思い出に刻まれた懐かしい味わい

ビーフシチューにオムライス、グラタン......。今も昔も、誰もが愛してやまないメニュー。幼少の頃、親に連れられ初めて食べたあの懐かしい味。今宵はそんな、ノスタルジックでいて、いつの時代も新しい"洋食"の世界へご案内します。

知っていると一目置かれる秘密の店。こっそり教えます。

ワインカーヴの中で復活を遂げた
伝統と進化が融合する洋食店

老舗の味を継承した看板のない店

 ゲーテ読者のなかには、幼き頃、両親に連れられ、銀座の洋食店で食事をしたという思い出がある人も多いだろう。あの頃の、いや、それにも勝る高揚感を味わえる店が、誕生した。

 銀座洋食の元祖『銀座キャンドル』がビルの建て替えで閉店したのは2014年末。川端康成や三島由紀夫といった多くの著名人が通ったことでも知られる伝説の店が、店名とコンセプトを一新し、再スタートを切った。『銀座キャンドル』時代の主要メンバーによる店の名は『SALON 1950』。ビルの地階の扉を開けると突如、その空間は現れる。

¥10,000のコースの一例/カニみそグラタン。濃厚な味わいに思わず頬が緩む。

 ワインカーヴに囲まれたキッチンの前には最大14名まで着席できる1枚板の大テーブル。1万円のコースが基本で、前菜からデザートまで10品以上の料理を楽しむことができる。名物のチキンバスケットやグラタンはもちろん、ゲストの要望に応じて、臨機応変にメニューを構成するというのも嬉しい限り。

 進化した名店の"今"の姿は、圧倒的な感動を呼ぶだろう。

 ※コースの価格は内容によって変動する場合も。
 ※JCB、ダイナースは使用不可

¥10,000のコースの一例/コースにはアルコールやソフトドリンクも含まれる。『銀座キャンドル』発祥のチキンバスケット。
SALON 1950
TEL:03-3573-5091
住所:東京都中央区銀座6-2-10 合同ビルディングB1
営業時間:18:00~23:00
休み:日曜・祝日

入店を許可された者だけが体感する
北新地に誕生した極上の世界

限られた者にのみ扉を開く店
<大阪/北新地>

 基本、一見さんお断り。要紹介制の洋食店が、今年2月、北新地にデビューを果たした。煉瓦(れんが)窯で焼く高級ステーキで一世を風靡した『北新地 福多亭』の新展開となる期待店。今回、有難いことに「ゲーテで見た」と予約すれば5月末まで、その門戸は開かれる。

 店内はラグジュアリーなシャンパンバーか、ハイエンド・フレンチといった趣で、ウォール街の大物が、シガーをくゆらせていそうな空間だ。

熊本産天然活け車エビフライ(時価)

 料理は21時までは8,500円(全7品)のコースのみ。シェフの田中英彦さんは、かつてフランス人オーナーシェフが率いたレストラン『フィリップ・オブロン』出身。例えばハヤシライスを煮込むのにボルドーの気鋭、シャトー・プピーユをたっぷり使うなど、贅を尽くしたレシピでコースを仕立てる。また、全12席のフロアに対し、3名のソムリエが控えるなど、行き届いたサービスも快適。知っておけば、とっておきの切り札となることは、確実だ。

赤ワインに合うハヤシライス¥1,400/芯の太い旨みが圧巻。クリストフルのスプーンでいただく。
北新地 懐
TEL:06-6341-8866
住所:非公開
営業時間:18:00~L.O.翌2:30
休み:日曜

名店の流れを汲む、勢い溢れる東の雄。

ハヤシライス¥2,000。定番の逸品。

洋食&ワイン目白 旬香亭
<東京/目白>

 3年前、惜しまれながら静岡に移転した洋風小皿懐石の名店『赤坂 旬香亭』が、目白の駅前にて復活。早くも美食家たちの耳目を集めている。

 どちらかといえば、和のニュアンスの強かった赤坂時代に比べ、こちらはグッと王道の洋食にシフト。熟成肉や熊本あか牛など、常時3~4種類が揃うステーキをはじめ、海老フライやハヤシライスなど、おなじみの味が脇を固める。だが、そのテイストはあくまでモダンだ。

ステーキハンバーグ¥2,900(350g)/中心部分をわずかにレアで仕上げる。

 ベーシックなベシャメルソースに白ワインで風味よく仕上げたカニクリームコロッケや、減圧調理器で歯ざわりもみずみずしく整えた生野菜など、さり気ないオリジナリティが光る。なかでもお薦めは牛肉100%でつくる"ステーキハンバーグ"。ダイス状にカットした肉塊を加えたそれは肉感たっぷり。頬張れば、噛み締める旨(うま)さのなか、肉汁が口中に溢(あふ)れ、ステーキをも凌駕するほどのジューシーさだ。

 その他、伊勢海老フライなど、黒板メニューも豊富。新しくも懐かしい洋食をぜひ!

