日本・フランス・ニュージーランド、三位一体で世界を目指す"幻のワイン"とは?

昨年9月、NYの三つ星レストランで世界デビューを果たしたワインがある。 佐藤可士和がブランディングし、フランス人醸造家が手がける、 ニュージーランドのワイン「ワイマラマ」。その正体とはいったい? 


国境を越えて、世界水準のワインをつくる

ニュージーランドから新たに、世界のトップリーグへと挑むワイナリーが名乗りを上げた。その名を「シャトー・ワイマラマ」という。オーナーは日本人実業家の佐藤 茂さん。創立自体は1988年だが、この地を訪れた佐藤オーナーの父が、手つかずのままの大自然と、銘醸ワインを生みだすポテンシャルにいたく感銘。かくして’98年、佐藤家がこのワイナリーを取得した。

ワイマラマが位置するのは北島のホークス・ベイ。ニュージーランドで本格的なブドウ栽培が最初に行われた土地であり、温暖で穏やかな海洋性気候は、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなど、ボルドー系のブドウ品種に適している。

佐藤オーナーの好みがラフィットやマルゴーなど、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とするボルドーの卓越したワインとあっては、このワイナリーへの想い入れもひと際強い。2011年に経営を引き継いだ佐藤オーナーは、早速、リブランディングに取りかかることにした。

このプロジェクトのクリエイティヴ・ディレクターに就任したのが佐藤可士和さん。ブランドコンセプトに始まり、ロゴやラベルのデザイン、ワインのネーミングまで手がけている。ワイン名には「Minagiwa」や「Kiraraka」など、ワインやワイナリーと結びつきのある日本の古語を選びつつ、ラベルにはシンプルな欧文書体を採用。どの国でも受け入れられやすい、ユニバーサルなデザインにまとめられているのが特徴だ。

生産量はわずか1768本、フラッグシップの「SSS 2009」¥50,000(ワイマラマジャパン TEL:03ー6447ー2356)

さらに世界水準のワインを目指すには、まだやるべきことがあると感じていた佐藤オーナーは、ひとりの男とコンタクトを取る。フランス人醸造家のルドヴィッグ・ヴァヌロンさんである。

ポムロールのル・パンやナパ・ヴァレーのハーラン・エステートを一躍有名にしたカリスマ醸造家、ミシェル・ロランと8年間、ともに働いていた人物。現在は独立し、ボルドーの15のシャトーのほか、アルメニアやのワイナリーでも活躍する優秀な醸造コンサルタントだ。

「国や人種の垣根を越えて、ワインを純粋に楽しみたいんです。どの事業でも同じなのですが、各分野で活躍する人たちが結集し、それぞれの能力や経験を生かしてひとつのものをつくり上げることこそ、ビジネスの醍醐味だと思います」と佐藤オーナー。

ニュージーランドの土地、フランス人の醸造家、そして日本人によるブランディングという三位一体のプロジェクト。その成果はすでに、ヴァヌロンさんが初めてすべての工程を手がけた、’16年ヴィンテージのMinagiwaに現れている。果たしてワイマラマはオーパス・ワンやオルネッライアを脅かす存在となるのか? 目の離せないワイナリーの登場である。


Text=柳 忠之 Photograph=SHINME