"串に刺さない焼鳥"に"鶏肉のシャトーブリアン"!?  焼鳥店の進化系『炭火焼処 ひらこ』

東京のグルメシーンを牽引するレストランが集う西麻布に、新たな"刺客"して登場した焼鳥店『炭火焼処 ひらこ』。ここで堪能したいのは。斬新なスタイルとここでしか出合えない希少部位だ。


串打ちしない焼鳥店の"真打ち"

大衆に愛されるソウルフードから、日本を代表するグルメに大飛躍を遂げた焼鳥。2010年版の「ミシュランガイド東京」に焼鳥ジャンルが登場して以来、串物と一品料理を織り交ぜながらコースで提供するスタイルが定着。焼鳥がひとつの料理ジャンルとして成熟期を迎えたいま、焼鳥そのものの美味しさはもちろん、より多くの不可価値を持つ店に人気が集中している。

そのなかでも今年、西麻布にオープンした『炭火焼処 ひらこ』は一般的な焼鳥のイメージをくつがえすプレゼンテーションがユニークと評判だ。

宮崎で養鶏場を営みながら、炭火焼鳥の店を手がけていた高岩誠さんが、東京進出を決めたのは「地鶏の本当の美味しさをもっと知ってもらいたい」という強い思いから。

鶏は通常50日前後で出荷されるのが一般的だが、ここでは高岩さんが飼料にこだわり、ストレスフリーな環境で200日以上にわたり肥育した飛来幸鶏を使用。その味わいをあますことなく楽しませるため、高岩さんはあえて鶏肉を串に打たずに焼き上げる。扱う地鶏も“規格外”なら、串打ちをしない焼鳥、というのも斬新だが「多面体の鶏肉に対し、四方八方から火を入れたほうが美味しく仕上がる」という高岩さんの言葉には、鶏肉の性質を知り尽くした職人としての説得力がある。

20品前後が登場するコースは2種を用意しているが、飛来幸鶏の個性をより深く知るならば、余所ではまずお目にかかれない稀少部位を盛り込んだ1万5000円のコースを選ぶのがおすすめだ。

ひと月ほど熟成させた卵管や鶏皮ポン酢など、少量ずつ繰り出される鶏肉は確かに旨みの凝縮体。大トロと呼ばれる雌鶏のハラミにはたっぷりと山葵をのせて。「噛んでいるうちに少なくとも5回以上は“美味しい”の波がやってくる」と高岩さんが胸を張るモモ肉など、咀嚼するごとにあふれでる旨みのインパクトは圧倒的。

さらに、鶏一羽を丸ごとミンチにし、塩と醤油、味噌などで味つけされたつくね、1羽から2切れしか取れないことから高岩さんが”鶏肉のシャトーブリアン”と名付けたプルミエなど、食べ進めるごとに「地鶏の真の美味しさ」が心に刺さる。バターを一切使わずに卵黄のコクを引き立てるオムレツ、ももと胸肉、鶏の出汁の混じりっ気なしの風味を堪能できる”親子孫丼"など、オリジナリティあふれる逸品も目白押しだ。

お酒とのペアリングの提案も楽しく、タレ焼のもも肉にはまろやかな口当たりの手取川のぬる燗、つくねにはきめ細かな炭酸でつくる紅さんごのハイボールなど、鶏の豊かな風味を引き立てる合わせの技に気分も高まる。

プラスαの楽しみが満載の焼鳥店で、その進化をたっぷりと体感したい。

Sumibiyakidokoro Hirako
TEL:03・5843・1790 
住所:東京都港区西麻布1-5-23 東ビル1F
営業時間:17:00~L.O.23:30
休み:日曜 
席数:10席
料金:飛来幸地鶏お任せコース(約20品)¥10,000、贅の食材と希少部位のおまかせコース(約20品)¥15,000、ペアリングコース¥6,000~(料理はのぞく)


Text=小寺慶子 Photograph=岡本 寿