ひとくちカツレツ¥650(1ケ)、カニクリームコロッケ¥900(1ケ)、海老フライ¥650(1本)の盛り合わせ。
洋食&ワイン目白 旬香亭
TEL:03-5927-1606
住所:東京都豊島区目白2-39-1 トラッド目白2F
営業時間:11:00~L.O.14:00/17:00~L.O.22:00(日曜・祝日~L.O.21:30)
休み:無休

銀座 ブラッスリー ドンピエール
<東京/銀座>

ビーフオムライス¥3,000/玉ねぎの替わりに入る4種のキノコもアクセントに。

 銀座で30年の老舗『ブラッスリー ドンピエール』。『銀座ペリニィヨン』の姉妹店として本格フレンチを気軽に味わえると評判だった同店が、2014年3月にリニューアル。系列店『京橋ドンピエール』の料理長だった荒木正輝さんを総料理長に迎え、洋食メニューを充実させた。

「フレンチの手法をベースとした洋食を目指します」との言葉どおり、例えば、カレーやベシャメルソースのルウの作り方やフォンの摂(と)り方ひとつにも、さり気ない工夫が加えられている。

左:コンソメ¥2,000。黄金色に輝き、奥深い味わい/右:ホワイトカレー¥1,500。フュメドポワソンをベースに仕上げたランチのひと品。

 3日がかりで仕上げる香り豊かなコンソメの澄んだコクにも、その技術の神髄がうかがえる。また、京橋時代から人気のオムライスも健在。ケチャップ味のチキンオムライスもいいが、ここならではの味といえば、やはりビーフオムライスだろう。醤油味のご飯の中に見え隠れするのは、食べやすくサイコロ状にカットしたA5和牛のサーロイン。芳醇な醤油の香りとしっかりとした肉の味わいは、和と洋が融合したステーキオムライスと呼ぶにふさわしい逸品だ。

カジュアルな店内で一流の味を。
銀座 ブラッスリー ドンピエール
TEL:03-3567-1855
住所:東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビルヂング1F
営業時間:11:30~L.O.14:00/17:30~L.O.21:00
休み:月曜

ノスタルジーな空気感で美味を運ぶ西の旬店

カツハヤシ¥1,278/マスタードと好相性。

プチ グリル マルヨシ
<大阪/天王寺>

 本店の『グリル マルヨシ』は1946年創業。2015年で70年目を迎える、関西洋食の重鎮店のひとつである。そのレジェンドが2014年、天王寺駅のターミナルビルに、ややカジュアルな2号店を出店した。まばゆく磨き抜かれた厨房を指揮するのは四代目となる渡辺誠さん。

「とにかく昔ながらの仕事を大切に守って。デミだけでなく、マヨネーズまで手作り。野菜も昔の栽培法というか、農薬を使っていない野菜を選んでいます。無農薬の野菜だと、デミソースの"旨みののり"が違いますね。

左:シナモンコロッケ¥908/デミとカレーの2種のソースで。衣の密度と弾力も見事。右:ロールキャベツ¥1,482/何層にも重なるキャベツの素朴な甘みがジュワッと広がる。

 その重厚なコシのあるデミグラスソースでいただく、看板料理のロールキャベツ以外に、ユニークなオリジナルが多いのも同店ならでは。なかでも、ジャガイモを用いずにビーフシチューの端肉を使い、シナモンをしっかり利かせた自家製シナモンコロッケは、これを目当てに天王寺へ足を運ぶ価値のある名品だ。

 駅ビル直結という好アクセスで、若い世代にもファンを増やしている。老舗の未来はますます盤石の様相だ。

左:創業家の四代目となる料理長の渡辺誠さん/「洋食とは、白いご飯に合う西洋料理のことですね」。右:フロアはカジュアルな雰囲気。
プチ グリル マルヨシ
TEL:06-6773-2168
住所:大阪府大阪市天王寺区悲田院町10-48 天王寺ミオプラザ館4F
営業時間:11:00~L.O.22:00
休み:無休

Text=小寺慶子、森脇慶子、粂 真美子、寺下光彦 Photograph=上田佳代子、富澤 元、福森クニヒロ

*本記事の内容は15年3月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)