2400本収集! ワインを愛してやまない医師の超絶コレクションとは?

ワインにハマったきっかけは「ドメーヌ・ミシェル・ノエラヴィーヌ・ロマネ ポーモン1985」という、形成外科医のS氏。所有するそのすべてがマニア垂涎のワインだ。最高の味の記憶を求め、その追及に終わりはない。


ワインは人と出会い、人と人の間をつなぐための投資

静かな住宅街の瀟洒な一軒家。その扉の向こうに、これだけのワインが眠っていると、誰が想像するだろうか。セラーのドアを開けると、ラ・ターシュ、ロマネ・サン・ヴィヴァンなどのDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)に、ムートン・ロートシルト、マルゴーなどのボルドー5大シャトー、さらに数十年前の希少な古酒もずらり!

その数なんと2400本という所蔵数を誇るのは、都内でクリニックを経営しているS氏だ。

S氏が今注目するのが、右のガングロフ。「有名な造り手もいるコンドリューのなかでも、花畑のような香りと力強さを併せ持つこれはお薦めです」一番好きなのはDRCラ・ターシュ。「今は価格が高騰してしまいましたが、昔入手したものの飲み頃を見極めて飲んでいます」  

それまでも市販のセラーやワイン用倉庫で保管してきたが、約8年前に自宅を新築したことをきっかけに、セラールームを設置。「もう増やさないはずだったんですが(笑)」と言いながら、気づけば2000本を超えるフランスワインの一大コレクションに。

本数だけではなく、目を見張るのはそのラインナップだ。先に挙げた誰もが知る銘柄はもちろん新進気鋭の造り手まで、これはと思えば幅広く自分の舌で試してみる。今は亡きアンリ・ジャイエ氏が自ら手がけたワイン、さらにヴィンテージも’90年代ならまだ若いほうという、歴史ある古酒も揃っている。  

大きな古い火鉢の中には、これまで飲んだワインのコルクが。

きっかけは社会人1年目。「会食で薦められて飲んだのがドメーヌ・ミシェル・ノエラ ヴォーヌ・ロマネ ボーモン1985。その華やかな香りに衝撃を受けたんです」

それまでも、日本酒なら大吟醸のような香り高いお酒が好きだったが、ワインの香りと味わいに一気に魅了されたS氏。以来、ワインのガイド本を読み漁り、品揃えがすごいと聞けば遠方のワインショップへも足繁く通い、それこそ気になるワインは片っ端から飲んだそうだ。

右:年間数百本飲むS氏だが、感動したものは瓶を手元に残している。「銀座にあった伝説のワインショップ『ミツミ』に探しに行った」というアルマン・ルソーシャンベルタン1989(左)、ブルゴーニュの神様と言われるアンリ・ジャイエのヴォーヌ・ロマネ クロ・パラントゥ1986(中)や「伝説的なヴィンテージだけに、やはり素晴らしかった」というDRCラ・ターシュ1978(右)など、今でもその味がフラッシュバックするという。左:お気に入りワインは、開け時を待つルイ・ロデレール クリスタル1981(右)、「どのヴィンテージでも間違いない」シャトー・ペトリュス1993(中)、そしてブルゴーニュ派のS氏が、ボルドー好きになったきっかけのシャトー・オー・ブリオン(左)。「きっと衝撃的な味のはず」と期待するヴィンテージはなんと1955年!

「知識だけでは意味がない。自分で飲んで味と香りを経験しなければ、自分がどんなワインが好きなのかということにさえ行きつかないと思うんです」

ゆえに手に入れたワインは、コレクターのように眺めているのではなく、基本的に飲むためのもの。ワインの飲み頃を想像しながら、飲むタイミングを常に模索。友人を招いたホームパーティや、外での会食にもワインを持ちこみ、惜しまず抜栓。友人たちとともに最高の味わいと時間を楽しむ。

「ひとりで飲むものではなく、誰かと一緒に楽しく飲めるのがワインの喜び。ワインは人と出会い、人と人の間をつなぐための投資だと思っています」

どちらもロマネ・サン・ヴィヴァンという銘醸畑のワインのエチケット。上はマレイ・モンジュの頃のワインで、下はDRC。実は同じ畑で造られたワインで、後にモンジュからDRCに引き継がれた畑。

自らが人に薦められてワインに開眼したように、今はS氏がその素晴らしさを伝え、友をもてなす。セラーに眠るすべてのワインは、これからもその一期一会の喜びをS氏に与えてくれるに違いない。

Text=牛丸由紀子 Photograph=岡村隆広 ※ワインの価格は編集部調べ。