「便利」「多様性」ではない! 人を動かすキーワードとは?【UUUM鎌田社長×城彰二③】

いまや、子どもたちの将来の夢ランキングで必ず上位に入るのが、ユーチューバー。数年前までなら、「何それ?」と言われたものだが、もうすっかり職業名として市民権を得ている。2013年、動画クリエイターをマネジメントする会社、UUUM(ウーム)を立ち上げ、現在、時価総額900億円を超える企業へと成長させたのが、社長の鎌田和樹氏だ。じつは鎌田氏、ゴルフが大好きで、UUUM GOLFというYouTubeチャンネルを立ち上げているほど。何より、「わずか5時間ほどで、相手の人となりがわかるところが素晴らしい」という。そこで今回、「ゲーテWEB」がオファーしたのが、実際にラウンドしながらの対談連載。記念すべき1人目のゲストとして、日本代表のエースストライカーとして大活躍した、元サッカー選手の城彰二氏をお招きした。最終回の第3回目は、2人が次世代へと贈るメッセージをお届けする。【UUUM社長・鎌田和樹×城彰二のゴルフスペシャル対談③】


「多様性もいいが、ときに一点集中することも必要」(鎌田氏)

――城氏は社会人サッカーチーム、北海道十勝スカイアースの統括ゼネラルマネージャーとして、鎌田氏はUUUMの社長として、多くの若者たちと日々、接している。そこではやはり、世代間ギャップのようなビックリしてしまうことも、よくあるのだそうだ。

鎌田和樹氏(以下、鎌田):いまの若い子たちは、本当にお酒を飲まないんですよね。昔は、飲んで、上司にお酒を注ぐのが仕事みたいなところがありました。僕も、以前勤めていた会社は、飲めなければ仕事にならないというところでした。古き良き時代と言いますか。でも、それは案外、まったく意味のないことでもないと、僕は思っているんです。いま、若い子に、「どうしているの? 夜?」と聞いたら、「何もしてないです」と。将来が心配になります。

城彰二氏(以下、城):サッカーも一緒ですね。選手に、「ご飯、連れていってください」と言われたので、「わかった。今度ね」と言って、後日、電話をしたんです。「今日は何やっているの?」と聞いたら、「今日は何もないです」と言うから、「じゃ、ご飯行こうか」と言ったら、「いや、いいです」と返ってきて。「えっ?」となりますよね(笑)。「何かあるの?」と聞いたら、「今日はゲームをやるので」と。そういう感じなんです。驚きますよ。昔だったら、用事があったとしても、「はいっ」と。いまの子たちは、「何もないんですけど、行かない、行きたくない」と言います。そうなると、もう誘っちゃいけないのかなと思ってしまいますよね。

鎌田:会社で飲み会だと言っても、「これは強制ですか?」とか、聞かれたりします。社員旅行も、会社で費用を出すのに、「行かないです」と。「えっ?」ですよ(笑)。休んで家族サービスをするといったことも、わからなくはありません。でも、みんなで集まって、同じ釜の飯を食うから、仲良くなれて、仕事にもいい面が出てくるんじゃないかなと……思っていますけど、言わないようにしています(笑)。やっぱり、古いと思われるので。

城:おもしろいですね。鎌田さんは、まだお若いし、しかも最先端の会社の社長なのに、古風といいますか。

鎌田:上場している経営者は、意外と泥臭いんじゃないでしょうか。でも、そこにいる社員はドライだったりすることが多いのではないかなと。時代がけっこう難しいということですかね。多様性っていい言葉だと思うんです。ただ、ときに一点集中することも必要じゃないかと思うんですよね。たとえば、昔はテレビでも、誰もが同じ番組を見て、視聴率何十%とかいったことがありましたが、いまは違う番組もあって、ネットもあってという状況で、そんなことはなかなか起こりません。僕は、理屈は通らないかもしれないけれど、伝えなければいけないことはあると思っています。たとえるなら、絶対に先輩がご飯を奢るとかいったことですね。僕も、後輩のほうがお金を持っていても、先輩がご飯を奢るんだと教えてもらいましたし。でも、いまの子たちに、ビールのラベルの向きを上にして注げとか伝えようとしても、そもそも飲みませんから、教えられません。相当、いまの若い世代の人たちと接するのは、難しいと感じています。

「一つのことを武器にして一生懸命やることが、人を感動させる」(城氏)

――鎌田氏は、「多様性」と同時に、現代を表すものとして、「便利」という単語も挙げていた。言い換えれば、世の中の物事や人間の言動が、どんどん効率的でスマートになってきているということだろう。でも、本当にその方向に進むだけでいいのだろうか。

