【シリーズ秘書】金融業界の雄・大和証券。中田社長の脇を固める世界水準の秘書とは?

期待された以上の役割をもこなす裏で、日夜スキルアップも 怠らない。それが進化した最強秘書たるゆえんなのだ。 大群を率いるボスに追随する、右腕たちの仕事を紹介する。


チーム中田は一心同体

働き方改革が叫ばれる以前から、19時前退社や女性・シニア世代が働きやすい制度の構築といった改革を推し進めている企業が、大和証券だ。「クオリティNo.1の実現」を目指す巨大グループのトップである中田誠司社長は、2017年4月に就任。社長にとっての秘書の役割をこう語る。「社長の仕事を一緒にしていく、まさに『チーム』。一心同体と言っても過言ではない。とても重要な役割です」。

就任間もない時期、夫人を伴ったイベントの後、ふたりの秘書と4人で食事をしたという。

「家内も含めて、チーム中田だと思っています。みんなどうぞよろしく、とお願いしました」

そんな中田社長を支える秘書が、中川智香さん、半田晋さん。5年間、個人営業を担当していたが、2014年に秘書室に異動したのが中川さんだ。「ずっと営業の仕事をしていくだろうと思っていましたし、秘書の仕事に関わるなんて想像もしていませんでした(笑)」。

大和証券では、ほとんどの秘書が支店での営業を経験した総合職だ。

「お客様とずっと向き合ってきましたので、営業の気持ちがわかる、現場の立場がわかる、というのは、意味のあることだと感じました。それを活かして仕事をする必要がある、と」

そう話すのが、秘書の中川智香さん。しばらくは担当を持たずに秘書室で仕事をし、初めて担当したのが、当時副社長だった中田社長。そして翌年、社長就任が決まる。

社長室で、中田社長の明日のスケジュールの確認中。急な案件も多く入るので、日夜細かい調整が必要なのだ。

「発表になってからは社長交代挨拶のスケジュール調整、お祝いやお花の受け取りなどの対応で、とにかく大変な日々でした。でも、こんな経験ができるなんて、なかなかありません。ありがたいことです」

気をつけてきたのは、とにかく想像力を働かせることと、付加価値のある仕事をすること。

「社長からは思ったとおりに仕事をしなさい、と言われています。だからこそ必要なことを自分で察知しなければならない。一度問われたら、次からは先回りして応えるようにするのもそのひとつです」

付加価値は、社長がより仕事をしやすくなるよう自分の仕事を進化させていくことだ。例えばスケジュール表。

「従来のものは長期にわたって詳細がわかるものの、一覧性に限界がありました。そこで、それとは別に最低限必要な情報だけをピックアップしたスケジュール表をつくったのです」

色で仕事の種類や、どの部門の仕事なのかがわかるようにした。仕事がどこかの領域に偏っていないかもひと目でわかる。

「秘書は経営やマネジメントのパートナー。社長を活かし、いかにパフォーマンスを上げていくか。その視点が常に問われます。社長をサポートすることで、社内外のいろいろな方々に喜んでいただけることが、何よりの醍醐味です」

もうひとりの秘書、半田さんは戦略面のサポートや随行を担う政策秘書。
役割は5つあると語る。

「スケジュールのアレンジ、会議や海外出張のアレテンド、情報や意見、アイデアなどのインプット、社内外に向けてのアウトプット、そして社内外のネットワーク作りの5つです」

投資銀行業務等を手がけMBA留学。帰国後、かつて上司だった中田社長の秘書を命じられた。通例は30代半ば以上の次長職が就く。ところが半田さんは30代前半、異例の上席課長代理という役職だった。

「社長は前例を気にしない人。だから私も前例を気にせず、自分が何を求められていて、何をすべきかを考えていきました」

例えば、経営計画に掲げるイノベーションの実践として大規模な外国株セミナーの企画や役員応接室の大胆なリノベーションなど次々と着手。また、世界水準の秘書を目指し国際秘書検定にトライ。さらにネットワーク作りでは、他社の社長秘書との人脈構築し、秘書同士で直接やりとりも行う。そこからダイレクトなアクションを生みだしていった。

「会社同士のトップ外交は、ボトムアップで行けば簡単には動かない。ただトップ同士の人間関係づくりは経営者としてとても重要です。たとえばプライベートで社長夫妻同士での食事の機会を作る。秘書同士がつながっていければ、そんなこともできるんです」

スケジュールのアレンジでは中川さんとも連携し、地方出張は何回まで、不要な会議を無くすなど、ルールを作った。

「秘書になってわかったことは、全社員のなかで誰よりも考え働いているのは、社長だということ」

社長の誕生日、ふたりで考えプレゼントを贈った。それがポケットチーフ。中田社長は語る。「それからポケットチーフを挿すようになりました(笑)」。


Seiji Nakata(中)
大和証券グループ本社代表取締役社長兼CEO。1960年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。’83年、大和証券入社。事業法人営業部長、エクイティ部長などを経て執行役に。’16年、代表執行役副社長。’17年4 月より現職。

Susumu Handa(右)
社長秘書・次長。1984年生まれ。2007年大和証券SMBC入社。プライベート・エクイティ海外投資部、事業法人部、MBA留学を経て’17年3月より現職。CBS(国際秘書)検定Associate保持。

Chika Nakagawa(左)
社長秘書・上席課長代理。1985年生まれ。2009年大和証券入社。リテール部門の営業を経て’14年4 月から秘書室に。副社長秘書を経験した後、’17年3 月より現職。


Company Data
大和証券グループ本社。1902年創業。従業員数1万4791人(2018年3 月現在)。リテール事業、ホールセール事業、アセット・マネジメント事業を中核に、日本全国に広がる店舗網、世界20ヵ国/地域を拠点としたグローバルネットワークを持つ、日本を代表する総合証券グループ。


Text=上阪 徹 Photograph=星 武志