潔く自らの失敗を認められる、孫 正義という経営者の強み~ビジネスパーソンの言語学96

トップリーダーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。96回目、いざ開講!

「私がばかでした。私が失敗しました」ーーー過去最大の赤字幅となる決算を発表したソフトバンクグループの孫 正義会長兼社長

コロナショックで世界的に株価が下落、投資事業で莫大な損失を計上したソフトバンクグループ。純損益は9165億円の赤字。前年の1兆4111億円の黒字から過去最大の赤字幅を記録した。シェアオフィス事業の「WeWork」への投資失敗など、すでに大幅な損失になることは発表していたが、コロナショックが下落に拍車をかける形となった。並の大手企業ならとっくに吹き飛んでしまいそうなこの莫大な赤字。投資先である88社のうち、15社は「倒産するんじゃないか」と厳しい現状を見据えつつ、それでもまだ過去の危機と比べ「崖からは落ちていない」状態だと孫 正義会長兼社長語る。

「ネットバブルの崩壊直後は、本当に倒産するかぎりぎりで、崖っぷちから体が落ちそうなのを指2本くらいで支えていた。リーマンは腕1本で支えた感じ。今は世界的危機だが、確実に資金調達や資産の現金化ができる。余裕で崖の下をのぞいている状況じゃないか」

「ネットバブルがはじけたときも、リーマンのときも、ボロボロになった。でも、乗り越えてネット業界は羽ばたいた。今回のファンドの投資先も、コロナの谷を越えたあと、大きく成長する会社が15社はある」

これだけの赤字を抱えてもまだどこか余裕を感じさせる。もちろん内部留保など、まだ資金的にも焦る段階ではないということだろうが、それを単なる強がりだと思わせないところに孫 正義という経営者の強さがある。その強さの理由を感じたのが、WeWorkについての質問が飛んだときだった。

「WeWorkで投資の失敗をしたのは公に認めている。私がばかでした。私が失敗しました。私が見損ないました」

自らの失敗を認め、ばかだと言い切れる。そういう経営者は多くはない。失敗を覆い隠すためにさらなる失敗を重ね、その責任は部下や他者に押しつける。そんな経営者をどれほど見てきただろうか。恐らくこのコロナショックのあとは、自らの経営責任をすべてコロナに押しつける経営者がたくさん出てくることは予想に難くない。だが、孫 正義はそれをしない。過ちを認め、素直に反省する。だからこそ彼は未来に向かえるし、マーケットも極端に不安視することなく、彼の動静を見守ることができるのではないだろうか。

この国には長く無謬主義がはびこりすぎた。政治家も官僚も経営者も決して自らの間違いを認めようとしない。しかし時代は変わった。移り変わりのスピードは速く、情報は瞬間的に世界を駆け巡る。朝令暮改も辞さず、ごまかしもせず、そして判断を間違ったときは頭を下げることができる。そういうリーダーがこれからの時代には必要だし、そういうリーダーをみんな信用するのではないだろうか。


Text=星野三千雄