城:なんでもかんでも整備されて、なんでもかんでもルールで、とやっていると、人間はあまり育たないんじゃないかなと、僕は思っているんです。もちろんルールだからいいのかもしれませんが、でも、そういうのは人を動かす力にならないんじゃないかなという気がして。常識外れのことをやれ、というわけではないですが、でも、そういうときがあったからこそ、いま笑って話せるみたいなこともあるんじゃないですかね。

鎌田:会社も、ルールがどんどん整備されていくので、もちろん、「無限に働け」なんてとても言えませんし、残業時間も管理しなければいけません。でも、一方で僕は、若いときというのは、負荷をかけるしかないというか、それが特権でもあると思うんです。とことん時間を使えるのは、若いときだからこそだと。

城:たしかにそうですね。それに、なんだか人間味が少なくなってきている気もします。前に鎌田さんが、「仕事のできる、できないはテクニックじゃない」というお話をされましたが、僕たちのような昔のサッカー選手は下手くそで、技術もなかったですけど、一方で一生懸命でした。それに対して、いまの選手たちは技術があるし、本当にうまいんですよね。でも、どちらがより感動を与えられていたかといったら、僕たちだってそんなに負けてはいないと思うんですよ。とにかく、一つのことを武器にして、一生懸命やる。それが、人を感動させたりすることもできるのかなと。選手たちともよく話をするのですが、もちろん、いまの選手たちの言い分もありますし、「そう言われますけど、いまの時代は……」と言う選手もいますけど。

鎌田:いま、UUUMの若手社員は僕のことを神か何かだと思っているの? と思うことがあります(笑)。「鎌田さん、ファーストフード食べるんですか」みたいなことを言ってくるわけです。「いや、食べるよ」「牛丼チェーンとか行くんですか?」「いや、お前たちより絶対行っているよ」と。前にも言いましたが、15万円の家賃の事務所を借りるのも苦労していたような、昔の僕たちを知らずに、六本木ヒルズにある上場企業の今どきの会社と思って入ってきているわけです。それで、会社では毎週月曜日に朝会をやっているのですが、そういった社員が言うんです。「UUUMに入らせてもらった理由は、安定を求めたからです」といったようなことを。僕ら経営者は、「入る会社を間違っているな」と言っているんです。

城:会社が大きくなると、そういう思いのズレも出てくるんですね。

鎌田:やっぱり、組織がピラミッドになっていって、伝言ゲームになってしまいますからね。致し方ないといえば、致し方ないんですけど。でも、だからといって昔に戻りたいかといえば、いまの規模だからできることもありますし、「ないものねだりだね」と言うんですけどね。

城:時代も時代ですし、それに合わせながらも完成させなければいけないわけですよね。サッカー界も、昔の古い人たちが頭ごなしに言いながら、いまではそれが通用しないから、葛藤しています、みんな。「いや、違うんだよ、違うんだよ」と言いながら。でも、僕はたぶん、時代には波があると思っているんです。ファッションもそうですし、また昔と同じブームが来たりしますから。僕はそれが、人間のなかにもあると思っていて、どこかで「悔しい」とか「根性」とか、忘れかけてきたものがもう一回来るんじゃないかなという気がするんです。いや、来てほしいです。期待をしています。スポーツの世界、サッカーはとくに、いわば戦争ですから。海外に行って、前の人を倒すか倒さないか。そのときにそういう気持ちを持っていないと戦えませんから。

鎌田:ビジネスでいうと、2008年にリーマンショックがありましたが、じつはそれ以降、なんだかんだいって景気がとてもいいんですよ。ずっと。そんななかで、いまの若い子たちは本当に就職ができなかった苦しい時代などを知りません。でも、きっとどこかで景気の踊り場のようなものが来ると思っているんです。好景気は10年も続かないと言われているなかで、もう10年続いていますから。そのときに彼らが、"食いしばって、頑張れるかどうか"だと思うんですよね。

終わり

Shoji Jo
1975年北海道室蘭市生まれ。元サッカー日本代表。‘98年フランスW杯メンバー。2006年、現役引退。’17年、現・北海道十勝スカイアースのスーパーバイザーに就任。’19年、北海道十勝スカイアースの統括ゼネラル・マネージャーに就任。


Kazuki Kamada
1983年東京都生まれ。19歳で大手通信会社入社。多岐にわたる分野で実績をあげ、2011年よりイー・モバイル一次代理店の責任者を務める。その後、HIKAKINとの出会いを経て、2013年、UUUMを立ち上げる。


Text=柴トシユキ Photograph=鈴木規仁

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