サッカー日本代表監督ハリルホジッチ 世界で戦うためのマネジメントの極意。日本人の優しすぎるメンタリティーが問題だ!

銀座に現れたサッカー日本代表監督のハリルホジッチは、クールでそしてダンディーな男だった。選手として、監督として、世界を渡り歩き、世界と戦ってきた彼が同じように世界を相手にしてきた旧知の株式会社アクセレール代表取締役社長である松嶋シェフに、日本代表の"今"を語った。

日本人は常によく働くし、練習も熱心。
でも、勝利への執着心が足りない

 決戦の時は、近づいている。現在、ワールドカップアジア最終予選を戦っているサッカー日本代表。予選突破に向けギリギリの戦いが続いている。しかしチームを指揮するヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、とても冷静だった。サッカーを愛し、サッカー界に友人が多い松嶋啓介シェフが、世界と戦うためのハリルホジッチ流マネジメント術に迫った──。

松嶋 私は日本とフランスでレストランを経営していますが、両国でのスタッフに対するマネジメントは、まるで異なります。監督も同じような苦労をしているんじゃないですか?

ハリル 私はこれまでフランスやアルジェリア、コートジボワールなどで監督をしてきたけど、どこに行っても大切なのは、まずその国の文化、習慣、精神性を理解すること。全世界に共通するマネジメントは存在しない。日本に来る前に、カルロス・ゴーンの本を読んだけど、同じことが書いてあったね。

松嶋 日本代表をマネジメントするうえで、意識しているのはどんなことですか?

ハリル 勝つためのメンタリティーを植えつけることです。日本の文化では年長者を敬い、彼らに従う。でもそれはサッカーには必要ないこと。トラブルがあったらすぐに「すみません」と謝ることもサッカーのフィールドでは不要。そういった細かいことをひとつひとつ変えるところから始めているんだ。

「進化のために、殻を破って
新しい場所へ飛び出していかなければならない」


松嶋 料理の世界でも技術を教えることより、メンタリティーを変えることのほうが難しい。

ハリル 日本人はよく働くし、練習も熱心。でも勝利への執着心が足りない。世界の舞台では、みんな反則ギリギリのずる賢い戦いをしてくる。メッシもC・ロナウドも上手いだけでなく、勝利に対して常にアグレッシブ。日本人にはそれが足りない。フィールドで優しく礼儀正しくしていても勝利は摑めないんだ。

松嶋 海外でプレーしている選手はどうですか?

ハリル 海外でプレーしても日本人のメンタリティーはなかなか変わらない。強い意志で殻を破るような選手がいないんだ。

松嶋 若い選手、例えば19歳でスイスに渡った久保裕也選手などは、違うメンタリティーを持っている気がします。

ハリル 確かに彼は他の選手とは少し違う。でも彼ひとりでは意味がない。チーム全員が同じ目標に向かって、同じ強い気持ちを持たなければ、世界で戦うのは難しい。日本代表は、まだその進化の過程。もう少し時間が必要かもしれない。

松嶋 日本を変えるため、選手の気持ちをひとつにするためにやっていることはありますか?

「技術を教えることより、メンタリティーを変えることのほうが難しい」

ハリル ひとりずつにメッセージを渡したり、壁をなくすために冗談を言って話しかけてみたりしている。私自身を知ってもらうと同時に、彼らの人間性を引き出したいと思っているんだ。最終的に強いチームワークを生み出すには、人間性の理解も大切だからね。

松嶋 選手たちは、そんな監督の気持ちを理解していますか?

ハリル それは私ではなく彼らに聞いてほしいね(笑)。日本人は本当に繊細だから、いろいろな方法でコミュニケーションするようにしているよ。

松嶋 日本は、ロシアでどのくらいの成績が目標になりますか?ベスト4?優勝?

ハリル 今のレベルで優勝を語るのは、ファンタジーにしかすぎない。勝つことを望んでいるし、そのための努力もする。もちろん1試合だけ強豪国に勝つ可能性はゼロではない。でも、それよりも大切なのは、30年、40年かけて強豪国と同じレベルに到達すること。そのために今はとにかく進化が必要なんだ。殻を破って新しい場所へと飛び出していかなければならないと思っているよ。

松嶋 ぜひ選手たちのハートに火をつけて、世界で勝てるチームに進化させてください。

ハリル もちろんそのつもりだよ。それが私の仕事だからね。

【関連記事1】

【関連記事2】

対談場所
ダンヒル銀座本店 THE AQUARIUM
TEL:03-3562-1680
住所:東京都中央区銀座2-6-7 2階(バー)・3階(ラウンジ)
営業時間:11:00~24:00(日曜・祝日~22:00)
休み:無休
Keisuke Matsushima
1977年福岡県出身。20歳で渡仏し、25歳でニースに「Kei's Passion」(現「KEISUKE MATSUSHIMA」)を開店。ミシュラン1つ星を獲得。2009年、東京にもレストランをオープンした。ハリル監督とは旧知の間柄。この対談もフランス語で行われた。
ジャケット¥209,000、シャツ¥31,000、タイ¥18,000、タイバー¥25,000、チーフ¥12,000(すべてダンヒル TEL:03-4335-1755)

Vahid Halilhodžić
1952年ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身。パリ・サンジェルマンFCなどでFWとして活躍。多くのクラブチームや、アルジェリア、コートジボワールの代表チームの監督を経て、2015年日本の代表監督に就任した。
スーツ¥265,000~、シャツ¥42,000~[ともにカスタムテーラーリングサービス]、サッカー日本代表2017オフィシャルモデルのタイ¥18,000、タイバー¥25,000、チーフ¥12,000(すべてダンヒル TEL:03-4335-1755)


Text=川上康介 Photograph=川口賢典

*本記事の内容は17年7月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)