外に店舗を作った場合、滞在時間は延びていくでしょうね。

こうしたことも含めて、1号店である新橋店はトライアルという意味合いが大きい。実際のお客様の滞在時間やスタッフのオペレーションなどについては、やってみなければわからないことが多い。予想していない改善点も出てくるはずです。1号店の動きを見ながら、次の出店を考えていきます。

「焼肉ライク」の展開目標は1000店舗と掲げました。焼肉のファストフード店は前例のないことなので、正直、予測は付きにくい。でも、「うまくいくんじゃないか」という期待感も強く持っています。というのも、「焼肉ライク」の業態はフランチャイズ展開しやすい。実際に肉を焼くという調理の部分をお客様が担当するわけですから、店舗や従業員によって味が変わりません。全店で安定した味を出していけます。フランチャイズ側の立場から見て、投資回収しやすい業態だと思いますね。

国内での出店に加え、世界展開も視野に入れています。「牛角」は現在5か国53店舗を展開中。いずれも好調といえる売り上げを出しており、特にアジアでは圧倒的な強さ。「焼肉ライク」もアジアの人たちに間違いなく受け入れられるでしょう。欧米については場所を選びますね。アジア系が多く暮らすエリアでは人気が出ると思いますが、白人相手には時間がかかるかも。まずはアジアを制覇することです。順調にいけば、約10年で1000店舗展開が達成できるのではと見込んでいます。

店づくりの肝は、自分の「欲しい」をカタチにすること

「焼肉ライク」をはじめ、新しい業態のアイデアはたいてい日常生活のなかで生まれます。特に、休日に家族と過ごす時間は大切。息子たちと外食に出かけた際にいいアイデアが浮かぶことが多い。いろんなジャンルの店に行きますが、以前、「蕎麦屋に行こう」と誘ったときに、息子が「蕎麦屋は寂しいから嫌だ」と言うんです。蕎麦屋は各々が注文したそば一皿を食べて、それで終わり。複数のメニューを楽しむ業態ではないし、食事をしながら賑やかにコミュニケーションを楽しむ雰囲気もありません。

そんな経験から生まれたお店が「じねんじょ庵」です。コンセプトは「楽しい、蕎麦屋」。蕎麦のほかに、野菜焼き串や美容と健康にいい自然薯料理など豊富なメニューを開発しました。ヘルシーな料理を楽しんだ後に楽しむのが、店で仕込んだ"囲み蕎麦"。大きな板の上に盛った蕎麦を10種のつけ汁で食べるスタイルです。「こんな店が欲しい」という思いをカタチにする、それが店舗開発の基本ですね。

いま、外食産業の景気は決して悪くはない。ただし、新しいものを作っていくという努力が足りない気がします。飲食業界の大手はM&Aで大きくなるばかりで、新しいアイデアで規模を拡大しようという意識が欠けている。外食は「楽しく、コスパもいい」と発信していかなければ、コンビニエンスストアの勢いに負けてしまいます。

8月29日、新橋に第1号店がオープン

「焼肉ライク」では、外食産業全体を元気にするようなインパクトを与えたい。8月29日のオープン日には、通常1210円の「カルビ&ハラミ(サガリ)200gセット」を290名限定で、290円で提供します。私自身、焼肉に対して特別な思いがありますから、ほかの業態の新規オープンより、ドキドキ感が強い。楽しみでもあり、不安でもあります。万全の準備はしていますが、何か想定外の事態が起こるのではないかと、心配事は消えません。

それに、1000店舗という大きな目標を掲げた以上、将来に対しても期待と不安の両方があります。1号店が成功したとしても、2号店以降がうまくいくとは限りません。チェーン店では、本家と「ほとんど同じ」と感じられてしまうような競合店が出てくるケースが多いですからね。200店舗以上になって、初めて成功といえる。そんな厳しい思いも持っているんですよ。

中央の「カルビ&ハラミ(サガリ)セット」(1210円)に、左奥の「和牛上カルビ」(50g/580円)、左手前の「牛タン」(50g/480円)を追加オーダー。このように、セットメニューに加え、好きな部位を50gから追加できる仕組み。
Tomoyoshi Nishiyama
1966年生まれ。1987年、レインズインターナショナルを創業し、焼肉店「牛角」や、しゃぶしゃぶ「温野菜」などの外食チェーンを展開。7年で1000店舗という、並外れたスピードで外食チェーンを築き、世界最速記録を樹立した。2012年より新たに、ダイニングイノベーションを創業し、「すみれ」「焼肉Kintan」などを運営。さらに、海外進出も積極的に行い、日本の食文化を世界へ発信している。
焼肉ライク
TEL:03-3519-8929
住所:東京都港区新橋2-15-8 新橋W·Bビル1F
営業時間:11:00~23:00
※オープン日は12:00~20:00(ただし「カルビ&ハラミセット」の提供数が290食に達し次第終了)

Text=川岸徹