ZOZOTOWN 前澤友作がフランス芸術文化勲章オフィシエを受章。現代アートへの情熱を語る

スタートトゥデイ代表取締役社長・前澤友作氏にフランス芸術文化勲章オフィシエが授与される。このニュースは驚きをもって日本中を駆け巡った。前澤氏といえば、123億円という米国作家の作品としては競売史上最高額でバスキアの絵画を落札したことでも話題をさらった、日本を代表するアートコレクター。その前澤氏が、今度は、フランス共和国から文化芸術への貢献を称えられたのである。「ゲーテ」編集部は、去る3月6日にパリで開催された叙勲式への参加を許された。世界に認められた日本人が新たに誕生した瞬間、その記録をお届けする。

現代アートの歴史に名を刻む日本人。その存在感をパリで知らしめる

左から文化勲章シュヴァリエを受勲したギャラリストのパトリック・セガン氏、文化勲章オフィシエを受勲した前澤友作氏、プレゼンターを務めた元文化大臣ジャック・ラング氏。

式典の会場となったのは、パリ・マレ地区にある、旧貴族の邸宅を改装したというピカソ美術館。叙勲式に相応しい風格ある空間に、タキシードに身を包んだ前澤氏が現れると、場の空気が一瞬にして華やいだ。ゲストたちの間を通るたびに求められる握手と賛辞の往来に丁寧に答えながら、前澤氏は式の舞台であるエントランスホールへと歩を進めていく。

19時15分、元文化大臣のジャック・ラング氏によるプレゼンテーションで叙勲式が開幕した。前澤氏に授与されたのは、3つの等級の2番目に位置する「 オフィシエ(Officier)」の称号だ。今回の受勲は、前澤氏が2016年に駐日フランス大使公邸で開催した展覧会「the CONSTRUCTOR ジャン・プルーヴェ:組立と解体のデザイン」での功績を認められてのこと。

ジャン・プルーヴェは、建築家・デザイナーとして後世に影響を与えた人物であるが、過去日本ではその作品に触れた展覧会はあまり実施されてこなかった。前澤氏が会長を務める「現代芸術振興財団」が手がけた当展覧会は、国内最大級のものであり、前澤氏自身のコレクションを中心に、日本初公開となったプレハブ建築《F 8x8 BCC 組立住宅》や家具、建築部材、設計図など約80点で構成。プルーヴェの芸術や世界観に直接触れられる貴重な機会として、大いに話題を集めた。

こういった前澤氏の活動が、芸術文化の普及に傑出した功績を残したとして、フランス政府に評価されたのである。

バスキアの絵画の落札やアートミュージアムの計画など、前澤氏による現代アートへの取り組みを紹介するラング氏。

受章の経緯や功績を紹介したラング氏が、前澤氏の左胸にその証である勲章を授けると、両者は固くハグを交わした。そして前澤氏によるスピーチ。まずは英語で「フランス語での挨拶は初めてです。準備はいい!?」と笑いのジャブを打つと、2日ほどで習得(!)したという淀みないフランス語で語り始めた。

「今回、このような素晴らしい勲章をいただき、身にあまる光栄です。アートは、その人が誰で何であるかとは関係なく、人と人を繋いでくれます。人を笑顔にし、人に生きる力や考えるきっかけを与えてくれます。

たくさんの人に芸術が広まれば、人が人を憎んだり、傷つけることも、もっと少なくなるでしょう。アートの振興とはつまり、世界を平和にするための活動だともいえるのではないでしょうか。僕はこれからもアートを愛する一人の熱心なファンとして、そしてその素晴らしさを世界中の皆様にお伝えする紹介者として、引き続きアートに深く関わらせていただきたいと思います。

最後に、僕にフランスのアートの奥深さを教えてくれたパトリック・セガン氏に、感謝の意を表したいと思います。彼は私の理解者であり、芸術文化への情熱を共有する同志であり、かけがえのない友人です。ありがとう」

芸術文化勲章は「騎士」を意味するシュヴァリエ、「将校」を意味するオフィシエ、「騎士団長」を意味するコマンドゥールの3等級で構成。過去には安藤忠雄、川端康成、北野武、 草間彌生、坂本龍一、山本耀司など、そうそうたるメンバーが受章している。

前澤氏のスピ—チにあったパトリック・セガン氏は、ジャン・プルーヴェを発掘し、前出の展覧会にも協力したフレンチ・デザインの世界的ギャラリスト。今回、セガン氏にも文化勲章シュヴァリエが授与されている。セガン氏はスピーチで前澤氏を“ブラザー”と呼び、「熱心な視線と正確に見極める目をもつあなたは、アート、現代アート、デザイン、建築、そしてフランスの恋人であり、素晴らしい大使になってくれた」と称えた。式の最後にはジャン・プルーヴェの娘、カトリーヌ氏もサプライズで登壇。叙勲式は終始あたたかい雰囲気で幕を閉じた。

「まだ夢の中にいるようです。パトリックが泣いているのは初めて見たし(※)、自分も泣きそうになりました。(そういう姿や国内外から駆けつけてくれた人の姿を通して)すごいことなんだなと思いますし、実感が湧いてきているところです」
※感極まったセガン氏がスピーチ途中で中座するシーンがあった

式典直後、前澤氏の口から語られた感想は驚くほど飾らないものだった。一方でそれは、この勲章が、前澤氏が今後も築いていくであろう現代アートの新しい歴史の栄えある通過点であり、布石であることを物語っているようにも思う。

式典後の晩餐会での前澤氏とセガン氏の様子。

雑誌「ゲーテ」では、前澤氏が水先案内人を務める、著名アーティストのアトリエを訪ねる「現代アート、聖地巡礼」を連載しているが、その初回に寄せられた言葉には純粋かつ熱烈な前澤氏のアートへの情熱がほとばしっていた。

芸術の国フランスの歴史に名を刻む。その貴重な瞬間に居合わせたことに感謝しつつ、最後にその言葉を紹介したい。

「この場を借りて言わせてもらおう。123億円の買い物は大正解だった。この5月にサザビーズオークションで落札したバスキアのこと。あんないたずら書きみたいなアートにそんな価値はないとか、123億円もあったらもっと他の使い道あるのにとか、好き勝手に言う人たちはいっぱいだけど、僕は断言する。『あれは本当に良い買い物だった』。自分の眼と感覚を信じて、誰に何を言われようが、好きなものに大きな投資をする。これはビジネスにも通ずる。勝負なくして結果なし。さすがに絵画1枚に123億円は痺れたけど、人生痺れてなんぼ。現代アート、もうやめられない。」(2017年11月24日発売 ゲーテ1月号より)

Yusaku Maezawa
1975年千葉県生まれ。「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ代表取締役社長。2012年に現代アートの普及活動、若手支援を目的とした「現代芸術振興財団」を設立。日本を代表するアートコレクターとしても注目を集める。

Text=ゲーテWEB編集部 Photograph=Kenji Eda