名シェフの第2章開幕! 覚醒する美食店

今、多くのゲストから絶賛されてきた名シェフたちが現状に満足せず、さらなる高みを目指して走り始めた。料理そのものへの解釈も一新し、新世界を切り開くシェフや経験と技術の集大成として新天地へとたどりついたシェフ……。頂点を極めた凄(すご)腕たちが理想を追求する第2章が、今、開く。

革新的イマジネーションの先でたどりついたフレンチの新世界

フロリレージュ(Florilége)
<東京/外苑前>

 2015年春、食通たちの間で一番の話題といえば、あの“予約の取れないレストラン”が移転したことだろう。3月、新天地でスタートした『フロリレージュ』は、単なるリニューアルとは一線を画す、まさに“新生”と呼ぶにふさわしい変身を遂げた。
 店内に一歩入って、まず、目を奪われるのは、店内中央に設(しつら)えられた厨房を取り囲むカウンター席。そのダイナミックな空間は、思わず息を呑むほどだ。
「13皿に増えたコースをスムーズに出すためには、カウンターが最善と考えたんです」と語る川手寛康シェフは、コース内容を一新。メニューには、〈投影〉〈本質〉〈破壊と創造〉といったテーマ性を秘めた13の言葉が、料理それぞれに添えてある。
「今まで、料理をつくる際の糸口となっていた思いを言葉に表してみた」そうで、いわばこれが新しい料理のキーワードだ。

進化した美味を魅惑のカクテルペアリングで/〈本質〉車海老が持つ甘みに合わせるのは、ほうじ茶と玉ねぎのエッセンスでほのかな苦みを加えたウイスキーのカクテル。深い余韻を楽しめる絶妙のマリアージュ。

 例えば、〈本質〉という名で登場する車海老の料理は、川手シェフの考える車海老の真の旨さ〈本質〉を追求したひと皿だ。45度の低温で火を入れ、周りはプリッと張りがありつつも、中心をレアに仕上げたそれは、車海老本来の甘みが最大限に引きだされている。とはいえ、それらの料理は、決して難解なものではない。奇を衒(てら)うのではなく、素材の持ち味を際立たせるため、余分な要素は削ぎ落とし、むしろ以前に比べ、シンプルになっている。それは、日本でフランス料理をつくる意義を常に考えながら食材と向き合ってきた川手シェフの一つの答えなのかもしれない。その視線は、素材や味を重ねていくだけではなく、ジャンルを超えた料理そのものの本質に向けられている。さらにユニークなのが“カクテルペアリング”。ほのかに燻香(くんこう)を纏(まと)った鱒(ます)のグリルには、スモークをかけた赤ワインを合わせるなど、オリジナルカクテル7種が料理に合わせて登場。川手シェフの新たな世界観を体感したい。

川手寛康 シェフ
1978年生まれ。西麻布『ル・ブルギニオン』、モンペリエ『ジャルダン デ サンス』などを経て、白金台(当時)『カンテサンス』でスーシェフに。2009年、南青山『フロリレージュ』で独立。今年3月、現地へ移転。
フロリレージュ(Florilége)
TEL:03-6440-0878
住所:東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑 B1
営業時間:12:00~L.O.13:30/18:30~L.O.20:00
休み:水曜
席数:16席
個室:1室(4~6名)
アクセス:地下鉄外苑前駅3番出口より徒歩5分


世界の先鋭店で研鑽(さん)を積んだシェフが発信する“最先端”

シェフズカウンターに大テーブルも備える北欧風の店内。

レストラン セララバアド(Restaurant Celaravird)
<東京/代々木上原>

 ガストロノミー界に多大な功績を遺した『エル・ブジ』フェラン・アドリア氏の薫陶を受けた新世代シェフの新店が誕生した。
 代々木上原の住宅街で橋本宏一シェフが追求するのは、クリエイティビィティーを発揮した10皿前後の“少量多皿”コース。
「モダンガストロノミーと聞くと真空調理や液体窒素など、科学的調理法のイメージばかりが先行しがちですが、素材を尊重したより自然な料理です」と橋本シェフ。岩手県石黒農場のほろほろ鶏をはじめ、全国各地の生産者から届く食材にナチュラルなアプローチを試みた料理は、素材感が際立つ味わい。

ほろほろ鶏 フォアグラ 根セロリ 折鶴 柚子/森をイメージしたひと皿は前菜で提供。

 五味(ごみ)のバランスを考慮しリラックスして楽しめるよう工夫を凝らしながら、根セロリの折鶴など驚きをちりばめるあたりはシェフならでは。品数の多さと緻密なプレゼンテーション、サプライズ感を大切にするゆえの一斉スタートも納得できる。
 感性を刺激する先鋭の美味をぜひとも堪能してほしい。

