【絶景オフィス】東京タワーの骨格の美しさを再認識するChatWorkのオフィス

魅力的な人材を確保するために、また生産性を高めるためにオフィス環境を整えることが、当たり前になっている。この時流の先を行くのが「絶景」のあるオフィスではないだろうか。シリーズ企画「絶景オフィス」では、勢いのある企業が持つ珠玉の「絶景」を取り上げるとともに、その効果を探っていく。


窓の外には圧倒的な存在感を放つ東京タワー

港区芝公園。東京のシンボル・東京タワーがそびえ立ち、その東側には公園の緑が広がっている。都営大江戸線・赤羽橋駅から東京タワーに向かって歩くこと約10分、目当てのオフィスに到着した。ビジネス向けのチャットサービス「チャットワーク」を手掛けるChatWorkのオフィスだ。「チャットワーク」は、2011年にリリースされ、’18年3月末日時点で17万社を超える企業に導入されている。

ロビーに通されると、窓の外の景観に圧倒された。東京タワーが迫ってきたのだ。都内の高層ビルから眺める東京タワーとは違う、麓から見上げるアングル。存在感に圧倒されるとともに、骨格の美しさに改めて気付かされる。

「東京タワーの赤い骨格には、テンションを高めてくれる魅力があると感じています。前のオフィスからは、東京スカイツリーが見えましたが、日々の中で風景の一部になっていました。現オフィスのこの景観は、飽きることがありません」と語るのは、オフィスデザインプロジェクトで指揮を執った新免孝紀氏。この無二の景観こそが、この場所への移転を決断した理由だったという。

オフィスデザインプロジェクトで指揮を執った新免孝紀氏。 シアタールームにあるChatWorkのロゴが入った卓球台はテーブルにもなる。

ChatWorkは、ビルの7階と5階に入っていて、7階は来客用のエントランスとロビー、会議室、シアタールーム。5階は執務スペース、カフェスペース、会議室となっている。東京タワーの骨格の絶景だけでなく、各スペースにはさまざまなこだわりがある。どのようなコンセプトで、このオフィスはつくられたのだろうか。

「セールスチームが立ち上がったこともあり、前オフィスが手狭になり移転を決めました。また、システム開発の現場は静かなため、セールスの社員が自席でライブミーティングをするときに気を遣ってしまう状況もあるなど、職種が増えたことによる仕事のやりにくさも生じていました。そこで、どのようなオフィスにするか、オフィスのデザインを進めるうえで、まず全社員にオフィスについてヒアリング。『会議室が少ない』『リフレッシュするスペースがない』という課題が浮き彫りになりました。また、当社のビジョンは“世界の働き方を変える”であり、自社でも率先して実行してきました。例えば、創業当時から固定電話を置かない、ペーパーレス、チャットでのコミュニケーションといった働き方です。今後も自分たちの働き方を変えていかなくてはなりません。そこで、オフィスデザインのコンセプトとして『働き方をアップデートできるオフィス』を掲げました」

実際に働き方をアップデートできる仕組みが、このオフィスには詰まっている。執務スペースのデスクにはタイヤが付いていて、人数の増加や業務の変化に応じて柔軟にレイアウトを変えられるようになっている。『会議室が少ない』という課題を抱えていながら、シアタールームという余分にみえるスペースをつくったのも、働き方をアップデートできる効果を狙ってのことだ。

「単純に課題を解決するなら、会議室を増やすという方法もありました。しかし、会議室は、使われないと何の生産性もないただの空間になってしまいます。それは避けたかった……。シアタールームにすることで、会議はもちろん、社内外のエンジニアや『チャットワーク』のユーザーを呼んでの勉強会、社員同士の親交を深めるイベントなど、さまざまな使い方ができます。シアタールームには、社員それぞれが用途を見つけて、働き方をアップデートさせていくことができる機能があるのです」

「リフレッシュするスペースがない」という課題には、5階に自由に使えるスペースを設けることで解決した。ただのカフェスペースではない。夜になると仕事上がりの社員がカウンターに集まって軽く飲むこともある。

5階のカフェスペース。昼はカフェ、夜はバーになる。窓の外には緑が一面に広がる。

「このスペースには、こだわりが二つあります。一つは、東京タワーが目の前に広がる窓際のカウンター席に、さまざまなデザイナーズチェアを配置したことです。チェアは一つ一つ座り心地が異なります。会社内に自分の好きな居場所を見つけてほしい、固定のデスクから離れてお気に入りの場所で集中して仕事してもらいたいという考えがあります。もう一つは、コミュニケーションが生まれやすい環境にするということ。日中はカフェスペース、夜はバースペースとすることで、人が気軽に集まるようになりました。お店を予約しないでいいので、同僚や先輩と飲みながら会話する機会が増えました。社内ですので、外では話せない仕事の相談もでき、それが仕事にも良い影響をもたらしています」

ここまでは、オフィスデザインの意図通りだが、それ以上の効果も出ている。一つは、外部に注目してもらいやすくなったこと。もう一つは、「チャットワーク」のユーザービリティーの向上への寄与だ。

「当社は、ユーザーの声を取り入れることで成長してきました。カフェスペースでは、セールスとエンジニアが話している光景を頻繁に目にします。会議などで、セールスが拾ってきたユーザーの声を集める方法もありますが、会議を設定するには予定を合わせなければならず、その分、対応が遅くなります。また、会議だとユーザーの明確な要望しか挙がってきませんが、立ち話の場合、ささいな声も拾うことができます。そのささいな声の中に、本質的な改善点があったりするものです」

働き方をアップデートできるオフィスは、まだ完成ではない。働く社員や業務の変化、社員発案の働き方・働きやすさの改善につながるユニークな制度の実現によって、人も、空間もアップデートされていく。東京タワーの骨組みを見上げる景観は、ただの「絶景」ではなく、日々の仕事にイマジネーションを与える存在だった。

働き方をアップデートさせるオフィス空間

Text=MGT Photograph=松川智一