【大谷翔平から見る実践的行動学⑫】大谷が不振を気にしない理由

幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けているメジャーリーガー・大谷翔平。彼がアメリカ全土でも絶大なる人気を誇る理由は、その実力だけが要因ではない。ビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。    

「徐々に良くなっていくっていうパターン」  

「打者・大谷」がオープン戦で結果を残せていない。3月11日(日本時間12日)時点で9試合に出場し19打数2安打(打率.118)、2打点、本塁打なし。本来の力を発揮していないのは明らかで、筆者を含めたメディアやファンの方々が心配になるのも無理はない。

ただ、大谷本人はどこ吹く風の様子だ。2月末にオープン戦の状態について聞いた時、大谷は「日本の時からそうですけど、春先は例年良くない。いつもその中で徐々に良くなっていくっていうパターンかなと思う」と冷静に分析し、一方で「そういう心持ちでいるのは良くないので、一日でも早くしっかり打てるように。その結果ぎりぎりになるのはOKですけど、そういう気持ちでやりたいなと思っています」と話している。不振を気にしていないわけではないが、オープン戦は公式戦ではないから結果を求める場ではない。シーズンで最も力が発揮できるように準備を整えているだけなのだ。

メジャー3年目。チーム内で地位を確立したことによる心の余裕もあるかもしれない。大谷は1年目もオープン打率.125と不振のまま開幕に臨んだが、その時とは状況が違う。前述とは別の日に大谷は「キャンプの期間は一日、一日変化しやすいと思うので、良かった、悪かったの繰り返しになる。それを少なくできるようにシーズンに向けてやらないといけない。どういう感じで打たなきゃいけないのか、毎日、毎日確認してやりたいなと思っています」とも話している。目先の結果にとらわれていないのがよく分かる。日本時代を含めプロ8年目を迎え、ますます自分を客観的に見えている印象を受ける。

メジャー1年目の開幕直前。筆者がある米メディアの記者に「大谷は投手と打者、どっちが凄いと思う?」と聞かれ、「打者の方が凄いと思う」と答えたら、ひどく驚かれたことがある。米国ではそれほど「投手・大谷」の評価が高いのだが、やはり個人的には「打者・大谷」が好きだ。メジャートップクラスの打球飛距離に加え、バットコントロールに優れ、打率もしっかり残せる。類いまれな走力、走塁センスもあり、何より打席での立ち姿がかっこいい。

2020年。2年ぶりの投手復活が注目されるが、打撃にももちろんスポットライトを当てたい。ここ2年を上回る数字を残すのではないかと期待しているし、現在の不振はそのための準備期間だと捉えている。

Text=柳原直之