橋本宏一 シェフ
1970年生まれ、大阪府出身。スペイン『エル・ブジ』、日本橋『サンパウ』、『マンダリン オリエンタル 東京/タパス モラキュラーバー』料理長を経て、当店オープン。開業前に世界的名店『NOMA』で修業。
レストラン セララバアド(Restaurant Celaravird)
TEL:03-3465-8471
住所:東京都渋谷区上原2-8-11 TWIZA上原1F
営業時間:18:30オープン/19:00料理一斉スタート
休み:月曜、不定休あり
席数:16席(うちカウンター2席)
アクセス:地下鉄または小田急線代々木上原駅北口より徒歩8分


日仏で実力を認められるシェフが創造する割烹フレンチ

フレンチ割烹 ドミニク・コルビ
(フレンチカッポウ ドミニク・コルビ)
<東京/荒木町>

 料理人との距離の近さがカウンター割烹の醍醐味。日本特有の文化であり、新鮮な食材が目の前で調理される様子が喜ばれるため、外国人ゲストの接待に重宝するという声もよく聞く。
 2015年3月、荒木町の裏通りにオープンした『フレンチ割烹 ドミニク・コルビ』は、フランス料理界の重鎮、ドミニク・コルビシェフが、趣向を凝らした料理と真心でもてなす“スターシェフに会いに行ける割烹”だ。

シャラン産 鴨とヤングコーン。「自分の料理には絶対に外せないシグネチャーメニュー」と語るコルビシェフ。

 日本に滞在して22年目のコルビシェフは和の食材への造詣も深く、日本語も達者。カウンターを1枚隔てた空間でゲストとの会話を楽しみながら調理する姿は、まるで水を得た魚のようにイキイキとして見える。
 自ら全国をまわって探した国産食材や調味料を盛り込んだ料理は8000円~の全3コース。ワインや稀少な日本酒のペアリングも用意している。日本料理とフレンチの邂逅(かいこう)。コルビシェフのピュアな心が紡ぐ美味を、じっくりと堪能したい。

ドミニク・コルビ シェフ
28歳で来日。『ホテル ニューオータニ/ラ・トゥールダルジャン東京店』エグゼクティブシェフに就任。『ホテル ニューオータニ大阪/サクラ』総料理長などを経て、2015年3月当店をオープン。フランス料理の魅力を日本で広めた立役者。
フレンチ割烹 ドミニク・コルビ
(フレンチカッポウ ドミニク・コルビ)

TEL:03-6457-8899
住所:東京都新宿区荒木町9-7 ナオビル1F
営業時間:18:00~L.O.翌2:00 ※21:30まではおまかせコースのみ
休み:不定休
席数:16席
アクセス:地下鉄四谷三丁目駅4番出口より徒歩5分


岐阜で名声を轟かせた中華の名店
世界に誇る美食の聖地・銀座へ!

フルタ(Furuta)
<東京/銀座>

 36年前、22歳で独立。その後、先鋭的中華の先駆けとして一躍名を馳(は)せた古田等シェフ。美食家らがこぞって足を運んだ岐阜『開化亭』のオーナーシェフだ。その彼が、昨年の12月、新たな挑戦の場として、本物を知る街、銀座に進出した。
「干し鮑(あわび)のような高級乾貨(かんか)や熊の掌といった中華の神髄ともいえる素材を用いた料理を含め、自分がつくっていきたい料理を受け止めてくれる場所は……」そう考えた末の決断だった。自らの名を冠した店名からも、その気概のほどがうかがえよう。

ブルターニュ産ブルーオマール海老の上湯炒め/素材の持ち味を生かした逸品。写真は4人前。

 一枚板のカウンターが清々(すがすが)しい店内は、シンプルながら本物の贅沢とは何かを感じさせる上質な空間。ベルーガキャビアの冷製ビーフンといった、岐阜時代からの名物料理に加え、ここではブルーオマール海老の上湯(しゃんたん)炒めや乳のみ仔羊など、フレンチ顔負けの食材が、独創性溢(あふ)れる中華となって登場する。四川料理をベースとしつつも、その発想は実にしなやか。天性のセンスと技術力から生まれる新たな美味に期待したい。

古田 等 シェフ
1956年生まれ。岐阜の四川料理店『平和園』での修業を経て、78年に『開化亭』を開店。89年頃から始めた先鋭的な料理手法に注目が集まりトップシェフに。2014年12月、『Furuta』をオープン。
フルタ(Furuta)
TEL:03-3535-5550
住所:東京都中央区銀座1-21-14
営業時間:17:00~L.O.20:30
休み:日曜・月曜
席数:8席
アクセス:地下鉄新富町駅2番出口より徒歩5分

Text=森脇慶子、粂 真美子、小寺慶子 Photograph=上田佳代子、富澤 元、河合 綾

*本記事の内容は15年5月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)